購入からはほぼ1年が経過いたしました。IWCの創立140周年記念モデルとされる、インヂュニアの中古品を手に入れたのはたしか去年の暑くなる前。
大きめで、分厚いケースからは、今風なデカ厚ドケイを連想させてくださいますが、じつは40年代の意匠をそこかしこにまとっている関係で、あまりチャラチャラしてみえない。というのがこのモデルのウリです。
気に入って、ほぼ毎日使い倒していたのですが、風防、本体ともにどんどんキズが付いてきて、いい感じに、と言いたいところなのですが、風防はトケイの命。ここが少しでもくすんでいたり、キズが入っていたりすると、どこかみすぼらしくみえてしまいます。
この風防にサファイアクリスタルとよぶ超高硬度素材を持ってくるのはすでに普通の装備ですが、じっさいの表面硬度はさまざまなようで、このインヂュニアではいとも簡単にキズが入ってしまいます。
パネライなどの一部製品では、ミネラルガラスをあえて採用して、キズが入りやすい仕上げとして、レトロ風のデザインのケースとの相乗効果で全体にヴィンテージ感を持たせる。という高度なワザも落とし込まれている場合もあるようですが、モデルのコンセプトとしても新しいかもしれません。
ダメージテイストと同様のものでしょうけれど、古時計がカッコ良いのは、実際に長年使い込んだから。新品の状態から古時計状態、ってのをカッコイイと言っちゃうセンスにはハナハダ疑問を感じる昨今。
インヂュニアでは、多めに使われたクロームメッキに、フクザツな造形のケースはお手入れがしにくいうえに、汚れもたまりやすくて、ここはマイナスポイント。
ケースサイドにタテにヘアライン仕上げが施されているのも???。デザイン的にも機能的にもX。
高価なクロコダイルのベルト装備もネックで、水仕事の多いわたしの場合、基本仕事に使うのは躊躇される、ってのが実用時計としては非常にアレです。ベルトには防水用にクリームを分厚く塗ったりもしているんですけど、まあね~。気がひける。純正パーツで交換、となれば6万円弱の費用がかかります。
丁寧に扱ったつもりでいても、まあ、保って3年がせいぜい。
全体の雰囲気はハデ目で、ゴージャスなんですけれど、インジュニア、つまりエンジニアというネーミングから連想される実直さ、打たれ強さ(爆)、勤勉さ、というよりは、ハデ好きな遊び人、という雰囲気(個人の感想に過ぎません)を時計全体から受けます。
華はあるけど、重みがない。
って、エンジニア向けに企画された時計にハナだ重みだなんだといわれても困るでしょうが(爆)、このクラスの時計に求められるのはじつはそういうイメージ先行の世界なのです。
時間を知るために、というのでしたら他の選択肢もありますし、そちらの方が正確ときている(完全意味明瞭)。腕時計はいまや服飾の一部といってよい。
服飾やら、時計やらそんなものには興味がねえ、というあなたも、なにを買うにせよ、いざ品物、とくに人の手がかかったプロダクツを買うときにはそれなりに選んだはず。
なんでもいいや、などとうそぶいてみても、本当のところはそんなはずがない。そうやって手にしたものはかなりの部分まで持ち主を語ってしまっているのです。
服飾しかり、クルマしかり、住居しかり。住まいになんでもいいや、と言って数千万円払う人なんてそうはいないでしょう。
逆に、持ち物に自分を語らせよう、だなとどいうことになってしまってはこれも困る。恥ずかしい。
いわゆる「どや時計(爆)」の世界ですが、そちら方面は月刊⭕️NGINEにでも任せておけば良いのです。間違っても買ってはならないジャンル。あ、もちろん私のせっまーいテイストでの意見ですが、元編集長さんのチンドン屋そのもののファッションを見ておりますと、思い込みというのはコワイな、と痛感する昨今でございます。
いっぽうで、現実をしっかりと見据えて、無理をせずに自分のスタイルを確認しながらおこなうもの選び、というのはじつに楽しいものです。
振り返りますと、その時々の自分自身が反映されている場合がほとんどなので、侮れません。本当にフシギなほど。
場合によってはムリしまくりのキヨミズジャンプ、というのも過ぎてみれば思い出なのです(ばかともいいます)。
苦労して買ったものほど、可愛がれるというのもまた事実です。
近年ではネットを通した買い物の発達のおかげで、この苦労がだいぶ緩和されてしまい、労せずして非常にレアなものが自宅にいながらにして入手可能。さらにここが一番効いているのですが、万が一売却、となった場合にも中古市場で売り払いやすい、というのが大きいです。
とまれ、余計なことは置いといて、毎日使ったら時計なんて、そりゃあ、やれてきてあたりまえ。
アンタ、なに言ってんのということになるのですが、どっこいこの世界にはROLEXという横綱がおられます。
ROLEXでは、このヤレを感じることはまずなありません。
画像は20年目のGMT2 ですが、こいつがすごかった!時計としての機能面のポテンシャルはもちろん、外装のヤレに関してはそれこそピカイチの耐久性を誇ります。
サテン仕上げ、と呼ぶヘアラインがステンレスのケース、ブレスレットともに多用されていて、キズが気にならない仕組み。
キズが入りにくい、または入っても目立ちにくい個所には、分厚いクローム仕上げを持ってきておいて、キズが入りやすい面にはヘアラインを施して、キズを気にせずにすむように配慮する。ううむ、ニクい配慮(爆)。
