昨年の正月時代劇「風雲児たち」の原作者
みなもと太郎の「挑戦者たち」
色々な意味での「挑戦者」が登場します。
ジョン万次郎や
岡田以蔵の話、「雑談新撰組」などのほか、著者の貴重な体験談(体験漫画)も収録されています。そのひとつが「感触者たち」です。
著者が短期間勤めた高級呉服店での体験と後日譚を紹介する「感触者たち」、実は、とても怖い話なのです。アマゾンのカスタマーレビューでも全く言及されていませんし、著者自身も執筆当時には、それほど意識していなかったかも知れません。
その怖い内容は・・・
呉服店を辞めて漫画家となった著者は三十数年後(作品初出2002年当時)に当時の同僚と再会、元同僚が支店長を務める呉服店の東京支店に行き、最高級の絹織物を見せてもらうのですが、どうしても手触りがおかしい。最高級品がなくなったのでも、優れた織り職人がいなくなったのでもなく、その感触の違いは、蚕さんの食べる桑の葉が違ったからなのでした。
三十数年前の蚕さんは有機肥料で育った桑の葉を食べていたのですが、二人の元同僚が再会した当時には、化学肥料で育った桑の葉だけになっていたのです。
桑の葉が変わっただけで蚕さんが変わり、最高級の絹織物の手触りまで変わってしまったのでした。
漫画の中では「我々だって当時とは食い物が違うよ」とオチがついていますが、その後で著者は、本当にそれでいいのだろうか?と自問しています。
全然「それでいい」ことはないと思います。プラスチック製品が登場した頃は「何と便利なもの」と手放しに喜んでいた人類は、海洋にプラスチック廃棄物が溢れ、海洋生物がプラスチック廃棄物の誤食で次々と死んでいく事実に直面しています。
遅ればせながらペットボトルを廃止して瓶にしたり、スーパーのポリ袋を紙袋や安全な製品に替える動きもあります。
でも、実はもう取り返しのつかないところまで事態の悪化している領域も多いのかもしれません。
私は、みなもと太郎のファンで、特に「風雲児たち」は関が原で始まるワイド版から現在まで欠かさず読み、繰り返し読んでいます。
その出発点は「落第忍者乱太郎」の
著者がインタビュー中で、愛読書として「風雲児たち」を挙げていたことでした。
時代モノは無批判に描くと鼻持ちならない「美談」になりますが、批判的にギャグ化されていると安心して笑えます。
いずれのシリーズも今さら取り上げるまでもない大作ですが一応・・・
風雲児たち
落第忍者乱太郎
蚕の食べる桑の葉の話が怖いので、カテゴリーは「おきにいり」でなく「その他」です