かねてよりの懸案、ND型ロードスターに乗ってまいりました。ちょうど北海道からお見えになったU教授を迎えに行ったついでなのですが、ちょうどいいや、プロのご同伴でかねてより話題独占のロードスター第4世代の試運転というわけです。願ったり叶ったり。
ディーラーに寄りますと、ちょうど赤のSスペシャル、6MTという一番の売れセンと思われる個体が試乗車として提供されておりました。こいつにほんの10キロほどですが、乗ることができました。ディーラーの対応も最高によく、サワヤカな営業さんに見送られて、発進。
1t内外の軽めな車重から想像される乗り心地からは意外なほどしっとりとした路面のいなしがまずは印象的。このいなしはどこかで、と考えたら、トクイチオートの社長車=初代NAロードスターの超限定バージョン、M2 1001の調整後のあのいなしにそっくりだ(衝撃が走る)。そう、トクイチオートはざっと20年分、3モデルあまりを先取りしていたのです!!
なんともはや!ジョーダンかよ、と思われるでしょうが、そうではありません。本当に背筋が凍りました!!
アシもよく動かされているし、タイアのバタつきが多少あるけれども、トクイチオートの調整技術があれば完璧に仕上がるでしょう、との教授からのご託宣もあって、なかなか(爆)。
ウエストラインが低く切られているので、ボクスターとの比較ですと頭上の開放感は同等。上半身のむき出し感はかなり強い。が、その割に、風の巻き込みが圧倒的に少ないのに驚きました。
このむき出し感は、慣れるまでは結構恥ずかしいかも。ファッションにも相当な気を使う必要あり、とみますた。ボディカラーとのコーディネートを意識しても後悔しないでしょう。
振り返れば、そっけないウインドディフレクターがはめ込まれているだけなのに、風の制御もここまで来たか~、と感慨しきり。初代リリースよりも数年前にリリースされたRX7カブリオレを3年ほど所有していた経験があるのですが、こと風仕舞いではこのレベルは達成されていたかもしれません。けれども初代ロードスターでは、セブンのようにキャビンをカプセル状にして風から完全に遮断してしまうのではなく、テキトーに風を取り込んで流してやる、のようなロードスター流の風仕舞いが行われておりました。
NDの巧妙極まりない風仕舞いには年季を感ぜずにはいられません。大切に作り込まれてきたモデルの歴史を感じるひと時。連綿と育てられてきた古典だからこそ醸せる風合い、とでも申しましょう。
初代NAに追随した欧州各国のモデルたちの風仕舞いも各社それぞれで興味深いのですが、ドイツ系はやはり完全遮断、が基本。ロードスターのようなある程度取り入れながらもイイ感じで遮断、というのは一番高いレベルと思われます。
ボディもすばらしくて、ボクスター比でいっても軽くて小さなこちらのほうが上か。80kmh~100kmh程度の安定感が初代とは段違い。これですと、快適巡航スピードは初代の3割増しくらいに感じられそう。
100kmhの巡航でも、サイドウインドウは下げっぱなしでまったくオッケイ。テキトーに巻き込んで、むしろサイドが上がっている時よりもよい感じの対流ぐあい。排気音もくすぐってくれる感じのいい音が、しっかり聞こえてきて、「らしい」。が、ただの4気筒サウンド(爆)。回してもうるさいだけで、けして嬉しくないのが特徴か(殴)。
トルクは排気量なりで、あり余らないが、使いきれる。
場面によっては、スロットルをガバチョとあけて、パワーを使いきれる快感があるわけで、速度レンジが多少違いますけど、ボクスターにすこし似ているかも。
というか、ボクスターだって初代のロードスターの世界的ヒットがあったからこそ生まれてきたモデルなわけで、ロードスターには常に敬意を払うべきなのです。安易な比較などしては、シツレイというものでございます。
トラッドなインパネは適度に液晶表示を取り入れてあって、ネオトラッド調。先代(NC)のレイアウトのほうがよほどスポーツカーらしくて、古典的。液晶表示のそれも漢字が紛れ込んでいるあたりは萎える(爆)。フライホイールまで軽量化を図った、というエンジンもシャンシャン回っちゃうので、気がつけば低めのギアで4000rpmあたりを中心に使っている感じ。
ゴルフ5そっくりのダイヤル中心の空調に、直線基調のダッシュボードは初代へのオマージュか。高級感ははっきり言ってないが、簡素で文法通りなので、落ち着く。
手首の返しできまるシフトもこれまた歴代各モデルゆずりの手応えで、硬いが、気持ち良い。コクコク、ではなくポクンポクン、という印象。987ボクスターのカチャコンカチャコンしたおもちゃみたいな安っぽいシフトフィールよりも明らかに上。ノブ本体とノブ周辺のデザイン秀逸。
乗り出し300万円は安くはないが、このてのモデルを買うのは40代後半から60代のじじい。じじいの持ち物として、ミョーに安っぽかったり、コゾー臭がしない仕上がりのバランスが値段も含めて絶妙。初代みたく170万円だと、コゾーが買いに来るからね(爆)。あっ、きょうびだとaqua買っちゃうのか?
