7時、起床。
『なつぞら』を観てから、朝食をとりに「ユキ・リ」へ行く。

前回初めて訪問して、松本の「お気に入り」カフェに加わったお店である。

朝7時半からやっている(その代り午後4時の閉店である)。

「また来ました」と店主のユキリさんにご挨拶して、大きなテーブルに座る(先客はいない)。

朝ごはん定食を注文。朝早くからやっているこのカフェの看板メニューである。

美しく、かつ美味しそうだ。

5種類のおかずがお皿にのっている。いいですね、こういうのは。

食後にハーブティーを注文。

「ユキ・リ」は3種類のテーブルがある。厨房に向かったカウンター席が4つ。

2人用のソファーとテーブル。

2枚の天板を組み合わせた椅子が5つのテーブル。私は前回も今回もここに座った。広いテーブルが好きなのだ。
さまざまな客にタイプとニーズを考慮したテーブルの配置である。

ユキリさんは、高校生のときから将来のカフェ開業を夢見て、カップや皿をコツコツを集めていたそうである。 若くして夢を実現されてよかったですね。でも、GWの混雑が終わって、人波が引くと、「やっていけるかな」とふと不安な気持ちになることもあるそうである。ここは大丈夫です。さまざなまカフェを観てきた私が保証します。
先日、私の教え子で地元在住のAさんが一人でここに来たそうである。カフェとの付き合い方についての私のアドバイスに従って、支払いのときにユキリさんと話をされたそうである。カフェで一人の時間を過ごすのももちろんいいですが、それだけではなくて、社交空間としてのカフェの実践、いいですね。

ホテルに戻る前に四柱神社に寄っていく。

いま世の中には改元に便乗した「令和」商品があふれているが、この「令和」の幟は本来のものである。

令和最初の四柱神社詣でである。

境内の以前甘味処があった場所に老舗の蕎麦屋「こばやし」が出店している。実は一年前に大手4丁目にあった店が全焼し、ここに移転してきたのである。焼けた店には二度ほどいったことがあるが、火事のことを私は知らなかった。今回、「chiiann」のご夫妻からその話を聞いてびっくりした。焼けた店の後はいま駐車場になっているそうである。

ホテルに戻り、チェックアウト。wi-fiの使えるホテルのロビーでパソコンを使って作業を少々。

昼食は「うらしま」で。ビジネス街にある定食屋さんで、観光客でなく、近隣のサラリーマンが顧客である。

前回来たときはさわら西京みそ焼き定食にメンチカツをオプションで付けたが、あのメンチカツは美味しかった。今日はメンチカツ定食にしよう。

前回と同じカウンター席に座る。

メンチカツ定食。

メンチカツには特製ソースをかける。

「栞日」の分室の一階のタカハシさんの「山山(サンサン)食堂」が開店したら、昼ご飯をどちらで食べるか悩ましい。たぶん一日目と二日目で割り振ることになるだろう。あるいは昼食を「うらしま」、夕食を「山山食堂」としようか(営業時間のことはまだ知らないけれど)。カフェもそうだが、なじみのお店が増えてくると、滞在中にいつどの店に行くのかという問題は、幾何学における一筆書き問題のような様相を呈するのである。

食後のコーヒーは信毎メディアガーデンのロビーに飲みに行く。

ここはwi-fi環境が整っているのだ。

ロビーには「丸山珈琲」という店が入っている。

ここで売っている「牛乳パン」というものが美味しいと「chiiann」の奥様にうかがった。牛乳パンと姉妹品のピーナッツクリームパンを購入(帰りの列車の中ででも食べよう)。

メディアガーデンを出て、高砂通へ。実はもう一軒、覗いてみたいパン屋があるのだ。

この通りには「アガタ」という名前の古本屋がある。なかなかよい品ぞろえの古本屋である。

でも、店内には入らない。入ればきっと何冊か買い込んでしまうだろう。街歩きの途中でバッグを本で重くするというのは賢明な行為ではない。店外の均一本の棚をながめるだけにしておくことにした。けれど、結局、単行本(文庫本ではなく)を3冊購入することになった。やれやれ。
『日常の中の危機』全集・現代文学の発見・第5巻(学芸書林、1968年)
村松瑛『色機嫌~女・おんな、また女 村松梢風の生涯』(彩古書房、1989年)
シンプルライフ研究会編『毎日が輝く! シンプルな生活』(日経事業出版社、1999年)

目ざすパン屋は高砂通りの奥の方にあった。ちょっと見にはパン屋とはわからない。むしろ和菓子屋かと最初は思った。

店名は「田園ベーカリー」。「ガルガ」の奥様がここのパンは美味しいですよと勧めてくれたのだ。それにしても街中で田園ベーカリーとはこれいかに。(この疑問はのちほど氷解する)。

テイクアウトするつもりで入ったが、イートインもできることがわかったので、そうすることにする。

クリームパンと紅茶。

長いカウンターテーブルがある。

「どちらからいらしたんですか?」と聞かれ、「東京です」と答えると、「私も東京の出身です」とおっしゃる。「東京のどちらですか?」と私が聞くと、「大田区です」いうので、「私も大田区です」と答えると「ほんとですか!」と急に会話に弾みがついた。「私は蒲田です」というと「私は田園調布です」とおっしゃる。ちょっと負けた感がある(笑)。「それで田園ベーカリー(笑)」。「ホントですか?(笑)」「実は、結婚した相手が園田だったんです。で、5年前にパン屋を始めるときに、園田をひっくりかえして『田園ベーカリー』にしたんです。田園調布の出身ということも重ねてね」。「なるほどね」。

高校は三田高校だったそうで、私が小山台高校だというと、「14群ですね」と言った。その通りである(ちなみに三田高校は11群だった)。学校群制度のことをご存知というのは一定の年齢の方ということで、「失礼ですが・・・」と年齢を伺ったところ、私より6つ下であった(妻と同じくらい)。ほぼ同世代ということで、ますますおしゃべりに拍車がかかった。楽しい時間でした。今度松本に来るときはまたうかがわせていただきますね。
「栞日」に行く。

いつものデスクも空いていたが、ソファーの方に座る。デスクはノートパソコンやノートを広げて書きものをするとき用で、読書だけの場合はソファの方がいい。今日は信毎メディアガーデンのテーブルで書きものはすませたので、ここでの時間は読書タイムだ。

アイスジンジャエールを注文。

『ATLANTIS』という雑誌を興味深く読んだ。去年の7月の創刊された雑誌で、創刊号の特集は「境界」。国と国との境界から、宇宙の境界や、男女の境界まで、さまざまな「境界」が取り上げられている。
編集後記と思われる文章がある。「いま雑誌を創刊することの意味を見つけ難い時代となりました。 雑誌は媒体の中の部品となり、雑誌としての存在意義は薄れています。しかしながらそれに取って代わったインターネットは肥大化し過ぎました。真実も嘘も同階層として存在し、数多の情報の中から自分にとっての正解を選択することは非常に困難な作業となります。だからこそ純粋で主観的な「雑誌」を創刊することにより、細かく切れそうな糸であっても雑誌の命を繫げることができるのではないか。という想いから今回の創刊に踏切ました。」

ネットサーフィンにはなくて、一冊の雑誌を読み耽ることにあるのは、「静かな気分」だ。
奥様にアイスジンジャエールのお替りをお願いして、2時間ほど滞在した。(もちろん『ATLANTIC』は購入した)。

1階のレジの前のベンチで店員のモトヤナギさんが休憩をとっていた。「私もマネをしてアイスジンジャエールを飲んでいます」と言った。

アイスジンジャエールのよいところは、チビチビ飲むのに適していることだ。アイスコーヒーやアイスティーはごくごく飲めてしまう。しかし、アイスジンジャエールは刺戟が強いから、ごくごくは飲めない。飲んで飲めないことはないが、それではアイスジンジャーの美味しさは味わえない。そして、チビチビ飲むのに適しているということは、長居をして本を読むのに適しているということである。
時刻は5時過ぎ。松本最後のカフェは、最初のカフェと同じ、「chiiann」である。

ご主人も奥様も私が松本を離れる前に立ち寄ることを知っているので、「いらっしゃい。お待ちしておりました」と迎えてくれる。

閉店(6時)までの時間をここで過ごす。(写真はマスターに撮っていただいた)

パンとスープのセット。スープはビシソワーズ(ジャガイモの冷製スープ)。

本日のスイーツである抹茶風味のガトーショコラと紅茶(chiiannブレンド)。

「次はいつ松本にお出でですか」と聞かれる。「まだ決めておりません」と答えると、「7月に市民芸術館で『空中キャバレー』というミュージカルが上演されるのですが、それが素晴らしいので(再演とのこと)、ぜひ観に来て下さい」と言われる。わかりました。学期中なので、確約はできませんが、スケジュールを調整してみますね。カフェの方が薦めるパン屋さんに行ってみたり、カフェの方が薦める催しものに行ってみることも、「カフェとの社交」(カフェでの社交ではなく)の一部であると私は考えている。カフェとはたんなる場所ではなく、そこにいる人たちを含めた社交圏なのである。
ご夫妻に見送られて店を出る。今回もありがとうございました。

ホテルに寄って、預けてあるキャリーバッグを受け取り、荷物の詰め替えをして、駅に向かう。

18時40分発のあずさ号に乗車。

発車から1時間ほど経ったところで、駅構内で購入した山賊弁当を開く。

当初、「丸山珈琲」で購入した牛乳パンを車内で食べるつもりであったが、やっぱり夕食にはご飯が食べたくなって、予定変更で駅弁を購入したのである。牛乳パンは明日の朝食にしよう。
唐揚げは塩を振って食べる。うまい。カフェを巡っていると、スイーツの摂取がどうしても多くなるので、〆はしょっぱいものが食べたくなるのである。

10時前に帰宅。
テーブルの上に今回の旅行のお土産を並べてみる。 初日に見た「彩雲」がよかったのだろう、いつもの方たちばかりでなく、新しい方たちとの出会いもあったよい旅だった。

風呂を浴びて、1時に就寝。