政府が発行済み株式の3分の1以上を保有することが定めらているNTT。そんなNTTの“完全民営化”案が突如、浮上した。自民党の「防衛関係費の財源検討に関する特命委員会」が9日、財源確保に向けた選択肢の1つとして政府保有のNTT株を売却する案を含む報告書を岸田文雄首相に提出した。同報告書では、政府による株式保有義務を課した「NTT法(日本電信電話会社等に関する法律)」のあり方について、速やかに検討すべきだと指摘した。突然の動きを当事者であるNTTはどう受け止めているのか。同社の島田明社長に直撃した。

 「我々も想定していないタイミングだった。いきなりだった」

 自民党の特命委員会が、NTTの完全民営化を検討すべきだ、としたことについて、NTTの島田明社長はこう打ち明ける。

NTT法見直し案は「いきなりだった」と打ち明ける、NTTの島田明社長(写真:加藤 康)

NTT法見直し案は「いきなりだった」と打ち明ける、NTTの島田明社長(写真:加藤 康)

 NTTは、法律によって政府による株式保有が定められた特殊会社だ。NTT法によって、NTTには国民生活に不可欠な固定電話サービスを「ユニバーサルサービス」として全国各地で提供する責務や、通信技術の研究推進や成果の普及などの義務が課せられている。これらを担保するため、政府がNTTの株式の3分の1以上を保有することが同法に定められている。

 そんなNTT法のあり方について、突如、見直し案が浮上した背景にあるのが、今後5年で43兆円と大幅に増額を見込む防衛力強化に向けた財源確保の必要性だ。政府が保有するNTT株が、財源候補の1つとして浮上した。