脱成長が必要なのは
東洋の台頭に負けた、
西欧の世界。
西欧資本主義大崩壊とNATOの解体。
ロシアとウクライナの戦争に巻き込まれ、
衰退する運命は白人の世界。
東洋はただ見ているだけでよい。
そのうち日本には強大な成長がやってくる。
マルクス理論は黄昏の西欧に相応しい。
発展した資本主義から
共産主義革命が起こるのは
西欧の問題。
東洋は見ているだけでよい。
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[FT]成長を知らない日本の若者、「マルクス理論」に共感
FT2022年11月18日
多様な観点からニュースを考える
中北浩爾さんの投稿
東京の金融街にある最大の書店でベストセラーになっている本のタイトルだけから判断するならば、2022年晩秋の日本は革命の熱気に包まれているかのようだ。
マルクス理論を土台にして環境保護型社会への移行を訴える斎藤幸平氏の著書は、「脱成長」哲学の代表とされ、日本で50万部以上売れている=ロイター
1つのコーナーには、ビジネスを礼賛し、世界のビジネスリーダーたちを神格化し、成功のための七つの鍵を説く書籍が並ぶ。年金の積立不足、少子高齢化、深刻な気候変動といった危機について、資本主義こそが問題を解決できるという確固とした信念に基づいて語られる。
「脱成長」の哲学
しかし、通路を隔てた別のコーナーには、カール・マルクスの理論に新しい衣をまとわせた書籍が並んでいる。世界経済の成長をけん引するエンジンにブレーキをかける必要を、マルクスがあの世から説いているようなこうした書籍は、元気をなくした現在の日本で大衆受けするように魅力的な装いを与えられ、「脱成長」という独自哲学として提示されている。
世界の深刻な問題をマルクス主義の視点から読み解く一群の新しい日本の書籍には、「資本論」を解説するマンガもある。このマンガは、労働者の搾取という問題を美しい山のキャンプ場を舞台に説明し、サラリーマンを脱成長論者の輪に招き入れようとしている。
斎藤幸平 東京大学准教授
現在、日本におけるマルクスへの関心の高まりで中心的な役割を果たしているのは斎藤幸平という名の学者だ。大量の書籍に囲まれた東京大学の研究室から、不平等の危機や迫りつつある環境破綻から社会を守る唯一の方法は脱成長だと説いて、関心を集めている。経済成長は我々を幸福にしなかった。社会には不満が満ち満ちている。ボトルからコーヒーを飲みながら、こんな詰め替え容器で環境を守ることはできないと主張する。
日本の大衆が、こうした主張に実際に賛同しているかどうかは別としてーー読者が多いからといって信者が増えているとは限らないーー斎藤氏のものの見方に関心を持つ人々が多いのは確かだ。その本が多くの人に読まれている事実を、あまり注目されていない日本の世代間分裂の観点からみると興味深い。それは、おおむね50歳以上の日本人と35歳以下の世代の間にある隔たりだ。この若年層は、おそらく世界の先進国における初めての成長未経験世代と言える。
パンデミックが転機に
20年後半に出版された斎藤氏の「人新世の『資本論』」は、マルクスの議論を自然界に重ね合わせて、持続性を実現し気候変動を抑えるための戦いを訴えているが、特段のヒットが予想された本ではなかった。しかし、新型コロナウイルスの世界的感染拡大(パンデミック)によって、脱成長という考え方に対し、自然に共感が生まれ、日本全体が一気に、ありきたりの生活に切り替わることはあり得ないという日本人の確信が揺らいだと本人は言う。
著者自身も驚いたことに、地球全体の混乱への処方箋ともいえるこの本の販売部数は50万部を突破し、来年には英語やその他の言語の翻訳版が発売される。10月に発売された続編、「大洪水の前に:マルクスと惑星の物質代謝」は、丸善書店の店員によれば、飛ぶように売れているという。
著書では学術的な文体で議論を展開しているが、その脱成長哲学の主要な要素は、声高に環境保護を訴える海外の活動家の主張と重なる。同氏が日本でまだほとんど聞こえてこないという気候危機に関する真剣な議論を巻き起こすことを狙っている。
無意味な「ブルシット・ジョブ(くだらない仕事)」を大量に作り出す日本の歴史的な傾向に対しても手厳しい。こうした仕事は、希少になりつつある日本の労働力を無駄に浪費させる、という。食肉、多目的スポーツ車(SUV)、スポーツカーなどには、それらがもたらす大きな環境への負荷を相殺するために今よりはるかに高い税金をかけるべきだと、主張する。
広告については、終わりのない不必要な消費を促すが故に、厳しく制限されるべきだとの考え方だ。斎藤氏は、東京の繁華街に設置されている宣伝用の巨大なLCDスクリーンを特に問題視している。日本は、貴重な電力をそのようなことに浪費する余裕はないと憤り、「社会から広告をなくしても、広告業界以外の誰も困らない」と訴える。
しかし、本人も認めるように、経済の観点からみて、斎藤氏が説く現代版マルクス主義の最も重要な意義は、それが35歳の人物によって提起されているという点にあるかもしれない。著者が生まれたのは1980年代後半。当時の日本は、歴史的な金融バブルによる資産インフレの真っただ中にあった。そして小学校に入ると同時に、その後30年に及ぶ日本の経済停滞が始まった。
成人した後は、国内ではデフレ経済が続いてきた。全国的に賃金は上がらず、金利はゼロのまま。上の世代が経験したような成長を知らずに成人した世代の人間からみれば、日本はいまだに環境を脅かす成長一辺倒の資本主義に突き動かされる巨大消費社会と映るのではないか。
同氏は、その世代が自分の本を読んでいるとみている。そして、その読者層は、著書で提唱する体制の変革があり得ないことではないと感じていると推察している。もちろん、日本は、革命の熱気に包まれているわけではない。しかし、脱成長の哲学を静かに受け入れた日本人が少なからずいるのかもしれない。
By Leo Lewis
(2022年11月6日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)
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