宮脇俊三・・・元祖鉄じい(爆)、とお呼びしても差し支えないでしょう。「鉄」とはもちろん、「鉄道」のことですが、サラリーマン編集者稼業のかたわら、シュミの鉄道旅行をし続け、中央公論社退職後に「時刻表2万キロ」でいきなり高評価!編集者からイキナリ文壇デビューをはたしたのはアザヤカというしかない。
旅にはそうしょっちゅうは出られない私にとって、このような紀行文を読むのはまさに一服の清涼剤(死語か)。淡々と語られる「国鉄(当時)」全線乗り倒しの記録はなぜか味わい深い。旅程がメモ的に語られるだけかと思いきや、ユーモアと皮肉タプーリのコメントは読んでいて飽きない。どころかクセになって、引き込まれる。いつのまにか、「そろそろでるか~」とつい期待するようになる(爆)。
さらにこの「国鉄全線乗り倒し」への情熱、というのか動機に非常に興味をそそられるほかに、極たまに描かれる家庭内の情景も興味深い。週末、それも金曜日の晩から夜行に乗ってふらりといなくなってしまう父親、というのもカナーリ無責任だと思うが、それを許していた家族にも興味津々・・・金曜日の朝、眼が醒めたとき、今日はどこかへ出かけそうな予感がした。上野から北のほうへ向かいたい気がするので、カバンに時刻表とその方面の地図、洗面道具などを詰めて家を出た(以上、本文より抜粋)・・・というぐあいである(瞠目)。こんなことを毎週続けるうちに家族がいなくなった、というのは現代的なオチでしょうが、どうもそんなこともなかったご様子。
結構なのんべえだったそうで、お銚子を過ごした挙句に、列車に乗り遅れそうになったりすることたびたび・・・かように愛すべき著者のキャラは30年後の今読んでもまったく新鮮だ、の★★★★★!著者は2003年没、ということで誠に残念なことながら、その戒名が「鉄道院周遊俊妙居士」・・・ううむ、すばらしきかな人生(爆)!つうかカナーリベタな戒名ですね(爆)。図書館でセンセの全集を発見したので、しばらくはハマりまくることでしょう。これはこれでリッパな旅のスタイル・・・人生は旅である、とはよくきくフレーズではありますが、戒名にまで反映されたセンセの旅のスタイルは一流であった、と。そう思います。
画像は八ヶ岳、立科連峰に沈んだ夕日・・・ううむ、秋よのう・・・