文化逍遥。

良質な文化の紹介。

わたしのレコード棚―ブルース12、Bo Weavil Jackson,Bobby Grant,King Solomon Hill,

2011年05月25日 | わたしのレコード棚
 事績はほとんど知られておらず録音も少ないが、ブルースのプロトタイプ(原型)と思われるスライド系のギターリストを3人上げておきたい。前回のロバート・ジョンソンにもかなり影響があったのではないかと思っている。
 
 ボー・ウィーヴィル・ジャクソン(Bo weavil Jackson=Sam Butler)の生没年ならびに場所はよくわかってない。CDの解説によると、アラバマで活動していたらしい。録音は1926年シカゴで6曲、同年ニューヨークで7曲。もっとも初期に録音を残したブルースマンの一人と言えるだろう。スライド奏法ばかりではなく、ストロークでコードを弾くフォーク・ソングに近いものも有り、ストリートで演奏していた様子を彷彿とさせる。
 ボビー・グラント(Bobby Grant)は、1927年にシカゴで2曲のみを録音しているが、やはりくわしい生没年などはわかっていない。ギターのうまい人で、音の使い方に独自のものがあり、リズムも流暢でわたしには後のブルースマンよりもむしろ洒落た感じに聞こえる。
 キング・ソロモン・ヒル(King Solomon Hill=Joe Holmes,c1897Miss~c1949La)は、1932年に北部ウィスコンシン州のグラフトンでパラマウントに6曲の録音を残しただけだ。サム・コリンズやブラインド・レモン・ジェファーソンと共に演奏活動をしていたこともあるらしいが、くわしいことはわかっていない。ファルセットを使ったり、演奏スタイルはジェファーソンの影響も感じられる。あくまで個人的な想像だが、ロバート・ジョンソンはこの人にかなり影響を受けたのではないだろうか。それにしても、キング・ソロモンとは旧約聖書から取ったのだろうが、すごい名前。南部から出たミュージシャンには訳のわからない芸名が多い。それは、その人のあだ名だったりすることもあるが、多くはレコード会社が一人のミュージシャンを録音する際に他のレコード会社と重複した場合の問題を避けるためと大衆の気を引くためだったらしい。なので、一人の人が複数の芸名を持っていることもあり後の時代のわれわれから見れば混乱してしまうことも多い。



 このCDは、DOCUMENTの5036『Backwoods Blues』。Backwoodsとは普通に考えれば森の奥ということで、「かなりな田舎」あるいは「辺境」という意味になるが、あるいは北部から見た南部という広い地域を指しているのか、はたまたその人のくわしい事が隠れていて見えないという意味もあるのかもしれない。4人のブルースマン、すなわちBo weavil Jackson,Bobby Grant,King Solomon Hill,Lane Hardinの残した全録音を収録。録音はみな北部の都会で行われている。
 レーン・ハーディン(Lane Hardin)もくわしいことはわからない人だが、CDの解説によると亡くなったのは1949年になっている。録音は1935年にシカゴでの2曲「Hard Time Blues」「California Desert Blues」だけらしい。ギターはスライド奏法ではなく、聴いた限りではロバート・ピート・ウィリアムスを、裏声で歌いきるところはスキップ・ジェイムスを想わせる。解説にはキング・ソロモン・ヒルの記憶として、テキサスからルイジアナに出た人でシブレイ(Sibley)でプレイしていた、とあるのでルイジアナで活動した人かもしれない。12弦ギターを使っているようにも聞こえるが、定かではない。曲名を見てわかるように、曲のテーマはブルースというよりフォークに近く、ウッディ・ガスリーをも連想される。この頃は「ブルース」という固定観念はまだ弱く、さまざまなミュージシャンが地方都市を渡り歩いてプレイしていたのを想わせる。 


Yazoo1026
 こちらのLPはYazooの1026、戦前のボトルネック・ブルース・ギターリストの14曲を収録。先人達が、いかに苦労と工夫を重ねて音楽を作り上げてきたか良くわかる名盤。演奏者・曲名・録音年は以下のとうり。
A面:King solomon Hill-Whoopie Blues(1932),Barbecue Bob-Atlanta Moan(1930),Shreveport Home Wreckers-Fence Breakin' Blues(1930),Robert Johnson-Milkcow's Calf Blues take2(1937),Black Ace-Black Ace(1937),Ruth Willis-Man Of My Own(1933),Jim & Bob-St.Louis Blues(1933),
B面:Bo Weavil Jackson-You Can't Keep No Brown(1926),Weaver & Beasley-Bottleneck Blues(1927),Ramblin' Thomas-So Lonesome(1928),Kansas Joe & Memphis Minnie-My Wash Woman's Gone(1931),Oscar Woods-Evil Hearted Woman Blues(1936),Bukka White-The Panama Limited(1930),Irene Scruggs-My Back to The Wall(1930),
 このなかでランブリング・トーマス(Ramblin' Thomas)とオスカー・ウッズ(Oscar Woods)は次回に、それ以外のミュージシャンは回を改めて取り上げる予定。

 昔のブルースマンの録音に接すると、それぞれが音楽に真摯に向き合い、自分なりの音を作り上げてゆこうと苦心しているのが聴き取れる。大切な遺産として受け継いで、自分なりに良い音楽を創り出せればと思うが・・・正直言って荷が重い。 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする