本当にあったお話です。フランス海軍のある艦長さんは、大の猫好きで生涯に沢山の猫を飼いましたが、一時期、とても美しい白い雌猫だけを飼っていました。彼女はモモッテと呼ばれ、女王のように君臨していました。
あるとき、中国へ行っていた艦長さんは、帰国のため出航してから、艦長室に雌猫の密航者を発見。モモッテとの仲を心配しながらも捨てられず、連れて帰りました。
お屋敷へ戻った艦長さんを迎えたモモッテは大ショック。なんと艦長さんが別の猫を連れているではありませんか。艦長さんが密航者を床に下ろすと、即座にすさまじい喧嘩が始まり、家人が数人がかりで、やっと引き離しました。
2匹はモモッテ・ブランシュ(白いモモッテ)とモモッテ・シノワーズ(中国のモモッテ)と呼ばれることになりました。2匹は賢い猫だったのでしょう。その後生涯に二度と喧嘩しませんでしたが、長いこと互いに無視しあって暮らしていました。その期間は本のなかに明記されていませんが、多分半年から1年くらいだったと思われます。
ある日、全く突然、ブランシュがシノワーズに歩み寄り、自分の鼻を相手の鼻につけました。艦長さんは庭男に「見たかい、ブランシュのシノワーズに対する友好の挨拶を」と話し掛けましたが、庭男は「違いますよ。ブランシュは、シノワーズが自分の昼飯を盗まなかったか確かめてるだけでさぁ。」
しかし、それは本当に友好の挨拶だったのです。2匹は、それから昼も夜も一緒に過ごし、一刻も離れることなく、家の人々から「両モモッテ」と呼ばれるようになりました。2匹は何回も幸せな母猫となり、一緒に子育てをしました。
そして、仲良く幸せな生涯を送り、次々と世を去りました。
これは、ピエール・ロティ(1850-1923)の「二匹の猫の生涯」です。大の猫好きだったロティについては・・・続く