前々回の続きです
「ネタニヤフ」という小説があります。
長い副題は
極めて著名な家族の副次的で
究極的には無視できる出来事についての報告
ドイツの友達が送ってくれたもので、タイトルを読むなりガハハと笑ってしまいました

タイトルからは誰でも、自分の関与した汚職に対する司法の追及を阻止しようと、司法の独立を抹殺しようとしているイスラエルの政治家を連想しますね。
下の表紙からも、しっちゃかめっちゃかなストーリーであることが期待できます。
もちろん期待通りです
物語は1959~1960年。ニューヨーク北方の架空の地方都市コービンデールにある架空のコービン大学でアメリカの税制史を教えるルーベン・ブルムは教授陣で唯一のユダヤ人ですが、アメリカ生まれです。妻のエディスもユダヤ人なので、娘のジュディーもユダヤ人(母がユダヤ人だった場合のみ「正式の」ユダヤ人、とはイスラエルの法で定められています)。
このルーベンは、コービン大学の教授職を得るためイスラエルから来る歴史学者ネタニヤフの世話をするよう依頼されます。
自分の両親や妻の両親の接待、大学入学を控えたジュディーとのゴタゴタなどに加えてネタニヤフの論文を読む手間も加わりウンザリしているルーベンのところにイスラエルから推薦状が届きます。その推薦状のウダウダと長~~~いこと

ここまでで物語の三分の二です。
そして、ある雪の日、壊れかけたようなフォードに乗ってベン=シオン・ネタニヤフが到着します。
しかも妻ジラと3人の息子(長男ヨナタン、
次男ベンヤミン、三男イド)を引き連れて・・・
一番下の息子イドはブルム家で早速おしめを取り替えられ、その臭いが家を満たします。上の2人も大暴れ。
ひどいドタバタの中、とにかく大学の講堂でベン=シオンの講演が行われます(つまり採用試験)。これもドタバタに終わり、しかもブルム家はネタニヤフ一家を泊めなければならないことになり・・・どうなったかは書かれていません
ベン=シオンの専門分野は
異端審問時代スペインのユダヤ人で、彼の説では、これはユダヤ人迫害を目的としたもので、宗教ではなく人種による反ユダヤ主義はスペインで始まったのだそうな
ドタバタ劇は著者の創作ですが、ネタニヤフ一家の面々は皆実在の人物です。
ベン=シオン
ヨナタン
ベンヤミン
イド
まあ内容のドタバタは、それだけで面白いのですが、イスラエルのユダヤ人と
ディアスポラ・ユダヤ人の間の発想や価値観の違い、
反ユダヤ主義、
シオニズム、
修正主義シオニズムなどの予備知識が無いと判りにくい、あるいは大笑いできない部分もあるでしょう。
本書の冒頭に著者は、修正主義シオニズムのリーダー、
ゼエヴ・ジャボチンスキーの言葉を引用しています。
ディアスポラを抹消しろ。さもないとディアスポラが君たち(ユダヤ人)を抹消するぞ。
続きを書くかも知れません

でも乞無期待
・・・うっかり忘れそうになりましたが、前々回の続きと言うのは、著者の
ジョシュア・コーエンが
ハーパーズ・マガジンに記事を書いているからです。