米国のトランプ大統領(2020年6月8日、写真:AP/アフロ)

(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)

 5月末、米国政府が議会に対して対中国政策の総括を改めて宣言する公文書を送った。

 米国政府は同文書で、中国が米国主導の国際秩序を根底から壊そうとしていると断じ、その野心的な動きを抑えるために中国と対決することを政府の基本方針として明示していた。米国による中国との全面対決新時代の公式宣言ともいってもよい。

 その宣言は、日本など同盟諸国と連携しての対中抑止を表明しており、日本の対中政策にも大きな影響を及ぼすことは確実である。

中国が3つの分野で米国にチャレンジ

 トランプ政権は「米国の中国に対する戦略的アプローチ」と題する公式文書を5月下旬、連邦議会あてに送った。米国政府全体が中国との新たな対決姿勢をとるにいたり、そのための多様な政策を認めるよう米議会上下両院に要請する目的で、新対中政策の骨子を議会に向けて説明したのだという。

 トランプ政権は中国政策に関して、オバマ前政権までの長年の歴代政権の「対中関与政策」は間違いだったとして新たな強硬政策をとってきた。この文書は、中国発の新型コロナウイルスが米国にもたらした被害を踏まえて、対中強硬政策の内容を集大成の形で改めて解説している。

 16ページから成る同文書は、【序言】【チャレンジ】【アプローチ】【実行】【結論】の5部で構成され、全体として、中国が米国に正面から挑戦する脅威の存在となり、米国および日本など同盟諸国の利益の根幹を侵すにいたったとの見方を示している。同文書の概要は以下のとおりである。それぞれのパートを見ていこう。