「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和2年(2020)12月26日(土曜日)
通巻第6742号
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暴動が起こり、米国の分裂状態は悪化する
アメリカは六つに分かれるとロシア・アカデミーの学者
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大統領選挙前後からアメリカは完全に分裂し「現代の南北戦争」の様相を呈していた。
香港のひそみにならえばアメリカは「一国二国民」となったのではないか。中国はアメリカに代替できる覇権を狙うから米国分裂は欣快な出来事である。
ロシアでは「アメリカ分裂は六つに割れる」と先走った主張をする学者がいる。それも珍説や暴論ではなく、歴としたロシア・アカデミーの学者が唱えているのである。
嘗て筆者は「中国は十六に分裂する」と予測し『中国大分裂』(文藝春秋ネスコ)という単行本を上梓した。李登輝元総統は「中国は七つに分裂するのが適切」と言い出された。中国は不快感を覚えたのか、『亜州週刊』が李登輝総統非難とともに「分裂論に同調する日本人たち」として中嶋嶺雄、長谷川慶太郎、そして筆者の名前を挙げたこともあった。
旧ソ連は崩壊後、十五に分裂した。
ユーゴスラビアは東西冷戦崩壊で共産主義独裁政権が消え、七つに分裂した。
イラクは三つに分裂状態だが、まだまとまっている。スペインのバスク地方など多数の国で分裂運動が起きている。カナダからニューカレドニアまで分離独立運動がある。
米国は南北戦争で60万余の犠牲を出し、ようやく統一され、星条旗の下に「アメリカ人」というアイデンティティでまとまってきた筈だった。しかしベトナム戦争以後の価値紊乱とキリスト教の伝統的価値観を冒涜するようなLGBTQが象徴する左翼運動が蔓延した。歴史の英雄である銅像を次々と破壊し、差別とかの言いがかりをつけた暴力事件が頻発、そうした破壊的思想を蛇蝎のように嫌う南部の敬虔なキリスト教徒、エヴァンジュリカルらは絶望と希望の狭間を行き来しながらも伝統を守る運動を組織した。
四年前にトランプを支持し支えたのはこの伝統的な人々だった。
選挙結果が露骨な分断状況を晒した
北東部から東海岸は極左的社会主義が蔓延り、ラストベルトの旧工業地帯には資本主義の絶望が聞かれ、南部から中西部は敬虔なキリスト教地盤にチカノが入り込んで混沌とし、西海岸は正真正銘の左翼の牙城となった。
リーマンショック直後にもロシア外務省学士院学部長のパナリン教授が米国が六カ国に分裂すると主張したことを思い出す。
(1) カリフォルニア州を基軸とする西海岸は「カリフォルニア共和国」となり中国とべったりの外交を展開する。
(2) テキサス地域(南部)は「テキサス共和国」となり、メキシコとの関係が濃厚になる。
(3) 北東沿岸は「アトランティック・アメリカ共和国」(北東部から東海岸の大西洋沿岸部」。
(4) 中西部からラストベルトは「中北部アメリカ共和国」となりカナダとの結び付きを強める。
(5) アラスカはロシアに還す。
(6) ハワイは中国の保護国となる
などとする予測である。
さてどうなる?
(北国新聞「北風抄」12月18日から再録