美術史博物館は、日本では美術館と紹介されることが多いですが、絵画コレクションのほかに美術工芸品、古い楽器、歴史的な武器、古代エジプト・オリエントや古代ギリシャ・ローマの出土品、古銭など多岐にわたるコレクションがあります。
最近漸く博物館・美術館が再オープンしたので
世界博物館(ワールドミュージアム)へ行ったところ、3階(ヨーロッパ式には2階)に武器コレクションがあることに初めて気付きました。あるいはパンデミックによる臨時休館中に展示されたのかも知れません。それで、もう長年知ってはいたものの直接見たことはなかった有名な甲冑類を見てきました。
展示品を傷めないためか、こういう博物館内部はいつも暗いので、ネット検索で見つけた写真をアップしました。
飽きるほど沢山の甲冑類が並んでいますが、傑出した2点をご紹介します。
館内の様子:「ミラノの甲冑」と呼ばれる人馬お揃いの甲冑・馬具一式です。
ミラノの甲冑の部分
これでもか!と言うほど隙間なく装飾された武具は実戦用ではありえません。
ドイツ語Wikiの記事
もうひとつ「ブルーの甲冑」と呼ばれる人馬お揃いの一式
黒か黒褐色のように見えますが、本来は濃紺だったのでしょう。これも実戦用には、あまりにも豪華過ぎます。
いずれも、式典あるいは凱旋パレードなどで着用されるお祭り用、つまりPR用なのです。とてもファッショナブルですね。
いずれも16世紀半ばにイタリアで制作されました。名高い甲冑工房で名高い職人が仕上げたものです。
16世紀のイタリアと言えば
ルネサンスの真っただ中、ということはイタリア半島は「戦国時代」。当時「イタリア」という国はなく、ローマ教皇領と多くの都市国家が互いに争っていました。
マキャヴェッリが「
君主論」を書いた時代です。
当時はアルプス以北のヨーロッパもルネサンス時代です。上述2つの甲冑一式を所有したのは
フェルディナント2世です。この人も典型的なルネサンス君主と言えるでしょう。甲冑や武器のほかにも美術品・工芸品を愛好し、重要なコレクションを後世に遺しました。ウィーンの博物館・美術館に展示されている多くの文化財がフェルディナント2世のコレクションにあったものです。
昔、日本漫画文化の古典とも言える「サザエさん」を読んだときのこと。確かワカメちゃんだったと思いますが、ヨーロッパの古い甲冑を見て「昔は人間の缶詰があったの?」と言うのが、とても愉快で印象的で今でもおぼえています。
「人間の缶詰」と言える甲冑一式。馬も丸ごと缶詰になっています
ウィーンのコレクションではありませんがネット検索で発見。ポーランド王(多分
ジグムント1世)のものです。