もちろん注意してながめれば、そこらぢゅうキズだらけなのですが、キホンみすぼらしく見えない、どころかつねに新品みたいに見せる仕組みがみえてきます。
先述した、風防にはとことん硬度がもたせてあって、絶対にキズが入らないように備えてある模様。この風防にはいろいろと教えていただきました。
こちら方面が大好き(爆)な私のことですからして、いろいろと紐解いてみたのですが、時計のキモ=インデックスや針などには、素材として安定度抜群のゴールドを使っていたり、鍛造で成形されたのちに数年間ねかせて、狂いをとるというオイスターケースの質感。
さらにパーペチュアルとよぶ自動巻メカニズム、日付を示すデイトジャスト機能やオイスターと呼び習わす本体の防水機能などなど、自社開発技術の集積をみごとに製品に落とし込んで、きっちり育て上げてあるあたり、ブランドとして非の打ち所がない。
現在、あたりまえに他社の2000円程度で買える一般モデルに落とし込まれている技術がすべて ROLEX由来のものだ、と知るにつけ、重みを帯びるわけっす。
ストーリーを帯びている、などというレベルではなく、ROLEX各プロダクツに直接落とし込まれて、文字盤に仰々しくうたわれているんですから、ROLEXの時計一本一本それぞれがストーリーそのものといってよい。
おまけにデザイン。
トラッド、というのか、これ以上変えようがない完成度がもたらしてくれる安定感が独特。50年が1スパンともいわれる異様に長いモデルライフも、1年ほどでモデルチェンジが起きるこの業界では異次元です。
いかがです?クリアな風防に注目。
ちなみに現在時刻にたいして、赤い針が第2時間帯を示しています。外周のベゼルで読むと昼間の14時半すぎ。いうまでもなくロンドン夏時間(なぜ)を示しているのですが、このように昼と夜を一目で判別できるようにレッドとブルーで表現してあるあたり、ニクいなんてえもんぢゃない。
ほぼ60年にわたって、大きな変更なしにこのデザインできた、というのですからたまげます。
画像上の黒+黒ベゼルと赤+青、さらにオリジナルの赤+黒はいずれも着せ替え可能。さらにブレスレットもジュビリーと呼ばれる5連のクラシックなやつと、3連の定番いずれも選択可能でして、スポーツロレックス系では唯一バリエーションが楽しめるモデルです。
現在、中古市場で暴騰中!
ベゼルにもキズが入りまくりなのですが、それと悟らせないような仕上げが施されております。風防は新品同様が20年目でもきっちり維持されている。眺めるたびに、まだいけてんぢゃん、と錯覚させてくださるあたりがROLEXのテイスト、というものです。
各モデルに異常ともいえるエンスージアスティックなファンがいて、文字盤の一文字でも弄ろうものなら大騒ぎ。業界ではゆいいつ安定した相場がモデル、年代ごとにきっちり形成されている、と言われる中古市場の価格がドカンと動く、とそんな密度の濃さ、がお値段に限らずあらゆる面でROLEXの世界には常につきまといます。
裏蓋にスケルトンだなどといって、無駄な(失礼)遊びはいっさいしないあたりも私の好みっす(爆)。
いっぽうで素材方面では信じられない悪シュミ、というかアラブのオイル臭がしてくるモデルも数限りなくある、というあたりはどうにもアンバランスで笑える。まあご商売ゆえなのでしょうが、このあたりにはROLEXの顧客尊重主義が見え隠れいたします。支払い能力のある顧客からの要望があれば、どんなにキモい悪趣味モデルでも作っちゃう。プライドだ、スタイルだ、なんだと言ってない。金払うから作ってくれや、という顧客をないがしろにしない。まことにフシギなスタンスですが、このあたりは遠く霧にかすんでいる謎の世界です。
あまりのポテンシャルゆえに世界中のお金持ちが買収をチラつかせつつ、放っておかなかった、という事情なのでしょう、多分。
まあね、IWCとROLEXの比較などしてみてもまったく意味をなさないわけですが、これら2本持ちの私としては、無意識のうちに比較してしまうのが、こんかいの買い物のワナでした。
当然ですが、一般的な腕時計にすぎないインヂュニアなんて立場がないのが見えている。メーカーとしては真面目ですし、それなりに地歩も築いておられるわけですが、ROLEXとの比較などしてはならじ、というわけですよ。
このあたりがほんの1年でかなり露呈してしまった、というわけ。時計としてはインジュニアが2008年製造、GMT2は1993年モデルですから、圧倒的に新しいのですけれど、この世界ではクルマと違って新旧の比較は意味がありません。その造り込みはまさに異次元のレベルでした。
と、そんなことが見えてしまったらもういけない(キタ~)。
あわてて(爆)関係各方面にメールうちまくり(そうくるか)。時計自体がまだ新し目なのとなんといっても限定モデルなこともあり、4社ほどに査定をしてみますと、思ったよりも好意的な感じでしたので、商談を「買取→下取り」という流れにもってゆきますと、相場と思われる金額より5万円ほど高く買ってくれるお店がでてきましたので、ほぼ未練なく売り払ってしまいますた。
というわけで、インジュニアさま、大変お世話になりました。ほんの1年でしたけれど、一緒にロンドンにも行ったし、ゴージャスな雰囲気はまだ他でもそれなりに人気な模様ですから、可愛がってもらってね~。
と、いうわけで、進むべき道が見えてきたところで(ばかだわ~)、ふるふるしつつ以下、次号。