8時半、起床。カレー、トースト、グレープフルーツジュースの朝食。てっきり今日は朝から雨だと思ったら、そうでもない。台風の進路が変ったようである。
午後から大学へ。昼食は「すず金」で久しぶりの鰻重。時間が少し遅かったのでもう「大きい方」は売り切れかと思ったが、大丈夫だった。ただし、肝は売り切れ。それにしても、8月1日から100円値上げしたとはいえ、これが1700円ですからね・・・。相場よりも1000円は安いと思う。庶民的というよりも良心的というべきだろう。いや、求道的というべきかもしれない。「鈴文」のランチのとんかつ定食の950円にも同様のものを感じる。「すず金」と「鈴文」。名前も似てる。
「すず金」で食事を終えてから、隣の郵便局で所属している諸学会の年会費の振込みをすませる。本当はもっと早くしないといけなかったのだが、今年度はあれこれ忙しくて、放っておいたのである。5学会で計5万円。ばかにならない額である。惰性で会員であり続けることは恥ずかしいことのように思えたので、少し考えて、1つの学会の振込み用紙の通信欄に今年度で退会する旨を記入した。
教務室で5時まで仕事をして、帰りに地下鉄でいつも乗り換える大手町のひとつ先の日本橋に出る。「英国屋」で秋物のスーツを新調してから「久兵衛」の鮨でもつまもうと思ったのである、というのはもちろん嘘で、京橋のブリジストン美術館でやっている「没後100年 青木茂展」を見物するためである。
その前に高島屋の地下1階にある「フルーツパーラーレモン」で一服する。季節限定のフルーツカキ氷の中からパイナップルを注文する。どんなものが出てくるかわくわくしながら待っていたら、びっくりするようなものが出てきた。シロップに使われているのは、パイナップルをミキサーでジュースにしたもので、水は一切使われていないから、ドロドロしている。黄色い石膏のように見える。そこに輪切りにしてパイナップルを貼り付けてある(目の前で貼り付ける作業を見ていた)。そして彩りにブドウとラズベリーがのっている。「すごいね・・・」と思わず言いながら、口に運ぶ。すごい。パイナップルのシャーベット(食べたことはないが)をゴージャスかつ野生的にした感じだ。パイナップル好きにはたまらない一品である。私の後から来た中年の男性客が、パイナップルジュースを注文したのだが、私のパイナップルのカキ氷を興味深々で眺めていた。彼は、近々、再びこの店にやってきて、必ずやこれを注文するであろう。
ブリジストン美術に到着したのは午後6時。ここは8時までやっているのだ・・・と思ったら、震災の影響であろう、時間短縮で午後6時に閉館とのこと。チェックが甘かった。東京国立近代美術館が7月から時間短縮を止めたんのでなんとなく他の美術館もそうだろうと思い込んでいたのだ。
まあ、それならそれでいい。久しぶりに銀座を歩き、「伊東屋」にでも行ってみよう。
伊東屋ではとりあえず9階のティーラウンジに直行するのが私のいつものパターンである。銀座散歩の休憩場所としてこのティーラウンジはとても重宝している。ありがたいのは大抵空いていることだ。まさに穴場といってよい。
今日の日誌を書いてから、下の階へ順次降りていく。8階のミニギャラリーでは「佐藤みき展」が開催中だった。現在地方紙に連載中のあさのあつこの新聞小説『かんかん橋を渡ったら』の挿絵を担当されているイラストレーターで、その原画なども展示されていた。他の作品は値段がついているが、その原画には値段が付いていない。連載が終わるまでは売り出さないのだと会場係の女性が教えてくれた。なかなか味わいのある原画で、「これなんか素敵ですね」と私が言うと、その女性は「ありがとうございます」と微笑んだ。受付のところでカードが売られていたので5枚ほど購入。そこに佐藤みきさんの経歴が書かれたパネルが置かれていたのだが、そこに載っている写真の方が、いま私と話をしている方と同一人物であることに気がついた。会場係の女性と思い込んでいたが、実は、作者ご本人だったのだ。「あっ、失礼しました。佐藤さんご本人ですね」「はい(笑)」「会場係の方かと思っていました」「か、会場係ですか・・・(笑)」。ホント、失礼いたしました。
「挿絵というのはやはり原稿が届いてからそれを読んで描くわけですか?」
「はい、そうです」
「そうすると原稿が届いていてから挿絵を仕上げるまでの日数はどのくらいなのですか?」
「作家さんによりますがだいたい3、4日というところでしょうか」
「締め切りギリギリに原稿が届くなんてこともあるのでしょう?」
「はい、林真理子さんの(『週刊文春』での連載の)ときは届いたその日のうちに数時間でということもありました(笑)」
なかなかスリリングだ。会場の写真を撮らせていただき、ブログに載せる許可をいただく。「佐藤みき展」は9月10日(土)まで。優しく、幻想的で、ときに官能的な作品である。たんぶ佐藤さんは毎日顔を出されるのではないだろうか。
7階、6階と降りて、5階でなかなか素敵な手捺染のブックカバーを見つけた。「千鳥」と「三ツ星」を購入。
ここで妻からケータイにメールが届く。「帰りは何時?」。以下の階ははしょって家路に着く。7時半、帰宅。