温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

トカラ列島 小宝島 マショ温泉(そして温泉水を使った製塩)

2012年08月13日 | 鹿児島県

前回取り上げた湯泊温泉の裏手に広がる岩礁を歩いてゆくと、3つの水溜まりがあるこんなところに出くわします。決して干潮時に磯に現れる潮だまり(タイドプール)じゃありませんよ。ちなみのこの岩礁はサンゴ礁が隆起したものでして、岩肌が鋭利に尖ってトゲトゲしており、もし転んだらザックリ切って大怪我間違いなしですから、注意して歩きましょう。


 
この3つならんでいるものは温泉の浴槽なのであります。前回取り上げた湯泊温泉露天風呂より古い時代に、岩を穿って人工的に作られたものなんだそうです。後背にそそりたつ岩でパックリと口を開けている穴からはシューシューゴーゴーと勢い良く蒸気の噴出音が聞こえてきます。


 
3つの浴槽のうち、崖側の槽はその場でお湯が湧出しているらしく、温度計を突っ込んだら77.2℃もありました。これでは入浴なんてできません(温泉タマゴはつくれそうですね)。


 
続いて真ん中(画像左)のお湯を測ると47.5℃、海側(画像右)の槽は41.3℃でした。お湯は崖側の槽内で湧出し、そこから真ん中の槽、そして海側の槽へと流れてゆき、最終的には海へと落ちてゆくのであります。各槽の間には穴が開けられており、そこをお湯が流れてゆくのですが、流量調整のためか穴には木の棒が突っ込んでありました。
3つを比べると、温度的には海側の槽が最高の湯加減ですね。ということで・・・



ふぅーー、気持ちいいーーー!
お湯の見た目は薄らと白く(微かに黄色も混ざりながら)霞んでいる半透明で、槽内の岩が白いために余計に白く濁っているように見えます。硫黄臭が強く、非常に塩辛くて苦みも混ざり、更にはゆで卵の卵黄の味もはっきりと感じられます。硫黄感を帯びた濃厚な海水といった感じですが、目と鼻の先にある湯泊温泉とは似て非なる泉質であり、湯泊よりもベタつきや入浴時の刺激が少なく、湧出量もこちらの方が多いようでした。

私事ですが、このマショ温泉で我が人生における温泉訪問箇所数1500箇所を達成致しました!
(重複訪問している場合はカウントせず)
某サイトでたまたま発見したこの小宝島・マショ温泉の、とっても豪快で粗野で野趣あふれる露天風呂の光景を目にした途端に一目惚れしてしまい、日程に余裕が無いと容易にはアクセスできない場所ですから、何らかのアニバーサリーのときには、絶対にこの温泉で記念すべき時を迎えてやる、と心に決めておりましたので、その念願が無事に叶いまして感慨もひとしおです。



いまいちどマショ温泉の全景をご覧ください。湯船の手前に小さな箱が置かれていることにお気づきでしょうか。何と、とっても濃くてしょっぱいこのマショ温泉の温泉水を使って製塩が行われているのです。画像に写っている小箱は最も熱い湯船から温泉水を汲みあげ、その水を製塩所へ送るためのポンプなのであります。たまたま前回取り上げた湯泊温泉で入浴していたら、その工房を運営している小林さんとお会いし、塩工房を見せてくださるとのことなので、お邪魔することにしました。



●温泉水から製塩
 
小林工房へやってきました。マショ温泉から丘に向かって100mほどでしょうか。海水の淡水化プラントや発電所からも近い場所にありました。さっそく温泉水を煮詰める釜がある右奥の部屋へ。



ポンプで引いてきた温泉水を一旦タンクに溜め、そしてこのデカい長方形の容器へ流し込んで、ボイラーで煮詰めます。一日でドラム缶1本相当の油を燃焼させてしまうんだとか。



マショ温泉の温泉水は、煮詰めると黄色いアクが発生するので、濾過器でアクを濾し取ります。私が手に持っているのは糸をぐるぐる巻いて形成された濾材で、その後ろに写っている縦長の金属製の筒が濾過器です。



煮詰めて水分がある程度まで飛んで塩が結晶化したら、その塩を晒しの布にくるんで家電の脱水機に入れて脱水し…


 
脱水後は透明のアクリル波板で囲まれた小屋の中で天日干しを行います。この時の室内は36℃、湿度67%でしたが、実際に塩を干す際には地獄のような蒸し暑さになるんだそうです。


 
天日で干してカラカラになったら、今度は出荷のための袋詰め作業です。塩にとって湿気は大敵ですから、この作業からは冷房の効いた別の部屋で行います。まずは袋詰めの前にに不純物を取り除かねば! 画像左はまだ不純物が混ざっている状態ですが、右はそれらをすべて除去した後のものでして、まさに混じりッけの無いこの上ない純白の塩の結晶がキラキラと輝いていました。


 
ラベリングして袋に入れ、封をして箱詰めします。全て手作業です。小宝島ということで縁起良く子宝ということばに掛けた商品名にしているんだそうです。自然海塩に比べてカリウム含有量が70倍、カルシウムは10倍と、非常にミネラルを豊富に含んでいるのがこのお塩の特徴です。
この塩はフェリーの船内や鹿児島市内にある十島村役場隣の「トカラ結プラザ」などで販売されています。かくいう私も見学させていただいたお礼を兼ね、帰りの船内で購入させていただきました。なお小宝島には店が存在していないため島内では購入できません。


 
島にはこれといった産業が無いので、小林さんも温泉の塩から膨らむ新たな一手を生み出そうと努力なさっています。たとえば、製塩では副産物としてニガリが生まれますからこれを出荷したり(画像左(上)のペットボトル)、豊かな海産資源と温泉の塩を融合させた派生商品の魚醤をつくったり(画像右(下)は醸造中の魚醤樽)・・・。塩は全国各地の飲食店で、料理やお菓子に使われており、大好評なんだとか。ボイラーを炊くための燃料費が嵩む点が大きな課題ですが、少しずつ販路が拡大されているようですから、喜ばしい限りです。もしかしたら気付かないうちに、既にこのお塩をつかったスイーツを口にしているのかもしれませんよ。

 参考:小林工房ホームページ


泉質不明(少なくとも含食塩-硫黄泉であることには違いありません)

鹿児島県鹿児島郡十島村大字小宝島  地図

24時間入浴可能
無料
備品類なし
トゲトゲした岩場なので歩く際はケガに注意。
電灯類は一切ないので夜の訪問は要注意(草むらや岩陰に潜むトカラハブにも注意!)

私の好み:★★★
コメント (4)
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