11月24日に委員長在任20年を迎えた共産党の志位和夫委員長(66)の“右”旋回が話題だ。

「尖閣諸島周辺の緊張の最大の原因は、日本が実効支配している領土を力ずくで現状変更しようとする中国側にある。中国側の覇権主義的な行動が一番の問題」

ピアノの腕前は玄人はだし ©共同通信社© 文春オンライン ピアノの腕前は玄人はだし ©共同通信社

 実はこれ、中国の王毅外相の言動に対する志位氏の記者会見での発言。24日の日中外相会談後の共同記者発表で、王氏は日本漁船に“緊張”の責任を転嫁したのだ。記者発表の場で隣の王氏に反論しなかった茂木敏充外相のことも、志位氏は「極めてだらしがない」と批判。会見の詳細を産経新聞デジタル版が報道すると、SNS上では「産経師匠&共産党の志位氏、めったに見られないタッグ」などと話題になった。

 旧敵の小泉純一郎元首相とはクラシック音楽をめぐり対談。仲むつまじく2人で語り合う様子が、雑誌「音楽の友」の11月号、12月号に掲載された。共通の原点がモーツァルトだったことや就寝前に何を聴くかで意気投合。小泉氏が「音楽や文化は、自民党だろうが共産党だろうが関係ない」といえば、志位氏は「音楽は不要不急の贅沢品ではなく、生きていく上で必要不可欠」と息の合った返し。

 政治部記者は「志位さんは委員長就任から長らく苦労したが、最近は存在感を高めている」と語る。苦労については、志位氏自ら会見でこう語っている。

「00年代はずいぶん厳しい時代が続いた。『自民か民主か』という2大政党論が強烈で、共産党は蚊帳の外」

志位氏の後継者はいるのか?

 存在感が増したきっかけは、皮肉にも、志位氏が激しく批判した「安倍一強」政治だ。野党がバラバラになるや、敵対関係だった小沢一郎氏と「野党共闘」を旗印に急接近。飲み会を重ね、小沢氏が「志位君は本当に良くやっている」と言えば、志位氏も「小沢さんは本当にすごい」と持ち上げる関係を築いた。

 共産党は1922年に発足した最古の政党。「ぶれない党」を標榜するが、最近は天皇制や自衛隊を事実上容認するなど、むしろ「ぶれる柔軟さ」が売りになってきた。

 一方で、党の人事は硬直が続く。志位氏の後継者が見当たらないのだ。論客の小池晃書記局長への待望論も一部にあるが、「偉そうで党職員の評判が悪い」(前出・記者)という。

「安倍政権があれだけ長く続いた最大の理由は“他にいないから”だが、志位氏も同じ。後継者育成に失敗している」(政治部デスク)

 再来年は共産党の“結党100年”。その歴史の5分の1をトップとして紡いできた志位氏の「一強体制」も、あまりに長すぎるのかもしれない。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年12月10日号)