※今回の記事に温泉は登場しませんのであしからず。
深夜23:50に鹿児島港を出港したフェリー「としま」は、夏の高気圧に覆われてベタ凪の東シナ海をひたすら南下し、トカラの島々に立ち寄って旅客や貨物をおろしながら、ほとんど揺れることなくお昼すぎに小宝島へ到着しました。船内アナウンスはボリュームが小さくて聞き取りにくかったのですが、岩壁に描かれている「ようこそ小宝島へ」という文字を見て、ここが下船すべき島であることを確認しました。
湯泊温泉の記事でも述べましたが、フェリーの甲板から島影を見つけた時には、あまりに小さく平たい島なので、きっとあそこは無人島に違いないと思い込んでいたのですが、フェリーが徐々にその島に近づき、間もなく着岸した時には、島の方には失礼ですが、こんな小さな島で人が生活できるのかと驚いてしまいました。
南国らしい青い空と、コバルトブルーの澄み切った海に早くも感激。
お客さんと荷物を下ろしたフェリーは、宝島へ向けてそそくさと出港していきます。この島の桟橋は外洋に突き出ており、うねりを食い止めるような防波堤が無いため、波の状況によっては車両用のランプウェイが使えないことがよくあるんだそうです。
今回お世話になったのは「民宿パパラギ」。船から降りると宿の方が迎えに来てくれました。
部屋は和室の6畳で、とっても綺麗。地デジTVや冷房が完備されており、しかも無線LANも使えます(無線が届かない部屋もあり)。ただ、建物は島屈指の規模であるにもかかわらず、客室は2室しかありません。宿のご主人曰く、島で最もキャパシティが少ない宿なんだとか。
お食事は2階の食堂でいただきます。部屋には海風が吹き抜け、亜熱帯らしい外の灼熱地獄が嘘のように涼しいのです。都内にいるよりもはるかに快適でした。画像のお食事は夕食のものです。
宿の部屋にいても仕方がありませんが、炎天下の中で温泉に入る気にもなれませんから、入浴は夕方へ後回しすることにして、まずは島を一周してみることいました。島の面積は1平方キロ、外周4キロ、島を周回する道路は海岸より中心部に寄った位置でグルっと円を描いており、ここを歩けば30分で一周できてしまいます。今回はこの周回道路を反時計回りで歩いてみます。集落を過ぎるとすぐに道の両側でアダンが群生をなしていました。
湯泊温泉の記事でも紹介しましたが、集落から歩いてわずか数分で湯泊温泉の入口です。入口の左側にある藪の中には塩湯地獄と称するボッケがあって、煮え滾った灰色の泥はプクプクと小さなドーム状の泡をあげていました。
画像左(下)は湯泊温泉。右(下)はマショ温泉。ボッケも両温泉もひとつのエリアに集中しています。
温泉エリアから北へ進むと、水色の建物が目に入ってきました。これは海水の淡水化プラントでして、島民の生命を守る重要な施設です。これが完成する以前は天水を溜めて利用していたんだそうですが、淡水化プラントの稼働によって蛇口を捻ればいつでも水が使えるようになったわけです。でも、たまに断水があるみたい…。
淡水化プラントの隣で低く鈍い音を絶え間なく響かせている施設は、島専用の火力発電所。敷地内に置かれているワイヤーが取り付けられている金属製の箱は、フェリーで運搬するための石油タンク。
火力発電所の隣には太陽光発電所も併設されており、コンテナの奥にはソーラーパネルが並んでいます。でもその数は少ないので、発電量としては雀の涙ではないのかな。
発電所の斜め前の海側は城之前漁港。四方を海に囲まれている島ですから、漁業が盛んなのかと思いきや、漁獲をしたところで、週2便しかないフェリーでは出荷ができないためか、あまり漁は行われておらず、漁船は釣り船として太公望を載せることが主な仕事となっているみたいです。トカラ列島近海は大物釣りが狙える海域として、釣り人の間ではかなり有名みたいですね。
トカラ列島を結ぶ航路は、定期路線で最後まで艀が残っていたところであり、小宝島の艀が廃止されたことによって国内の定期航路から艀が消えました。つまり日本最後の艀なのであります。ここで陸揚げされて放置されている小舟こそ、その艀なのです。
隆起サンゴ礁の島ですから、浸食に弱いサンゴの岩が風化されることによって奇岩が生まれます。これらの奇岩は外ばんや・ばんや・そうとうじと呼ばれているんだそうでして、海風などにより海側の山肌は櫛状に風化しています。
集落の反対側にあたる横瀬海岸へとやってきました。さっそく海岸へといってみましょう。
