これは実話をベースにしたフィクションということわりがある。その実話と言うのはカジノ令嬢失踪事件。映画はこれをカトリーヌ・ドヌーヴをカジノ社長、その令嬢にアデル・エネル、顧問弁護士にギヨーム・カネで人間の強欲と怨念を描く。
70歳を過ぎたカトリーヌ・ドヌーヴ、化粧をすると太めの体で妖艶さは消えていない。ルネ・ルルーが役名。娘アニエス・ルルー(アデル・エネル)が結婚に破綻、帰郷する。空港に出迎えたのがモーリス・アニュレ(ギヨーム・カネ)。この男スリー・ピースに身を包み実直な顧問弁護士を装っているが根は狡猾。それをお見通しなのがルネ。
夫の残したカジノ「パレ」は、営業不振で苦境に落ち込んでいた。モーリスの助言はすべて計画されたもの。母ルネと娘アニエスとの確執、遺産のパレの株式を買い上げて欲しいというアニエスに「今は苦しいからダメ」と母親。モーリスはこれを利用する。
無関心のふりをしながらアニエスになにかと世話をする。やがてアニエスを落とす。アニエスも離婚後の孤独からの解放は、セックスに夢中になるには十分だった。モーリスに恋人フランソワーズ(ジュディット・シュムラ)がいるのを知りながら。やがてルネの没落、アニエスの失踪という悲劇が起こる。
映画はこの没落と失踪まで「愛しすぎた男」を丹念に描くが、「37年の疑惑」は短い法廷場面とラストの字幕で済ませてある。この映画、どう考えてもラブ・ロマンスでなくミステリーだろう。そうならリーガル・サスペンスとして描いたほうがよかった気がする。
カトリーヌ・ドヌーヴの妖艶さと没落後の一転した落ちぶれようとアデル・エネルの見事なヌードは必見か。豊満で白い乳房に目を奪われるが、私の年代では子供のころは、人前で子供に授乳させるのも見慣れた風景であったし、それに家風呂のない時代で銭湯に母親と行けば女湯に入る。女の裸は見慣れていた。従ってアデル・エネルの乳房も母親を思い出したくらいだ。何とも色気のない話で……。
ちなみに原題の「L'homme qu'on ai mait trop」をグーグル翻訳で見ると「私たちも同じ人」とあった。金銭欲、色欲、恨みつらみみんな持っているよと言いたげ。
監督
アンドレ・テシネ1943年3月フランス生まれ。
キャスト
カトリーヌ・ドヌーヴ1943年10月フランス、パリ生まれ。1963年「シェルブールの雨傘」が代表作。フランスの権威ある映画賞セザール賞に2013年から2015年にかけ主演女優賞にノミネートされている。
ギヨーム・カネ1973年4月フランス生まれ。
アデル・エネル1989年1月フランス、パリ生まれ。2014年「LES COMBATTANS(戦闘機)」でセザール賞主演女優賞受賞。
ジュディット・ジュムラ1985年7月フランス生まれ。
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