文化逍遥。

良質な文化の紹介。

『K』三木 卓著、講談社2012

2012年06月06日 | 本と雑誌
図書館で本を借りて読むのはお金がかからないので仕事が無い時には一番良いのだが、手あかの付いていない新刊本を読む快感が味わえない。まあ、ぜいたくな悩みだ。歩いて10分の所に大きな公共図書館があるだけでもありがたいことなのだ。
そんなことをツラツラと考えながら図書館に行ってボーっと棚を見ていたら、「新着本コーナー」という棚があることに気がついた。まだ手垢の付いていないまっさらな本が、ズラリと並んでいるではないか。
いままで気が付かなかったのが迂闊だが、どうしても作家やテーマで本を探していくので気にもしていなかったし、場合によってはネットで検索して収蔵と在庫を確認して、まっすぐに貸出カウンターに行くこともあるので目に入らなくても無理もない。

そんなわけで、その「新着本コーナー」で見付けて借りてきたのが、詩人であり小説家でもる三木卓氏の『K』という本。やはり詩人である奥さんの福井桂子氏が2007年9月に72歳で亡くなるまでの数年間を中心に奥さんとの痛切な思い出をつづった私小説。
詩人の日常生活がテラいなく淡々と描かれていて秀逸。ちなみにKとは、奥さんのイニシャルだという。
朝日新聞6/5の夕刊で、この本について特集を組んでいる。
その中で、著者の三木氏はこの本について「実名でありのまま書いた。うそのない私小説」と、語っている。
夫婦や親子の関係を、改めて考えさせらる良い著作と思う。


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