ウクライナ産穀物の関税免除に「抗議」、対ロシアの連帯感揺らぐ…和平協議に悲観論も
■[ウクライナ侵略2年]見えない出口<4>
気勢を上げる男たち、完全武装の警官隊――。今月20日、ポーランド東部の農村地帯に物騒な光景が広がった。隣接するウクライナから来た貨物列車が地元の農民に襲われ、積み荷の穀類が線路上にばらまかれた。
ロシアのウクライナ侵略後、欧州連合(EU)はウクライナ産穀物の関税を免除している。農民はそれが不公平だと主張する。「我々はウクライナを支持しない」と小麦まみれの線路上で声を張り上げた。2年前、欧州の人々はロシアに怒りの声を上げたが、当時の連帯感は雲散霧消しつつある。
ロシアのプーチン大統領は、欧米世論の変化につけ込み畳みかける構えだ。
「我々は交渉の用意がある」。今月8日、プーチン氏は元米保守系テレビ司会者のインタビューで、和平協議に応じるそぶりを見せた。「和平に前向きなロシア、後ろ向きなウクライナ」というイメージを演出する狙いが透ける。
和平協議は2022年前半以降、途絶える。ウクライナは協議再開については「血塗られた独裁者と何らかの合意ができるなどと考えるのはやめた方がいい」(ミハイロ・ポドリャク大統領府顧問)と一蹴(いっしゅう)する。
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領も「ロシアが平和を望むなら、ウクライナ領から出て行けばいい」と強気な姿勢を崩さない。
14年のロシアによる南部クリミア併合後に勃発した東部紛争を巡り、ウクライナはロシアも交えて協議を重ねたが、親露派を使った「占領」の既成事実化が進むばかりで、22年の全面侵略を防げなかった。当時を知る外交官らは「もうだまされない」と口をそろえる。
英王立防衛安全保障研究所によれば、ウクライナ領内に居座るロシア軍の兵力は47万人。約1年前より11万人増えたという。
ウクライナは全領土からのロシア軍撤退を含む「10項目の和平案」への支持取り付けに躍起だ。だが、国際社会では悲観論が広がり始めている。米調査会社ユーラシア・グループが先月出した報告書は前提条件も付けずに「ウクライナは今年、事実上分割されるだろう」と断定調だ。「今よりずっと不利な条件での停戦」を余儀なくされる可能性があるとも指摘した。