だだっ広いサンゴの岩場が広がる海岸。海流に乗って流れてきた漂着ゴミが多く、そのほとんどは漢字表記です。当初はここで泳げたらいいな、と思っていたのですが、一帯は鋭利に尖っているサンゴの岩ばかりであり、しかも潮の流れも早そうだったので、ここで泳ぐことは断念…。
ひたすら真っ平な周回道路。沿道ではハイビスカスが鮮やかに咲いています。
いつの間にやら、港近くの牧場までやってきました。ここまでくればスタート地点である集落まではもうすぐです。
トカラ列島の基幹産業は畜産です。この島でも牧場で黒毛の牛が飼育されており、島で繁殖させて産まれた仔牛を出荷しているようです。クソ暑いというのに、炎天下の中、牛は平気な顔をして草を食んでいました。
牧場の裏手の海岸は、一部が人工的な赤立岩海水浴場となっています。牧場から砂利道を歩いて海岸へ向かうのですが、途中から道が消え、ゴツゴツした岩場を飛び跳ねていったら、ようやくこの海水浴場を発見することができました。標識も何もないから、これを見つけるまでにはちょっと迷っちゃったんです…。
繰り返しになりますが、島は隆起サンゴ礁ですから、砂浜のようなものはなく、海岸はどこでもトゲトゲの岩だらけですから、迂闊に泳ごうとすると全身傷だらけになっちゃうこと必至です。でもここでは人工的にコンクリで固めてくれているので、トゲトゲを気にせずに海水浴ができるのです。私も灼熱の太陽光線から逃れるべく、ここでちょこっと泳いでみました。入り江が奥に入り込んでいるためか、あるいは干潮だったためか、水はやや濁り気味で、底もヌメヌメしており、あんまり気持ち良いものではありませんでした。さらには、海水がやけにぬるかったのですが、これは干潮で海水が温められている他、このあたりの海底からは温泉が湧出しているらしく、水中のあちこちで温度差によるモヤモヤが発生しており、そのようなところは決まって底が熱くなっていました。
港や牧場から集落へ向かう途中に、このような切通しを抜けます。このあたりはトカラハブが出てきやすいポイントなんだそうでして、実際に路面には車に轢かれたハブが絶命していました。
島ではあちこちでアダンが群生をなしており、パイナップルに似た実が鈴なりでした。でもこの実は繊維質なのでちっとも食えません。
パパイヤもあちこちに生えており、青い実をつけていました(人為的に栽培しているのかも)。
島の周回道路から集落へ向かう文陽通りに入ります。途中で島唯一の自販機を発見しましたが、残念ながら故障中でした。炎天下を歩いてヘロヘロで、軽い脱水症状に陥っていたため、どんなものでもいいから冷たいドリンクで水分補給したかったのですが、そんな願いもあえなく頓挫してしまいました。
宝島小中学校・小宝島分校。校庭にはトラックが設けられていますが、狭い敷地ですからもトラック小さく、一周するだけで目が回っちゃいそうです。島の人口は50人程度で子供も数名しかいませんが(山海留学生を含む)、中学までは義務教育ですから、たとえ小さな島でも、子供が生活している限りは学校が存在するんですね。先生一人に対して生徒2~3名ですから、この上ない贅沢な学習環境かもしれません。イジメなんて存在するはずもありません。
学校の目の前は僻地診療所です。
村営住宅?と思しき画一的な住宅が並ぶ一角。ちゃんと消防団が組織されており、家々と並んで建っている車庫では消防用に赤く塗った軽自動車も控えていました。
消防団の車庫の斜め前に建つ小屋は村役場の出張所。小宝島から乗船するフェリーの切符はここで購入します。出張所はスタッフ一人が担当しており、窓口以外にもいろんな業務も兼任しているため、出張所が開いている時間はかなり限られています。私は翌日の上り便の切符を買いたかったので、乗船前日の15時半頃に伺い、スムーズに券を入手しました。窓口の開設時間については、宿泊先でその都度確認しましょう。
集落の外れには「小宝島温泉センター」という施設がありますが、数年前から設備不良のため、温泉はストップしたまま。名前倒れの温泉センターなんですね。ちなみにセンターの脇にはコインランドリーが設置されていますが、この島のみならずトカラ列島ではコインランドリーが各島に置かれているみたいです。
温泉センター付近にある見晴らしの良いところからは、沖合に浮かぶちいさな無人島が望めます。その名も小島。格好の釣り場であるとともにダイビングスポットでもあり、潜るとデカい熱帯魚がたくさん泳いでいるんだとか。
今回、小宝島は1泊のみ。この島での最大の目的である露天風呂に極上なコンディションで入浴でき、身も心もこの上ない充足感で満たすことができました。次の日は朝早く出発する上り便のフェリーで悪石島へ向かいました。
