嗚呼、オーベルジュへの道

長野県佐久市にあるホテル「おいまつえん」CEO兼こづかいさん(爆)の日常

JOHN LOBB 2020 STRAND

2019-10-28 14:26:31 | 履き道楽

毎年、10月25日は、恒例のイヤーモデルの発表日でございます。その時々のジョンロブ の粋を集めた集大成の作品群は99年の創設にはじまって、ここまで。すでに伝説となっておりますが、この一連のシリーズだけは騒ぐ価値があるというものです。

一足の靴に超絶技巧を複数落とし込んでいるのが特徴。にもかかわらず、わざとらしさがまったくなく、普段使いにもおっけい。そういうアンダーステイトメントに徹したあたりが英国とフレンチトラッドの融合に思えてタマランチ会長。コレクションには絶品ばかりが並んでいます。

靴のコレクションとしては空前絶後といってよいセンスは靴マニアならずとも、必見でしょう。今年のイヤーモデルは750足限定にシリアルナンバー入りだ、というからさらに珍しい。

キヲクにある限りでははじめてではないでしょうか?

複数の革のパーツを貼り合わせて縫い上げるのではなく、一枚の革をスパイラル状にカットして靴として成り立たせている、という超絶技巧は、じつはJL2009にも使われていた技法。

このときはラストも全盛期の7000。色は伝説のムーンライトカーフでしたがガメイだとかバーガンディですとか、ワインに使われるブドウ関連の名前が組み合わされて発表されておりました。解説によればステッチに着色されているらしいのですが、現物を眺めたことがないもので。

今回はラストも新型で、現行の主流ラスト=7000などに比べますと抑揚が効いているように見えます。

お値段はどういうわけか現在のところ不明なまま。先行受注の案内が顧客に回っているようですが、この気品ある佇まいからすると即完売かもね。ここまで値上げ一本やりできたこのブランドのことですから、おそらく40万円を伺うレベルになるかと思われます(脱力)。

確かに超絶技巧連発の限定モデルとなりゃあ、これくらいは仕方ないのか、と思わせるのがエルメスグループの手腕というものでせうか。

 

画像はJL2009。一見普通なんだけれども、けしてそうぢゃない。ううむ、気品ですな。ちなみにこの2009も国内定価は336000円でございやした(ためいき)。

 

追記 つい昨日、届いた情報によれば、このstrand様は、国内定価396000円(税抜き)で販売されるそうな。このシリーズはいよいよそんなレベル。もはや既成靴のお値段ではありませんね。

 

 

 


戌の満水に思いを馳せる

2019-10-20 10:11:27 | ブログ

戌の満水は、1742年の8月末、千曲川流域一帯で起きた大水害でございます。この辺り一帯では8月1日にお墓参りをする風習がありますけれど、これはその名残。3000名ともいわれる死者を弔う意味でのお墓参りが300年近くたった今でも行われているというわけです。

戌の満水で起きたことを忘れてはならない、との教えから地元の学校はもとより(夏休みですが)企業なども軒並み休日となって、一族郎党があつまってお墓参り、だったはずなのですが今ではお墓参りの日。ということになってしまいましたが、今回の台風19号のもたらした災害はまさに

令和の満水でございやした。

長野県東部一帯の寺には位牌分け、という風習があり、位牌を親類縁者に分散させて保管するシステムもあります。これも珍しいことですけれど、実に戌の満水の経験から、万が一に備えて大切な位牌は分散させて保全しよう、という知恵なのです。

台風19号は1000年に一度の大嵐だ、という人もいますけれど、どっこい温暖化からくる台風の巨大化をはじめとしたもろもろの異常気象を考えますと、次の大災害がいつどこであってもおかしくないわ、と考えるのが自然です。

いやはや、まったく恐ろしいことですが、この時代に生きとし生けるものとしましてはできることからコツコツと、というしかない。こうして生かされているのだから、なにか少しでもお役に立てれば、と改めて考える秋の夜長でございやしたとさ(爆)。

 

 


台風19号の影響につきまして

2019-10-13 08:24:59 | ブログ

台風19号の通過により、千曲川堤防が決壊した、との報道がなされておりますが、当ホテルの対岸でも発生いたしました。長さ80mにわたり、堤防が崩れましたが、さいわい浸水被害は出なかった模様です。

対岸の当ホテルは無事で、13日現在、平常営業をさせていただいております。

現地ではレベル5の大雨に長時間、見舞われてしまい特別警戒情報も流れて、一時は避難準備を行いましたが、さいわい大雨がピークを超えてことなきを得ました。

13日朝の画像ですが、千曲川の堤防のリミットまでは3m近くを残しております。ですが流量がものすごく、今後流量が増えるはずの下流域ではさらなる被害が予測されます。

千曲川は記録によれば室町時代から氾濫を繰り返してきた、暴れ川です。500年の間に数知れない護岸工事を繰り返してきた現在でこそ忘れがちとなりますが、自然の恐ろしさを思い知った出来事でございました。

ご予約をいただいているお客様には、移動手段などに問題が発生している場合がございます。13日現在では、各高速道路、ならびに北陸新幹線の車両基地水没による当分の運休が報じられております。

