フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月22日(木) 曇り

2012-03-23 08:35:19 | Weblog

  7時、起床。ブログの更新をすませてから、焼肉、キャベツ、トースト、紅茶の朝食。

  今日は文化構想学部の専門演習の登録(いわゆる0次登録)の発表がある。私の演習「個人化の社会学」はあらかじめガイダンスで「0次登録の申請者は全員受け入れます(選外は出しません)」と説明しておいたので、発表をみて、「当った!」と思った学生はガイダンスに出ていな学生である。運がよかったわけではないからね。全員受けれたので人数は多い。講義並みの人数である。しかし、講義と演習の本質的な違いは人数ではない。学生の発表が主体であるかどうかである。大人数の演習でどうやって学生の発表の機会を担保するか。それはすでに考えてある。0次登録に申請した学生を全員受け入れたのは、(論系全体の)選外者を減らすという意図のほかに、演習における新しいやり方を試してみたいという意図があったのである。乞うご期待。

  午後から大学へ。昼食は「五郎八」のぶっかけそば(冷やし)。初めて注文してみたが、かき揚げ、茄子の天ぷら、揚げ餅、卵焼き、大根おろしがのっていて、それに冷たい汁をぶっかけて食べるという趣向。揚げ餅そば(揚げ餅と小海老の天ぷら)の類似メニューであるが、こちらの方が安価(900円)である。

   夕方まで教務室で仕事。

  同僚の岡部先生から『支援』2号(生活書院)をいただく。特集のテーマは、「当時者」はどこにいる?、である。巻等のグラビアページに親元を離れて「24時間支援付き自立生活」を始めた19歳の重度の知的障害者の日常が紹介されている。青年の名前は岡部亮祐。岡部先生の息子さんである。特集の中の岡部先生の論稿「〈支援者としての親〉再考―「当事者の自立を求める当時者」としての」を真っ先に読む。冒頭に岡部先生が十年前に書いた詩のような文章が載っている。

    わたしは奪わない 彼の
    プライドを/お金を/リスクを冒す自由を奪わない

    わたしは守る 彼の
    サポートを受ける権利を/自尊感情を/生きる力を

    わたしは、彼を変えるのではなく、
    彼に変わることを強いる社会を変えたい

    わたしは、障害のある息子の親という当事者であり、
    そして、障害がない当時者でもあることを自覚する

    わたしは、障害のある息子の最大の権利擁護者であり、
    そして、最強の権利侵害者ともなりうることことも
     
    わたしは、わたし あなたは、あなた
    (しかし、かけがえのない あなた)
    わたしは自分の息子をあたりまえに暮らさせたい 

  そして、昨年7月に、岡部先生は10年前の「公言」をついに実行に移されたのである。論稿では情緒的な表現に流れぬよう、専門的な言語の次元で論を展開するよう、細心の注意が払われているが、重度の知的障害のある子を持つ親の気持ちは行間から痛切に伝わってくる。

   「〈自立〉を個人が屹立し対峙するものとしてではなく、関係性とそのきわどく切なくもあるバランスとしてとらえる。そのとき、知的障害/自閉の人たちの自立とそのための支援に内在する非対称性を「内なるパターナリズム」として自覚しつつ〈割り切らない〉という支援の側の持続的な意志こそが、当事者の「生活をまわす/生活をひろげる」ことをかろやかに継続させるために欠かせない〈なにか〉となるように思う。
   そして/言うまでもなく、〈支援者としての親〉もまた同様に自らの「内なる家父長制」を問い続けなくてはならない。 知的障害/自閉の人たちに対する「ケアの社会化」においては、支援者だけでなく「当事者の自立を求める当事者」としての〈親〉のあり方もまた不断の再構築を迫られる。再び中根(成寿ー引用者注)の言葉を借りれば、「親であることをあきらめずに、親であり続けようとするならば、どのように親であるか、つまり『親性』を変化させていく他ない。」(46頁)

  特集を構成する他の論考も読み応えのあるものぞろいである。     

  6時半から夏目坂の「せきはら」で社会学コース(文学部・大学院)の教員懇親会。

  10時、帰宅。風呂を浴びてから、録画しておいた『最後から二番目の恋』の最終回を観る。ほろ苦く、ほろ甘い終わり方であった。破滅型ではない、大人としての分別をわきまえた主人公二人の行動は、TVドラマ向きで、だから楽しみつつ安心して観ていられるというところがある。自分が本当は大人でないことを自覚しつつも、大人らしい振る舞いとはどのようなものであるかを知っている。どう振舞えば、大人らしく見えるかということを知っている。社会学的にいえば、「大人」としての印象管理ができること、それが大人の条件なのである。

  今週はドラマの最終回の週。『孤独のグルメ』も『ハングリー!』も終った。『孤独のグルメ』は再開を期待したい。スタッフもその気なのではなかろうか。『ハングリー!』はとくに優れたドラマというわけではないが、料理がテーマ、レストランが舞台のドラマは個人的に好みなのである。毎週、楽しませてくれてありがとう。