// 編集部からのお知らせ //
2023年11月。
ある一人の男が
100歳の天寿を全うした。
ノーベル平和賞も受賞し、
アメリカ政治に多大な
影響を与えた男の死は
多くの有力者たちを悲しませた。
バイデン
「圧倒的な知性と、
深遠で戦略的な着眼点は明らかだった」
プーチン「賢明で先見の明のある政治家」
習近平「古い友人良い友であった」
ところが…一方で彼のことを
こう評する声もある…。
「なぜこの男が国際戦犯法廷
にいないのか不思議でならない」
なぜここまで評価が
真っ二つに分かれるのだろうか?
男は何者なのだろうか?
実は…この男は
「ノーベル平和賞受賞者」以外に
もう一つの顔として囁かれる異名がある…
それが…「アメリカの黒幕」
半世紀に渡り、アメリカを
裏から支配し、世界を
動かしてきた権力者だというのだ。
↓
>続きを見る
******
皆さんこんにちは。
ダイレクト出版政経部門の
石田遼太と申します。
今回、ある男の所業の一つを
ご紹介させていただきました。
1971年に発生した
南米・チリのクーデターについてです。
チリと言うと、日本人にとっては
馴染みが薄い国のように思えますが…
どうやら、アメリカにとっては
隠したい悲惨な歴史が
残る国でもあります。
この国で一体何があったのか、
アメリカがどう関わってくるのか、
今日そのお話しを丸谷先生に
してもらいました。
続きをご覧ください。
******
From:丸谷元人
キッシンジャーは有名な
裏工作をしているのですが、
それが南米のチリクーデターです。
その南アメリカで初めて
民主的に選ばれた
主権国家の大統領が暗殺されるのですが、
それに手を貸したのが
キッシンジャーでした。
60年代までのチリというのは
完全なアメリカの植民地だったのです。
チリは今でもそうですけど、
銅などの鉱物資源が非常に多く採れます。
チリの銅などの価格を
アメリカが決め、安い価格で購入できる
という不平等な密約がありました。
さらにアメリカ企業が、
チリ国内における全ての銅鉱山を
支配下に置いていました。
その間、一般の国民は
まともなお給料をもらえないので、
大きな貧困状態にあったということです。
その結果、チリという国では
何が起きたかと言いますと、
国内産業が壊滅しました。
国民は長期的な不況に
苦しんだのです。
これはチリだけではなく
アメリカが多くの中南米の国々で
やってきたことであります。
当然ながらそうなると
何が起こるかというと、
反米運動が起きるのです。
その反米運動に対して
ソ連が支援するので、
あたかも共産主義対アメリカの戦い
になりますけど、
実は虐げられた国民が
唯一すがることが出来たのが
ソ連だったというだけの
話が結構多いと思います。
チリもそういった状況の中、
非常に苦しんでいました。
そのようなときに出てきたのが、
サルバドール・アジェンデという人でした。
この人は1970年にチリ社会党の
大統領候補として出てきて、
36.2%の得票率で大統領に就任したのです。
この人は元々お医者さんで、
社会の公平とか分配というものを
標榜する社会主義の政治家でした。
しかも先ほども言いました通り、これは
南アメリカの自由選挙で社会主義政党が
選ばれた初めてのケースでした。
このアジェンデ大統領は
アメリカ企業に支配された
銅などの鉱物資源、それから
アメリカ資本から
牛耳られて貧困の原因となっていた
五つの大きな鉱山を国有化にしました。
さらにこれまで資源を散々搾取して
チリから金を吸い取っていた
アメリカに対して、
賠償請求をしたのです。
彼は「払いなさい、
おかしいだろう」と言いました。
アジェンデ大統領の
行った政策は至極真っ当に思えます。
例えば、自分の庭で沢山出ている
湧水があったとすると、
それを外国人がいきなり入ってきて
勝手にそこで建物を作って、
そこから水を汲み出して外に売って、
自分たちには何も入ってこない
という状況は
自分たちの家の感覚から
考えてもおかしな話でしょう。
アメリカはまさに
それをやっていたので、
アジェンデ大統領は
「うちの庭で湧いているものだから、
うちのものです」と言ったに過ぎません。
しかし、それに対して怒ったのが
キッシンジャーであり、
アメリカ政府でした。
キッシンジャーは資源国有化を
支持するアジェンデ大統領が
誕生するその2ヶ月前から、
アメリカ政府内の情報会議において
「なぜあの国を黙って放置しておくのか」
というようなことを言っているのです。
キッシンジャーはアメリカの影響力下に
ある国が社会主義になったら
絶対に駄目だと言うのですが、
腹の底ではチリの資源は
アメリカのものだと思っていたのでしょう。
あいつらが勝手にできるのか、
冗談ではないという意味だったと思います。
そしてついに
キッシンジャーの直属の上司である
ニクソン大統領が裏で操られて、
CIAに対してアジェンデ政権の転覆を命じました。
キッシンジャーは後に
「手段は問わないから
何とかしてアジェンデをやっつけろ」
とも言っています。
ティム・ワイナーという人が書いた
『灰の遺産』という本の
証言にあるのですが、
チリ現地にいる
米国大使が
「アジェンデ政権を武力で打倒する
というのは考えない方がいい、
また失敗するからやめるべきだ」
とキッシンジャーに警告しています。
しかし、これに彼は
堪忍袋の緒が切れました。
そして、この米国大使に対して
「邪魔をするな、黙っていろ」と言ったそうです。
そこからCIAは巨額の資金を投入して、
マスコミや政治家を反アジェンデに
どんどん変えていきます。
チリの軍隊の中にも極右的な同調者に
「アジェンデは共産主義者
だから倒してしまえ」
と言って金を注ぎ込んで
次々に増やしていきます。
その中で1973年9月11日、
アウグスト・ピノチェト将軍が
クーデターを起こしました。
そして、チリ陸軍の中で非常に
尊敬されていた
シュナイダー将軍を拉致しています。
彼がアジェンデ将軍の右腕
となって軍を指揮していたのですが、
拉致して殺害しました。
つまり、日本で言うところの
統合幕僚長のような方を拉致して
殺害する事件を、CIAが承認していた
こともわかっています。
これもすごい話だと思いますが、
日本の陸幕長もしくは
統合幕僚長の誘拐・殺害を
海外の情報機関に命じられて、
本当にやってしまったようなものです。
それから軍事クーデターが起きて、
アジェンデ大統領は
一気に追い詰められていきます。
この9月11日に何が起こったかと言うと、
チリ大統領宮殿に
アジェンデは立て籠もって、
軍と銃撃戦をしながら
最後のラジオ演説を行ないました。
「私はこれからも皆さんの
そばに寄り添っていきます。
この国の労働者諸君、
私はチリという国家と
その運命に忠誠を誓っています。
反逆がこの国を覆い尽くそうとするとき、
他のチリ人たちがこの暗くて
苦しい時間を乗り越えてくれることでしょう。
そして、遅かれ早かれ、よりよい社会が
築かんとする自由な人々が闊歩する
大きな道が開かれることでありましょう。
チリ万歳、人民万歳、労働者万歳、
これが私の最後の言葉となります。
私の犠牲は決して無駄となりません。
この犠牲はいつの日か必ず、
道徳的な教訓として重罪を犯し、
臆病に脱した反逆者たちを
罰するに違いないのです」
と語っています。
これは1973年9月11日
午前9時10分の放送でしたが、
これが最後のアジェンデ大統領の
演説となったのです。
その後のアジェンデ大統領の
詳しい最後は不明です。
銃撃戦をしながら撃たれて死んだ
という話もある一方で、
大統領宮殿の中に突入した
軍によって残虐に処刑された
という話もあります。
このクーデターの数日後、
キッシンジャーはニクソン大統領に
電話をかけて
「仮に今がアイゼンハワーの
時代だったら、我々は英雄だっただろう」
と言って、アジェンデ大統領の
政権崩壊を祝ったと言います。
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<著者紹介>
丸谷元人(まるたにはじめ)
世界の危険地帯を渡り歩き、
危機管理・テロ対策現場の第一線で活躍するプロフェッショナル。
オーストラリア国立大学卒業後、
オーストラリア国立戦争記念館の通訳翻訳者を皮切りに、
長年、通訳翻訳業務に従事。
その後、パプアニューギニア、ナイジェリア、中東など、
毎週のように誘拐や人殺しがあるような治安が悪い地域での
企業の事業展開支援・危機管理業務を数多く請け負ってきた。
時には自ら防弾車に乗り、銃を片手に
現地部族との交渉・要人の警護の業務を行なった経歴を持つ。
自らのネットワークを活用して独自の情報を集め、
安全対策・政治経済の動向など幅広く分析を行う。
現在は、危機管理コンサルタントとして
グローバル外資系企業を中心に活動しつつ、
自身の運営する「月刊インテリジェンスレポート」にて
国際情勢の最新分析を発信している。
丸谷 元人先生について、もっと知りたい方は、
こちらの紹介ビデオをご覧ください。
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