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中之島で最も行ってみたかったのがこの青い扉の小屋です。物置じゃありませんよ。これ、温泉なんです。一応観光パンフレットの地図にも小さく薄くその存在が載っています。トカラを扱った書籍のグラビアで初めてこの温泉を目にした時、いかにもマニア受けしそうな怪しげな外観にすっかり心が奪われてしまい、もしトカラを旅する機会があれば是非とも訪問してみたいと希っていたのですが、いざ実際に中之島へ訪れてこの小屋を発見したところで、この施設は建設会社が保有している作業員専用のお風呂であることを知り、外来者の私は外から眺めるほかないのだろうな、と半ば諦観して指をくわえておりました。ところが、ダメ元で宿泊先の宿の方にこの温泉について訊いてみると、今は建設会社の人はこの島から離れており、あそこには誰もいない、鍵は開いているしお湯も溜まっているはずだから、興味があるのなら入ってみたら良いですよ、と希望に満ちた答えを返してくれたのです。というわけで喜び勇んで行ってみることにしました。
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周囲を藪に覆われた古い無人の小屋ですから、内部には泥が積もって虫もたくさん棲息しているような惨状を想定していたのですが、意を決してドアを開けてみると、脱衣所は予想を覆して意外にも綺麗な状態が保たれており、天井には湯気抜きみたいな通気口が開いているので外気は入りこんできますが、きちんと防虫網が張られているため虫はほとんどいませんでした。脱衣場の棚の下段には従業員の方のものと思しきお風呂道具が並んでいましたが、使われなくなって少なくとも一か月以上は経っているらしく、いずれもカピカピに乾燥していました。
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脱衣棚には清掃台帳がくくりつけられており、きちんと当番を決めて管理していたことがわかります。なお台帳の日付は一か月前で終わっていました。棚とは反対側の壁には湯沸かし器の真新しいコントロールスイッチが取り付けられていました。
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浴室は薄暗く、壁にあいた防虫網付の明り取りの穴から外の光が入ってくるだけです。でも暫く使われていないとは思えないほどちゃんとしています。室内には二分された浴槽が据えられています。
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ちゃんとシャワー付き混合水栓が2基も設置されています。先程の湯沸かし器はこのシャワーで使うのでしょう。
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湯舟に張られているお湯の温度を測ると、46.1℃とやや高めの数値が表示されましたが、入浴できない温度ではないので、ちょっと安心しました。
洗い場側へ突き出ている湯口にはホースが接続されており、そのホースは主浴槽でお湯を注いでいます。その傍には浴槽の切り欠けがあり、そこからお湯がオーバーフローしているのですが、お湯が流れる床は鮮やかな赤茶色に濃く染まっていました。
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二分されている浴槽のうち左側の主浴槽には、上述のホースからお湯が供給されているほか、浴槽底の隅にあいた穴からもプクプクと泡を上げながらお湯が湧出していました。つまり足元湧出なんですね。なんて素晴らしいお風呂なんでしょう。純然たる掛け流しであり、湯加減も供述のように46℃とかなり熱めですが、せっかくですから源泉そのままの状態で入浴したいですから(加水するのは悔しいので)、軽く湯もみをしてから加水しないで入浴しました。
お湯は薄ら灰白色っぽい貝汁濁りで、オーバーフローの流路こそ濃い赤茶色に染まっており、浴槽内の側面も同じ色が着色していますが、お湯自体にはそんな色は見られません。でも臭覚面ではその色から連想されるような金気臭は明瞭に感じられ、それと共にミョウバンのような匂いも漂っており、浴室内は逃げ場の無いムンムンとした湯気とこの2種類の匂いが一緒になって充満しており、浴室の戸を開けた途端はその特殊な空気に押し倒されそうにになっちゃいました。味覚面でははっきりとした金気(鉄)味+炭酸味+ミョウバン味+うす塩ダシ味といった感じで、いろんな味覚が混然一体となって舌に伝わり、そして残ってゆきます。他にあまり例を見ない味だったように思います。スベスベとキシキシが混在した浴感で、湯中には滓なのか湯の華なのか、白っぽい浮遊物が舞っていました。
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となりの小さい槽は主浴槽から穴を通ってお湯が流れてくるのですが、その量が少ないのか、かなりぬるくなっており、お湯自体もちょっと鈍っているように見受けられました。また主浴槽と違ってお湯に流れがあまりないのか、湯面には白い結晶がたくさん浮いていました。
同じ中之島でも、近所の西区温泉や東区温泉などの白濁した硫黄泉とは明らかに異なる含鉄系の泉質であり、狭い範囲なのに全く違うお湯が自噴しているのですから、温泉を取り巻く自然環境って本当に不思議ですね。雰囲気といいお湯の質といい、温泉マニアならば興奮必死のお風呂だと思います。
泉質不明
鹿児島県鹿児島郡十島村中之島楠木
入浴可能時間不明
従業員用なので料金設定なし
備品類なし
私の好み:★★★