深夜23:50に鹿児島港を出港したフェリー「としま」は、夏の高気圧に覆われてベタ凪の東シナ海をひたすら南下し、トカラの島々に立ち寄って旅客や貨物をおろしながら、ほとんど揺れることなくお昼すぎに小宝島へ到着しました。船内アナウンスはボリュームが小さくて聞き取りにくかったのですが、岩壁に描かれている「ようこそ小宝島へ」という文字を見て、ここが下船すべき島であることを確認しました。
湯泊温泉の記事でも述べましたが、フェリーの甲板から島影を見つけた時には、あまりに小さく平たい島なので、きっとあそこは無人島に違いないと思い込んでいたのですが、フェリーが徐々にその島に近づき、間もなく着岸した時には、島の方には失礼ですが、こんな小さな島で人が生活できるのかと驚いてしまいました。
南国らしい青い空と、コバルトブルーの澄み切った海に早くも感激。
お客さんと荷物を下ろしたフェリーは、宝島へ向けてそそくさと出港していきます。この島の桟橋は外洋に突き出ており、うねりを食い止めるような防波堤が無いため、波の状況によっては車両用のランプウェイが使えないことがよくあるんだそうです。
今回お世話になったのは「民宿パパラギ」。船から降りると宿の方が迎えに来てくれました。
部屋は和室の6畳で、とっても綺麗。地デジTVや冷房が完備されており、しかも無線LANも使えます(無線が届かない部屋もあり)。ただ、建物は島屈指の規模であるにもかかわらず、客室は2室しかありません。宿のご主人曰く、島で最もキャパシティが少ない宿なんだとか。
お食事は2階の食堂でいただきます。部屋には海風が吹き抜け、亜熱帯らしい外の灼熱地獄が嘘のように涼しいのです。都内にいるよりもはるかに快適でした。画像のお食事は夕食のものです。
宿の部屋にいても仕方がありませんが、炎天下の中で温泉に入る気にもなれませんから、入浴は夕方へ後回しすることにして、まずは島を一周してみることいました。島の面積は1平方キロ、外周4キロ、島を周回する道路は海岸より中心部に寄った位置でグルっと円を描いており、ここを歩けば30分で一周できてしまいます。今回はこの周回道路を反時計回りで歩いてみます。集落を過ぎるとすぐに道の両側でアダンが群生をなしていました。
湯泊温泉の記事でも紹介しましたが、集落から歩いてわずか数分で湯泊温泉の入口です。入口の左側にある藪の中には塩湯地獄と称するボッケがあって、煮え滾った灰色の泥はプクプクと小さなドーム状の泡をあげていました。
画像左(下)は湯泊温泉。右(下)はマショ温泉。ボッケも両温泉もひとつのエリアに集中しています。
温泉エリアから北へ進むと、水色の建物が目に入ってきました。これは海水の淡水化プラントでして、島民の生命を守る重要な施設です。これが完成する以前は天水を溜めて利用していたんだそうですが、淡水化プラントの稼働によって蛇口を捻ればいつでも水が使えるようになったわけです。でも、たまに断水があるみたい…。
淡水化プラントの隣で低く鈍い音を絶え間なく響かせている施設は、島専用の火力発電所。敷地内に置かれているワイヤーが取り付けられている金属製の箱は、フェリーで運搬するための石油タンク。
火力発電所の隣には太陽光発電所も併設されており、コンテナの奥にはソーラーパネルが並んでいます。でもその数は少ないので、発電量としては雀の涙ではないのかな。
発電所の斜め前の海側は城之前漁港。四方を海に囲まれている島ですから、漁業が盛んなのかと思いきや、漁獲をしたところで、週2便しかないフェリーでは出荷ができないためか、あまり漁は行われておらず、漁船は釣り船として太公望を載せることが主な仕事となっているみたいです。トカラ列島近海は大物釣りが狙える海域として、釣り人の間ではかなり有名みたいですね。
トカラ列島を結ぶ航路は、定期路線で最後まで艀が残っていたところであり、小宝島の艀が廃止されたことによって国内の定期航路から艀が消えました。つまり日本最後の艀なのであります。ここで陸揚げされて放置されている小舟こそ、その艀なのです。
隆起サンゴ礁の島ですから、浸食に弱いサンゴの岩が風化されることによって奇岩が生まれます。これらの奇岩は外ばんや・ばんや・そうとうじと呼ばれているんだそうでして、海風などにより海側の山肌は櫛状に風化しています。
集落の反対側にあたる横瀬海岸へとやってきました。さっそく海岸へといってみましょう。
