フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

4月24日(日) 晴れ

2011-04-25 03:35:46 | Weblog

  8時、起床。昨日とは打って変わっての青空。散歩日和だ。どこに行こうかと考えながら、卵焼き、茄子の味噌汁、ご飯の朝食。あの地震の2日前に行った鎌倉に行こうと決める。地震の起こる前の日々と地震の起こった後の日々が自分の中で(きっと誰の中でも)切断されたままになっている。それを結びつける何本かの糸の1本が、私の場合、鎌倉再訪であるような気がするのだ。
  10時半に家を出る。蒲田-(京浜東北線)-横浜-(横須賀線)-鎌倉は約1時間。鎌倉駅から若宮大路を南に下る。金沢に行ったときにまずは内灘海岸を目指すように、鎌倉に来たときはまずは由比ガ浜を目指す。たんに海が好きということではなくて、仁義の切り方、といったら大げさだろうか。「バスを待ち大路の春をうたがはず」(石田波郷)。

  12時ちょうどに由比ガ浜に到着。とんびの群れが砂浜の上を舞っている。かなりの数で、ヒッチコックの『鳥』を思わせる。滑川を挟んで、右が由比ガ浜海水浴場、左が材木座海水浴場と呼ばれている。父親の職場(千代田区役所)の海の家が材木座海岸の方にあったせいで、子供の頃からおなじみの材木座の方に自然と足が向く。

  散歩も旅も、日常からの離脱であるが、離脱は一瞬にして起こるわけではない。徐々に起こるのだ。今日も電車の中では日常を引きずっていた。本を読みながら、ふと気がつくと、日常的ことがら(教務の仕事のことなど)を考えていたりする。鎌倉駅から海岸への道を歩いているときも、まだまだ離脱は十分とはいえなかった。しかし、海岸に出て、波打ち際を歩いているうちに非日常的気分になる。海辺にはそういう力がある。たぶん私がまずは海辺に行くのは、そのためだろうと思う。
  海辺を後にして、駅の方へ戻る。若宮大路をまた戻るのも芸がないので、江ノ電の由比ガ浜の駅から和田塚の駅までの住宅街を歩く。そして和田塚駅の線路をまたいで目の前にある、「甘味処無心庵」で一服する。クリームあんみつをまず注文し、それを食べ終えてから、磯辺巻きを注文する。一度に注文しないのは、最初に甘いものを食べ、後から辛いものを食べるためで、一度に注文してしまうと、磯辺巻きが冷めて固くなってしまうからである。これ、「甘味あらい」のときと同じ、私の流儀である。他の店であんみつの類を食べるとき、心の中で、「甘味あらい」にスミマセンと謝っている。なんとなく浮気をしているような気分になるためである。

  「無心庵」を出て、由比ガ浜大通→御成り通り→鎌倉駅と歩く。地元の商店街を歩くのは楽しいものである。鎌倉駅の脇の踏切を渡って線路の向うに出る。神奈川県立近代美術館を目指して、線路沿いの道を歩く(休日の小町通りはまるで竹下通りのような混雑でなかなか前に進めないのだ)。ガイドブックには載っていない道を歩くのも楽しいものである。

  「開設60周年 近代の洋画」展は所蔵作品のみで構成されているから、常設展といってもよいものである。
  ポスターに使われている高橋由一の「江ノ島図」は、実物は経年変化で絵具がくすんで暗いトーンの絵であるが、デジタル処理をされていて明るい絵になっている。たぶん描かれた当初はこうだったのだろう。館内で販売されてる絵葉書もデジタル処理をされたものが使われている。それでいいと思う。いや、それがいいと思う。美術品と骨董品の違いはそこにあるのではなかろうか。
  松本竣介の「立てる像」は大きな作品である。常設展では必ず展示されるので、何度も観ているが、何度観てもいい作品である。今回、改めて観て、二つのことに気がついた。第一、足元に二匹の犬が描かれている。それもとても小さく描かれている。とくに足の間の犬などは、よく見ないと犬であることに気づかないほどである。これは犬が子犬だからではなく、ものすごく望遠で描かれているためである。人物は目の前にいて、背景(高田馬場の風景だといわれている)はものすごく遠いのだ。しかし遠近法は不十分で(中間の事物がない)、そのため、小人の国のガリバーのようになっている。第二、人物の視線は、しっかりと何かを見つめているようでいて、よく観ると、そうでもない。両目は別々の方向を向いているようにもみえる。これが自画像だとすると(そうだと思うが)、松本竣介という人はもしかして斜視だったのだろうか。それとも青年の不安な心理を目線で表現したのだろうか。

  3時ちょっと前に美術館を出て、御成り通りと由比ガ浜大通のぶつかるあたりまで引き返す。さきほどその辺を歩いているときに、「ジャックと豆の木」というギャラリーカフェがあって、ちょうどそこでチャリティーコンサート(ヴァイオリンとチェロ)をやっていて、次の回が3時半からであることを知った。どうぞ聴きにいらしてくださいと店から出てきた関係者の方に声を掛けられたので、これも何かの縁だろうと考えたのである。予定外のことというのは、散歩や旅の楽しみの1つである。
  ヴォイオリンは東山加奈子さん、チェロは太田陽子さん。東京芸大の出身で同級生だが、東山さんは地元の北鎌倉女子学園の卒業生でもある。普段はカルテット・ソレイユという四重奏団として活動しているが、今日はそのうちの二人のコンサート。ヴァイオリンとチェロの二重奏の作品というのは数は多くないが、今日の演目にはクラシックの作品だけでなく、「負けないで」(ZARD)や「涙そうそう」(BIGIN)などのJポップをお二人がアレンジしたもの含まれていた。一番聴き応えがあったのは、やはりクラシックの作品で、最後のヘンデルの「パッサカリア」(ハルヴォルセン編曲)は気合の入った演奏だった。1時間ちょっとのコンサートだったが、楽しかった。

  「ジャックと豆の木」の道路を挟んだ向かいに「こ寿々」という甘味処があり、わらび餅がメインのメニューらしい。ここを今回の鎌倉散歩の最後の場所とする。わらび餅はつきたての餅のように粘度が強く、ほかではちょっと食べたことのない食感である。食べ終わってお茶を飲んでいたら、ところ天が食べたくなって追加注文する。これがとても美味しいところ天だった。ただし、最初からところ天を食べるのではなく、まずわらび餅を食べ、そしてところ天を食べるのが配列の妙であるように思われた。ほとんどの客がわらび餅を注文していたが、それだけではもったいない。店を出るとき、初めて来たらしい女性の二人客がわらび餅とところ天で迷っていたので、「両方食べるといいですよ」とアドバイスしてさしあげた。帰宅してこのことを娘に話したら「ナンパか」と言われたが、全然そんなつもりはない。知らない人と言葉を交わすのは散歩や旅の楽しみの一つである。ちなみに「こ寿々」では、「甘味あらい」に対して申し訳ない気分にはならなかった。わらび餅とところ天は「甘味あらい」にはないメニューだから、浮気には入らないのである。

  鎌倉駅前の豊島屋で鳩サブレーを家族への土産に購入。蒲田には6時5分に到着。家に帰る途中で、相生小学校に寄って、区長選挙と区議会議員選挙の投票をすませる。日常への回帰。日常的世界とは政治的世界でもある。

   本日の散歩にかかった費用は以下のとおり。一万円以内(近場であれば五千円以内)というのが私の中での相場である。もっともこれは私の散歩が単独行であるためで、デートとかになれば、当然、話は別である。男性諸君に言うが、けちってはいけません。

   蒲田⇔鎌倉往復運賃 620円×2=1240円

   「無心庵」 クリームあんみつ 800円、磯辺焼き 800円

   神奈川県立近代美術館 入館料 700円

   東山加奈子&太田陽子デュオ チャリティーコンサート料金 1500円

   「こ寿々」 わらび餅 525円、 ところ天 420円

   お土産 豊島屋の鳩サブレー 945円

   合計 6930円  


4月23日(土) 雨 降ったり止んだり

2011-04-24 02:31:51 | Weblog

  8時、起床。夜来の激しい雨が小降りになったと思ったら、思い出したように、雨音が強くなったりする。風も強そうだ。今日はこういう天気の一日らしい。バタートーストと牛乳の朝食。
  10時過ぎに家を出て、大学へ。今日は修学相談が4件入っている。11:20、12:00、13:50、14:30である。昼食はコンビニで購入したおにぎり3個(梅干、鮭、昆布)。面談の合間に、別の面談室にいる和田先生のところへ行って、「教務の仕事が辛くて・・・」と神妙な顔をして相談すると、和田先生も「私もです」と言って、二人でしばしさめざめと泣く。3時半に最後の面談が終り、面談記録を作成して、事務所へ提出。本日の業務はこれにて終了。4時前に大学を出る。
  有楽町のスバル座へ「SP」を観に行く。ところが別の作品がかかっている。窓口で聞いたら、「SP」は昨日で終了とのこと。えっ、「大ヒット上映中」ではなかったのか(後で調べたら、上映館や上映時間を変更して、まだしばらく上映されるようだ)。

  5時に蒲田に着いて、ジムでも行こうかと思ったが、お疲れ気味でもあるので、「シャノアール」で1時間ほど読書。その後、駅ビルの無印良品で買物をする。一月前にラゾーナ川崎の無印良品で購入していま使っている折りたたみ傘と同じタイプで色違いのものを購入。気に入っている傘なので、そういう傘はいずれそのうち失くすに決まっているから、先手を打ってスペアーを買っておくのである(どうでもいいような傘は失くすことがないから不思議である)。本の背に貼り付けて使う付箋ひもも購入。単行本の中にはしおりのひもが付いていなものがたまにある。そういうときに便利なグッズでる。二本のひもがついているので、一本を本文用、もう一本を注のページ用に使える。有隣堂で以下の本を購入。すでに単行本でもっている本もあるが、文庫本はまた別のものである。同じフロアーの「カフェ・ド・クリエ」で1時間ほど読書の続き。

  嵐山光三郎『不良定年』(ちくま文庫)
  高田渡『バーボン・ストリート・ブルース』(ちくま文庫)
  内田百『阿房列車』(ちくま文庫)
  穂村弘×東直子『回転ドアは、順番に』(ちくま文庫)

  今日の買物はどちらもカードで支払いをした。カードの支払いのときに、店によって、暗証番号を入力する装置を使うところと、サインで済ませるところがあるが、サインをカードの裏のサインと一々見比べる店はめったにないように思う。私は字が下手なので、カードの裏のサインは普段よりも丁寧に書いている。しかし、買物をするときに書くサインは乱雑に(というか普段の書体に)なってしまう。だから見比べられると同一人物ではないのではないかと思われはしないかといつもドキドキする。しかし、これまで何も言われたことはない。一々何か言われたらストレスだが、何も言われないのも不安である。わざと別の名前を書いて、チェックしているのかどうかを試してみたいものだが、それは少々度胸がいる。あるいは平かなで書いてみて、何か言われたら、「ワタシニホンゴヨクワリマセン」と片言の日本語で答えてみようかと考えることもあるが、実行したことはない。


4月22日(金) 曇り

2011-04-23 02:11:31 | Weblog

  8時、起床。肉じゃがとパンと牛乳の朝食。ご飯がたいていのおかずと合うように、パンもたいていのおかずと合う。ご飯と和風のおかず、パンと洋風のおかず、そういう思い込みからは自由になった方がいい。
  11時に家を出て、大学へ。今日は本部での会議が多い。


新緑が美しい(大隈会館前)


たくさんのサークルが新入生を勧誘しようと集まっている

  12時10分から芸術学校の運営委員会。この会議は必ず昼休みの時間に開催され、必ずカレーライスが出される(大隈会館1Fの楠亭からのデリバリーだろう)。そして、特筆すべきことは、ライスの少なさである。びっくりするほどの「小盛り」なのである。初めてこれを見たときは何かの間違いなのではないかと思ったほどである。「う、うそでしょ」と思わず言ってしまいそうになった。しかし、他の人は誰も驚いていないようなので、私だけの目の錯覚なのかもしれないと、驚いた素振りを見せず、黙って食べ終えた。きっと、みんなもそうしていたに違いない。いまでは、ダイエットにはちょうどいい、と思っている。

  いったん戸山キャンパスに戻り、再び本部キャンパスで、2時50分から教担主任会。5時半頃までかかる。引き続いてファカルティ・ディベロップメント委員会。6時半頃までかかる。戸山キャンパスに戻り、食事も抜きで、教務的会議を9時過ぎまで。そして、みんなが帰った後、明日の修学相談の資料に目を通してから大学を出る。「松屋」で夕食をとってから地下鉄に乗る。


鮪のととろご飯と豚汁。


4月21日(木) 曇り

2011-04-22 09:12:33 | Weblog

  8時、起床。ウィンナーとキャベツ炒め、ご飯の朝食。9時に家を出て、大学へ。今日は10時半から文化構想学部の新入生ガイダンスがある、というのは私の勘違いで、実は10時からだった。10時開場でなく、10時開会だったのだ。しかし、家を早めに(主観的には)出ていたので、ぎりぎり滑り込みセーフ。ところが、浦野先生がまだ来ていない。また遅刻(2日の新任教員との顔合わせに続いて)か、私が学術院長代理で挨拶をしないとならないだろうか、何を話そうか、と考えているところへ、浦野先生現る。

  浦野先生の10分ほどの挨拶の後が私の出番で、文化構想学部のカリキュラムについて説明をする。与えられた時間は15分だが、元々時間が足りない上に、学担的なことがらもついでに説明してくれと直前の打合せで言われたので、とてもじゃないけれど15分では収まらない。結果的に25分話をした。そのため後の方々が「巻き」で話をすることになった。すみませんね。それにしても、ようやく新入生たちの顔をみることができた。新学期を実感する。

  1回目のガイダンスを終えて(教室の関係で3回に分けて行うのだ)、昼食は「maruharu」で本日のサンドウィッチとスープ、そして食後にアイスカフェラテ。12時半から2回目のガイダンス、3時から3回目のガイダンス。話す内容は同じである。自分としては1回目の話が初々しい感じ(アドリブ感)を漂わせていて、一番出来がよかったような気がする。2回目と3回目は身体の中で音声テープが再生されているような気がした。

  事務所の裏手の花壇では、ツツジが見頃を迎えている。馬場下の交差点では、行き交う人の数が急に増えた感じがする。賑やかなキャンパス風景がみられるのももう間もなくだ。

  6時過ぎに大学を出る。蒲田に着いて、TAKANOでケーキを購入。新学期の始まりの予感を祝して。


4月20日(水) 晴れ

2011-04-21 14:24:17 | Weblog

  今日は午前中に戸山キャンパス高層棟の起工式があった。大学と建築会社の関係者が参加。普段はフェンスで囲まれている敷地の中に入ることができるた。ポッカリと空いた空間。このまま何も建てず、木立や芝生やベンチのある風景になればいいのにと思ったりする。


鎌田総長の鍬入之儀「エイッ、エイッ、エイッ」

  昼食は、今日は夜まで会議が続くので、腹持ちいいものをということで、「すず金」の鰻重(+肝焼き+肝吸い)。1900円也。

  2時から教授会。終わったのは7時半近く。ある程度予想はしていたことだが、すんなり通らない議案があった。慣習を変えるのは難しい。人間とは習慣の束であり、文化とは慣習のシステムである。したがって慣習を変えるとは人間を変えるということことである。しかし、人間なんて、そう簡単には変わらない。
  7時半からカリキュラム委員会打ち合わせ。9時までかかる。引き続いて、教務的打ち合わせ。10時までかかる。その後もあれこれの用事があって、教務室を出たのは日付の変わるちょっと前。1時ちょっと前に帰宅。風呂に入り、ご飯とスープの遅い夕食をとってから、明日の文化構想学部の新入生科目登録ガイダンス用のパワポの資料の作成にとりかかる。最初は去年のものをそのまま使うつもりでいたが、自分で作ったものでないと、説明が上滑りになりそうなので、一から自分で作ることにした。3時半までかかる。ようやく寝られる。