当ホテルではキャンセル料などはいただいておりませんので、旅程の変更など、遠慮なくご相談くださいませ。


履き道楽2019 ジョンロブのブラックミュージアムカーフの経年変化について

2019-10-04 08:42:50 | 履き道楽

画像は、今年の1月の初頭に買ったばかりの頃のガルニエ2殿下の状態です。ほとんど履かれていない微中古の状態で入手したもので、あれ以降10月のここまで同サイズはおろかガルニエ2自体がネットの世界には一足も出回っておりません。今後もまったく期待はできないことでしょう。

ジョンロブの廃番モデルはかように貴重なのです。これは、と思ったときにキヨミズジャンプをかませるかどうか、男の甲斐性が試されるのです(ちがうから)。

ジョンロブも若手のデザイナーに任せておいたのでは心もとない、ということなのか、ここへきてコアコレクションと呼ぶヘリテージものを矢継早にリリースし続けておりますが、そもそもこの世界には新鮮味などというものはあってはならないのです。

コンサバな路線を守り抜いた上で、素材なり色なりにセンスのよい遊びがチラリとのぞくかどうか、くらいが限界。ヘタにいぢることわ許されていないのがこの世界です。

さて、殿下にあらせられましては、入手当時はこのようにテカテカしておりました。極上カーフが本来もつツヤだったかもしれませんが、売主のところのワックスが効かされている感じ。まあ、よくある仕上げです。フツー。

あまり好みではありませんでしたので、徹底的に脱脂をおこなって「すっぴん」の状態にもってゆきました。オーナーによっては洗剤でゴシゴシ洗っちゃう、などというダイタンな方法もありますが、ほぼ使われていない状態の靴でしたから水性のクリーナーで6周くらいするうちにはなにも落ちてこなくなります。

わかりにくいですけれど、これがすっぴんの状態。長年塗り込まれていたロウが取り去られてスッキリしていますね。ミュージアムカーフの、それもブラックの様子がよくわかります。グレーというか、パープルというか、そういうなんとも表現できない微妙な濃淡がたまりまっしぇん(ばか)。

できればこのままの状態を維持して暗いところではブラック、おんもでは(爆)グレーぽいパープルな感じで履きたいものだ、ということで方針が決まりましたので、クリームを慎重に選び出します。

手持ちのクリームの中でも無色のものに限って塗り込むことほぼ毎日(のけぞる)。ここまで10ヶ月。ブラックやブルーのクリーム、ワックス類は一切使用しておりません。

今朝の雨の中で撮影したものですが、こんな感じに仕上がりました。あんまり変わりませんか?色合いはそのまま。水分をきっちり湛えた感じで、柔らかそうな印象を受けます。じっさい柔らかいです。

ここまで10ヶ月経過。じつは出番の多い靴でして、さまざまなパンツにも相性抜群なこともあり、そろそろカカトがやばいか、というくらいまで履きこんでしまいますた。

画像をよくご覧になると、靴紐が純正とちがう100均で売ってるゴム紐なのに気がつかれるかもしれません。

これ、じつはすでに2本目。このガルニエのようなヘビーローテーションの場合には概ね4ヶ月程度が寿命です。脱ぎ履きのおおい日本の使用環境に合わせたチューンナップです。

先日、新しいゴム紐に替えたばかりのこれを履いて、300kmの運転、その後列車に乗り換えて帰宅するまで14時間履き続けたことがあったのですが、その時ばかりはゴム紐の締め付けがきつすぎで、途中で緩めますた。

ですが、それ以外は全く快適。オススメです。セリアで手に入ります。ダイソーにはありませんでした。さいきん、ブラウンもリリースされてしまい、まったく重宝ったらありゃあしない。

ううむ、えも言われぬミュージアムのマダラ。味わい深いことこの上ないっす。パリブラウンやレッドも手元にありますけど、ブラックもまたよし。一生ものですなあ〜(とほひめ)


加齢なる遠足 研いだ包丁をつかってみる 

2019-10-03 07:58:20 | 加齢なる遠足(爆)

どかーん。日本海へとやってまいりますた。新潟市の郊外。越後七浦と呼ばれる国定公園の一角です。このあたりは本州ではもっともまばらな海岸線といってよいでしょう(爆)。だあれもいないエリア、区間がそこら中にございます。

台風接近前の平日の昼間。予定がクリアなのはここしかねえ、というわけでフラリと出発いたしました。

現地には同様のことを考える方がいるかな〜、と思ったらそうでもなく、バイクが3台くらいいたのみ。そりゃあそうです。消費増税直後の平日の真昼間にフラフラしているのなんてロクなもんぢゃございやせん(自虐)。

それにしてもこのピーカン。気温、湿度は若干高めながら、屋根あきに障害となるものは何もございやせん。沖合には佐渡島が見えております。ちょーしこいてぶっ飛ばすのは地元の方々のメーワクになりますから、先行車に追いつかないようにペースに気をつけながら、それでもDレンジの5速で流します。