だだっ広いサンゴの岩場が広がる海岸。海流に乗って流れてきた漂着ゴミが多く、そのほとんどは漢字表記です。当初はここで泳げたらいいな、と思っていたのですが、一帯は鋭利に尖っているサンゴの岩ばかりであり、しかも潮の流れも早そうだったので、ここで泳ぐことは断念…。
ひたすら真っ平な周回道路。沿道ではハイビスカスが鮮やかに咲いています。
いつの間にやら、港近くの牧場までやってきました。ここまでくればスタート地点である集落まではもうすぐです。
トカラ列島の基幹産業は畜産です。この島でも牧場で黒毛の牛が飼育されており、島で繁殖させて産まれた仔牛を出荷しているようです。クソ暑いというのに、炎天下の中、牛は平気な顔をして草を食んでいました。
牧場の裏手の海岸は、一部が人工的な赤立岩海水浴場となっています。牧場から砂利道を歩いて海岸へ向かうのですが、途中から道が消え、ゴツゴツした岩場を飛び跳ねていったら、ようやくこの海水浴場を発見することができました。標識も何もないから、これを見つけるまでにはちょっと迷っちゃったんです…。
繰り返しになりますが、島は隆起サンゴ礁ですから、砂浜のようなものはなく、海岸はどこでもトゲトゲの岩だらけですから、迂闊に泳ごうとすると全身傷だらけになっちゃうこと必至です。でもここでは人工的にコンクリで固めてくれているので、トゲトゲを気にせずに海水浴ができるのです。私も灼熱の太陽光線から逃れるべく、ここでちょこっと泳いでみました。入り江が奥に入り込んでいるためか、あるいは干潮だったためか、水はやや濁り気味で、底もヌメヌメしており、あんまり気持ち良いものではありませんでした。さらには、海水がやけにぬるかったのですが、これは干潮で海水が温められている他、このあたりの海底からは温泉が湧出しているらしく、水中のあちこちで温度差によるモヤモヤが発生しており、そのようなところは決まって底が熱くなっていました。
港や牧場から集落へ向かう途中に、このような切通しを抜けます。このあたりはトカラハブが出てきやすいポイントなんだそうでして、実際に路面には車に轢かれたハブが絶命していました。
島ではあちこちでアダンが群生をなしており、パイナップルに似た実が鈴なりでした。でもこの実は繊維質なのでちっとも食えません。
パパイヤもあちこちに生えており、青い実をつけていました(人為的に栽培しているのかも)。
島の周回道路から集落へ向かう文陽通りに入ります。途中で島唯一の自販機を発見しましたが、残念ながら故障中でした。炎天下を歩いてヘロヘロで、軽い脱水症状に陥っていたため、どんなものでもいいから冷たいドリンクで水分補給したかったのですが、そんな願いもあえなく頓挫してしまいました。
宝島小中学校・小宝島分校。校庭にはトラックが設けられていますが、狭い敷地ですからもトラック小さく、一周するだけで目が回っちゃいそうです。島の人口は50人程度で子供も数名しかいませんが(山海留学生を含む)、中学までは義務教育ですから、たとえ小さな島でも、子供が生活している限りは学校が存在するんですね。先生一人に対して生徒2~3名ですから、この上ない贅沢な学習環境かもしれません。イジメなんて存在するはずもありません。
学校の目の前は僻地診療所です。
村営住宅?と思しき画一的な住宅が並ぶ一角。ちゃんと消防団が組織されており、家々と並んで建っている車庫では消防用に赤く塗った軽自動車も控えていました。
消防団の車庫の斜め前に建つ小屋は村役場の出張所。小宝島から乗船するフェリーの切符はここで購入します。出張所はスタッフ一人が担当しており、窓口以外にもいろんな業務も兼任しているため、出張所が開いている時間はかなり限られています。私は翌日の上り便の切符を買いたかったので、乗船前日の15時半頃に伺い、スムーズに券を入手しました。窓口の開設時間については、宿泊先でその都度確認しましょう。
集落の外れには「小宝島温泉センター」という施設がありますが、数年前から設備不良のため、温泉はストップしたまま。名前倒れの温泉センターなんですね。ちなみにセンターの脇にはコインランドリーが設置されていますが、この島のみならずトカラ列島ではコインランドリーが各島に置かれているみたいです。
温泉センター付近にある見晴らしの良いところからは、沖合に浮かぶちいさな無人島が望めます。その名も小島。格好の釣り場であるとともにダイビングスポットでもあり、潜るとデカい熱帯魚がたくさん泳いでいるんだとか。
今回、小宝島は1泊のみ。この島での最大の目的である露天風呂に極上なコンディションで入浴でき、身も心もこの上ない充足感で満たすことができました。次の日は朝早く出発する上り便のフェリーで悪石島へ向かいました。