ネットから拾ってきたドイツ国旗を飾った猫さん
でも、サッカー・ワールドカップのことではありません。
私の敬愛する
ブルク劇場の大スター(巨星)ゲルト・フォスが72才で急逝しました。
この30年、ブルク劇場の最も重要な俳優として活躍、演劇関係者も、今後はブルク劇場の総監督とか、そういった役割を期待していたところでした。
舞台俳優の常として、ドイツ語圏以外の国での登場はめったにないので、ウィキの記事としてはドイツ語しかありませんが、日本でも公演したことがあるようです。
ドイツ人の父親が貿易商だったため1941年上海生まれ、第二次大戦後ドイツへ戻り(このときの世界一周に近い航海は、いわゆる「原体験」だったらしい)、ドイツの主要な劇場とウィーンのブルク劇場やアカデミー劇場に出演、2014年の7月13日、ウィーンで亡くなりました。
私が直接舞台を観たのは
シェークスピアの「
マクベス」「
ベニスの商人」「
リア王」、
トーマス・ベルンハルトの「リッター、デーネ、フォス」「エリザベスII世」、ジョージ・ターボリの「ゴールドベルク・バリエーション」、
マーロウの「
マルタ島のユダヤ人」などなど、すぐに全部は思い出せません。
ターボリについてはドイツ語以外の記事はすぐ見つからないので省略します(もし、後日なにか発見したら紹介するかもしれません)。
どの舞台も素晴らしかったのですが、
特に強烈だったのはマーロウの「マルタ島のユダヤ人」でした。
たいへん反ユダヤ主義の明白なストーリーですが、それを上演できるのは、反ユダヤ主義に対する批判、ナチスのユダヤ人大量虐殺などへの批判的検証が定着していることを意味します。主人公のユダヤ人は、自分の娘も平気で殺す強欲な人間で、金儲けのために数々の陰謀をめぐらしますが、最後は、敵を殺そうとして用意した熱湯の中に自分が落とされて死ぬという幕切れです。
(だからと言って、ヨーロッパの反ユダヤ主義が完全に克服されたわけではありません。)
下はYouTubeで見つけたフォス主演のリア王。黒澤明の「乱」が良く似たストーリーでした。ヨーロッパでは「リア王の翻案」と言われますが、私が読んだところでは、黒澤明が「毛利元就の3人の息子は力を合わせて毛利家を守ったが、もし3人が争ったらどうなるかと考えているうち、リア王そっくりの物語になった」ということです。
父に一番正直・誠実だった末娘コーディリアの死を悲しみつつ自分も息を引き取る最後の場面
トーマス・ベルンハルトの「リッター、デーネ、フォス」は、初演の主演俳優の名を、そのままタイトルにしたもので、それだけ3人が卓越した俳優であることを意味しています。フォスは
ルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン、デーネは姉、リッターは妹で、3人の日常生活の場面だけで幕開けから終幕まで笑わせる、見事に皮肉で知的な戯曲です。
このYouTubeはルードヴィヒが怒鳴り散らして姉と妹を呆れさせる場面(笑ってください)
「リッター、デーネ、フォス」で最も印象的だったのは、リッター(ヴィトゲンシュタインの妹)がしゃべる幕切れの最後のセリフ・・・
「雨にたたられて、ベッドで過ごす土曜の午後ほどステキなものはないわ。」
ゲルト・フォスのインタビュー記事など大切に保存しています。もう、あの舞台が見られないと思うと残念です。
ブルク劇場については、みみずボログに何回かアップしていますが省略
Wikipedia:
Gert Voss(ドイツ語ですが、素顔の写真あり)
まだゴタっております。まばら更新が続きますので、たまーに覗いてやってくださいませ。
でも、えーと、乞無期待