ポルシェ乗りのみなさまからは、そんな低回転ぢゃ、ポルシェ謹製のフラット6が泣くぜ、とのご感想を頂戴しそうですが、私もこのボクスターに乗るようになってからドライビングスタイルが変わりました。

MTモードの4に固定して回転計を2000rpm近辺にはりつけておいた上で、そこはかとないトルクを出し入れしながら、というのも楽しいのですが、こんかいのトクイチオートのスーパーチューンではもっと下からトルクがやってきます。

それこそ1300rpmくらいから湧き上がっているトルクを味わいながら、というのが最高。ううむ、仮にもポルシェのクルマなんだからさ、といいたいお気持ちは私にもわかりますが、これで十分。

加速が必要になった場合にも5のままキックダウンが起きないようにじんわりやっていると、そのままトルクが直線的に立ちあがって違法なゾーンに入ってしまいますからオソロシイ。上越から新潟まで、ざっと130kmほどはありますけど、都市部に突入する前にUターン。

こんどは上越までの130kmをお代わりしてきた、というわけっすよ(ばか)。

誰にもペースを邪魔されずに、アクセルだけではなく、気持ちまで解放できる。これ以上のドライブがありましょうか。ボトムエンドからトップエンドまで、さまざまなシーンで味わってまいりましたけれど、疲れもまったくなく、フシギなくらい。

ううむ、この仕立てはなんというか麻薬的。といって悪ければ、病みつき。今日も出かけたいわ、と。

 

 


コロモ替え2019 節目の年になるのか

2019-10-01 09:07:19 | 秋の夜長のすごしかた

いやはや、暑いんだか寒いんだか、日によってものすごい気温差に見舞われている昨今。みなさま、体調など崩されていませんでしょうか?

さすがの私も疲れて寝込む、なわけはございませんて(爆)。トクイチオートに「参拝」に出かけたり、保管庫に大量にあった「産廃」を12万円もかけて処分したり、てんやわんやの毎日。

処分ついでに、衣替えに合わせて80年代から捨てずにいた大量の衣料コレクションも「リサイクル」という名目で資源ごみとなったのでした。

着る側のサイズが不変なおかげで、ここまで手元に置いてしまった数々のコレクションはいま取り出すと興味深かったです。でもコッケー(爆)。これなんかいいんぢゃね。と思って袖を通しますとそこはかとない痒みがやってきたり(爆)、ピエロのようだったり(更爆)。

でもね、意外だったのはリフォームしてまで着たいと思えるものも少なからずあったこと。アイビーとブリティッシュトラッドベースでここまでやってきた甲斐があったか。

世紀の大傑作だ、とか永遠の定番だ、とか言われて大枚叩いて買ったものたちのはずなのに30年もたちゃあこんなものかよ、といって落胆しそうになるのですが、大いに楽しんだぢゃないか、といって納得することにいたしました。

基本、天然素材100パーセントというのが80〜90年代半ばくらいまでは主流でしたから、今眺めてみてもいいもの感これでもか。そういうのを捨てるってのは服好きとしては結構苦痛ですよ〜(涙)。

穴のあいた靴下を捨てるのはトーゼンですけれど、コンディションの良いセーターやコート類、10万円以上したレザーものなんてえのはタイヘン(爆)。泣きの涙っす。

考えてみれば服飾ギョーカイだってビジネス。現行のものを一刻も早く廃れさせて陳腐化させ、買い替えを促してナンボなのですから、最高級のものを一生大切に手元に置く、などというのは服飾に関してはナンセンス。

流行を追いかけなければ、という意味ではなく、アップデート。つまり古い服を捨てて現行のものにスイッチできないと服の役割を全うさせられない、という意味です。

この場合の服の役割は、着ている本人の気持ちをアゲると同時に周囲から浮かないように見せることです。

誰がなんと言おうと、気に入って着てんだからいいぢゃねえか、というのもごもっとも。ごく最近までの私もそうでしたけれど、それだとなんかしっくりこない。元来、気持ちよくなるためにするのがオサレですから、そういうのは自然に遠ざける。

ジャケットやシャツのシェイプはもちろん、パンツの裾巾などなど。ミリ単位でコントロールされている紳士服の世界ではいとも簡単に陳腐化が起きます。ツンツルテンのスーツを着た紳士は今ぢゃリッパに市民権を得たかに見えますけど、バブルの頃には笑いものだったはず。チャップリンかよ、と(懐)。

50万円のスーツを買ったところで、3年後には着られなくなってしまうものだとしたらものすごく高価なスーツだということになります。クラシックだ、とかいっておいて次の年にはキッチリ陳腐に見せてくださるギョーカイの手法には呆れますが、だったら5万のスーツしか買わんからな、と

なってゆくわけで、サヴィルローでヘンリープールのスーツに100万払うのが賢いショッピングなのかといえば自信もてないわけね。消費税上がったし(爆)。

画像は生まれた時から1着のスーツを着こなしておられるモモちゃん。コンディションも極上で、なにより時の流れを超えた美しさでございやす。どうせ買うならこういうのに巡り会いたいものですのう(爆)。