おじさんの嗜好品としての品格も一瞬見える。八重洲地下街の靴屋で買ったナイロン靴みたい(ばかにしてるのか)。
シェイプの効いたボディは眺めても磨いてもキモチよさそう。画像よりも実物の方がはるかによい、の見本。
運転していると目に入るのはフェンダーの峰。はっきりとわかるエッジが切ってあって、ポルシェともまた違う、どちらかといえばイタリヤンな印象ですね。前後フェンダーの抑揚はBMWのZを連想させますが、なにZだって、ロードスターなしには生まれてこなかったモデルに過ぎない。パクってなにが悪いの、と(爆)。
U教授も、めずらしくかなりな高評価で、バイクに乗らないんだったら、これ一台あれば良いな、と言ってご満悦でございました。
ミョーな顔つきはすぐになれるかもしれませんけど、賛否が分かれるところかも。フロントマスクを人物の表情として捉えると、かなり意地悪な印象。
ですが、乗り味が非常にマイルドなので、乗ってからの印象は表情とは逆にフレンドリーそのもの。ですが、華はない(きつぱり)。乗って本当に楽しいのは事実ですが、肩肘張ってないから、Converse All Star Canvas Oxford程度の位置付け(ホメています)、といいたいが、そいつは初代に対する賛辞。こいつは、乗ったフィールはコンバースでも見た目は全然すがすがしくない。全てが程良くて、トラッドで、文法通りだった初代がコンバースオールスターなら、こいつはアジア生産のナイキ、ってところか(爆)。が、それでも印象が飛び抜けて良い。初試乗なのにすべてにおいてフレンドリーなクルマなんて、そんなにあるもんぢゃない。カーオブザイヤーほぼ確定!
まさに初代の再来。けれど、あれから25年(ここ綾小路きみまろ調)。
ロードスターの乗り出し300ちょぼ、というのは中古車市場ではヒジョーな激戦区。新車にこだわるのならばともかく、ロードスター自らが切り開いた、と言えるセグメントというかカテゴリーにはいまや欧州の列強たちの力作がひしめいていて、それぞれに初代ロードスターリリース以降、連綿と育て上げられて名車の域に達しつつあるのです。
ボクスターしかり、Z3、4しかり。TT、SLKもギリギリそうか。とっくに廃車済みの(失礼)MG Fなんてのもありましたっけ(とほひめ)。
なかでもボクスターなどは伝統のフラットシックスのミッドシップマウント、そこへジェームズディーン伝説の550スパイダーの逸話などもからませて、ポルシェの本流だといわんばかりの育てぶりで、ポルシェの経営面での窮地を救ったとまでいわれる大ヒットとなったわけで、ロードスターサイドから眺めるとまったく皮肉な存在。
そいつの先代モデル(=987)が、ほぼ同レベルの予算で視野に入ってしまう。あ、あくまでも新車にこだわらなけりゃ、のおハナシね。
でもこの手のアソビ車ってのは、基本大切に扱われているのが多いし、距離も本当に少ない個体が多い。いまぢゃ認定中古、というシステムで保証が当たり前の世界ですから、そんなにひどいのはそもそも市場に転がっていない(性善説にもとづいております)、はず。
Z3だって、300もだせば、あのMロードスターが、コンディションはともかく(爆)お釣りがきちゃう世界。1Mにも及ぶか、という巨大カムカバーに印されたBMW M POWERの世界一よく回ると言われる折り紙付きのDOHC6気筒がこれまた手に入るのです。
NDよりもはるかにカッコよいZ4だって色、グレード、装備よりどりみどりで、同レベル予算で検討可能。
同じ100kmhで走って、どちらの満足度が高いか、もちろん人それぞれですが、そんな選択が可能になってしまった。それくらいこのカテゴリーには比較対象がひしめいています。初代ロードスターの影響がいかに大きかったか、驚くばかり。
パワーも車格も数段違いの比較をすることが可能になったあたりが、初代リリース当初と環境的に一番ちがう部分なのは否めない昨今でございます。
新品のConverse All Star Canvas OXの新品と、John Lobb Luffield の中古が、同じ金額で売られていたら、アナタどうします、とそういうお話ですよ、これは(若干例違)。