猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

COMの中のあすな ひろし その③ 「その日,ノース=ビルは,雪」

2008年01月17日 09時28分43秒 | まんがエリートのための雑誌 COM
             COM 1969年2月号 掲載 

ストーリー 思い切りネタバレです。

 その日、ノース=ビルは雪。その降りしきる雪の中でわたしはあの少年にあった――。 雪の中、スティーブをやっと見つけたという少女。だがスティーブと呼ばれた少年は灰色の空に似た瞳をうつろにそらせて 「君は誰」 というばかり。

 少年の母親らしき人物が家から出てきてスティーブを家に入れようとする。少女は彼女のことも知っているようだ。しかし、母親の方は少女に見覚えが無い。その美しかった栗色の髪は白く、温かかった微笑みも寂しい瞳の奥に隠れてしまっている。スティーブはあの日と少しも変わっていないのに…。

 家に招きい入れてもらった少女は家の中を見て驚く。イスもテーブルも壁紙の模様までなにもかもあの頃と同じなのだ。少女は問い掛ける。
 「私はワシントンに住んでいたあなた達を知っています。ワシントンにあったこれとそっくりの部屋を知っています。なぜワシントンからノース=ビルに来たのです ? 」

 「逃げてきたんですわ、あの子が人を殺したとみんなに指差されるのが…辛くて…。」
スティーブは以前車の事故で同乗していた当時付き合っていた彼女を死なせていた。ハンドルを切り損ねたスティーブは開いたドアから無傷で放り出されたが、彼女はとりこのされたのだ。
 燃え上がる車の中の少女を助けようとしたが、彼まで死んでしまうと、周りが止めた時、彼は泣き声とも叫びともつかない声を発し、何もかも忘れてしまったという。

 母は言う、「彼女と一緒に炎にまかれて死んでしまったほうが…。二人はそれは愛し合っていて…。それでもあの子に何か思い出させようとあの頃と同じに再現させ…。」
 なんと母親はそのとき乗っていた車まで買っていた。
 「あの時の車だわ!」

 「今なんとおっしゃいましたの ? なぜそれをご存知ですの ?」
 少女は語りだす。自分はあの時あの車に乗っていたのだと。焼け爛れて病院に運び込まれたが、死んではいなかったのだと。6ヶ月眠り、それから5ヶ月経って起き上がり、しかし醜い顔になってしまった少女はそれから3年もの間、スティーブに元のような美しい顔で逢いたいと願って復元手術を受け続けたのだ。
 だが、美しく整った今の顔は、スティーブの知っている顔ではなくなってしまっていた。「スティーブの私はやっぱりあの時死んでしまったのよ ! 」

 車の運転席に乗るスティーブにしがみつき、あの時と同じようにやめて ! と叫ぶ少女。
「あぶない はなせ ! 」
 叫び声を発し、一瞬記憶の戻ったスティーブは、
 「殺した、僕があの子を殺した ! ああ、あの子が燃える…」
 と叫びながら少女を突き飛ばし、車を発進させてしまう。建物に激突し、炎に包まれたスティーブ。母は立ち尽くしつぶやく。
 「死んだ・・・・あのこ・・・・あのときのあなたを愛して・・・・。」


燃える
少年が 燃える
降りしきる雪の中で
赤く――赤く

その日
ノース=ビルは



 私があすな ひろし氏を知ったのは、氏が 週間マーガレット などで少女マンガを描いていらした1964年頃。私のお気に入りは 「さざんかの咲くころ」 という短編で、雑誌から切り取ってとっておいたものだ。小学生くらいの少女ともっと幼い少女の出会いと別れ、山茶花の咲く頃、幼い彼女を思い出す少女、という作品だった。

 その前は少女クラブでやはり少女マンガを描いていたようだが、年齢的に私は見ていない。1964年当時の絵柄は 水野 英子先生 の影響が強いものだったが、( ミルタの森 とか オンディーヌ など合作もしている) 当時から筆致が流麗で私は一目で好きになった。
 その後もしばらく1960年代は 週マ や 別冊マーガレット、りぼん、なかよし、少女フレンド、小説ジュニア等で少女マンガを描かれていた。た~まに青年誌や少年誌に描いていたようだが、私は見ていなかったので、後年青年マンガや少年週刊誌であすな氏の連載作品を見たときは絵柄も簡略化されたものに見えたし、ちょっとびっくりしたものだ。
 この作品が描かれた頃 (1960年代後半~70年代前半) のあすな氏の絵柄が一番好きです。

 代表作とされている少年チャンピオン連載作品の 「青い空を、白い雲がかけてった」 などはちらちら雑誌が有った時に読む程度だったが、私はやっぱり初期の少女マンガの方が好きで、毎週読もうとかコミックスを買おうとか思わなかった。
 青年誌のビックコミック・オリジナルに時々掲載された 「哀しい人々」 シリーズは全部は見てないが好きなシリーズだった。

tooru_itouさんに頂いたコピーの記事 → あすなひろし 哀しい人々シリーズ 「幻のローズマリィ」

 青年誌に掲載された作品を大人のあすな作品、初期の少女誌に掲載されたものをリリカル少女マンガ作品とするなら、中間の時期にCOMに掲載された 9作品 はあすな氏が本当に描きたかった実験的な作品が多いのだと思う。そのうち紹介するつもりだが、案があすな氏で絵が 川本コオ氏 というものもあるし、歌詞にイラストを付けたものもある。このイラストなど、現物を見たらさぞかしうっとりするほど綺麗だろうな~と思われる出来だ。
 他のCOM作品もぼちぼちご紹介するので、気長に待っててね。


 作品初出年を参考にさせていただきました。 → あすなひろし 追悼公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする