清張先生の小品集。大物と称される小説家の作品群ともなれば、超長編系のいわゆる「大作」というやつばかりがもてはやされる中、清張センセの場合にはこのような小品集の中にも、いや小品だからこその傑作が埋もれているのです。
センセの全集をほぼ全制覇しつつある私のことですから、ここまでくればお気に入りの取材先なども見えてきますし、女性の好みもまあ大体判っちゃう(爆)。
ヒロインにはどちらかといえばジミなのをもってきておいて、容姿のよいハデ目系をとこっとん貶める、というお得意のパターンからはじまって、これまた地味な人物による地味な事件を複数起こさせて、巧妙につなげた挙句、やはりハデ目系を貶めちゃう(爆)、といった読み応え満点の展開型サスペンス(一部意味不明)まで、網羅してあるのがこの「黒い画集」です。
寝床についてから眠くなるまでお付き合いさせていただこうか、程度で読み始めたところが、こりゃすごい!となって、気がついたら明け方まで一気に読みきっていた、というくらいな傑作の連続!タイトルだけとりあげても・・・遭難、失踪、寒流、事故・・・などなど(爆)。ニンゲンのなまなましいいとなみから、人情の機微までをえげつな~く、独自の筆致で描ききる!
読み進むにつれてニンゲンの感情の原点を見るようでまことに感慨深い作品群ですが、センセお得意の、意外、とみせておいて実は非常に巧妙に計算された展開の妙は何十年経とうが極上のミステリー。生誕100周年の今年中に味わっておきましょう、と強くおすすめしておきましょう(爆)。一緒にお酒でも飲んだらさぞかしえげつなくて楽しかったでしょうに、と、有り得ないことながら、センセのお人柄が偲ばれる昨今。