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わたしのレコード棚―ブルース65、Frank "Springback" James

2019年02月26日 | わたしのレコード棚
 フランク “スプリングバック” ジェイムス(Frank“Springback” James)は、シカゴで活動していたピアニストであること以外に詳しいことはわかっていないが、生まれはアラバマで、本名はHairston Jamesらしい。ニックネームの「スプリングバック」は、「バネの様な背中」の意味で、ようするに性的な強さを誇示したものらしい。
 スタイルは、明らかにリロイ・カーの影響を強く受けたピアノスタイルだ。ウィリー・ビー・ジェイムス(Willie Bee James)というギタリストがバックに付いている曲も多いが、ギターはやはりスクラッパー・ブラックウェルのスタイルに近い。それでも、二人とも単なる模倣ではなく、きちんと自分なりにこなれた音を作り上げていて、安心して聴ける。すなわちそれは、確かな演奏技術を持っていることを表している。
 英語の聞き取りは自信が無いが、歌詞はニックネームのとおりで性的なものが多く、リロイ・カー&スクラッパー・ブラックウェルに比べるとテーマが浅く叙情性には欠けるように感じる。が、それはまたそれで、シカゴの戦前の雰囲気を伝えていてなかなか良いものだ。
 ギタリストのウィリー・ビー・ジェイムWillie Bee Jamesという人も詳しい事はわからないが、名前からするとFrank “Springback” Jamesの兄弟か、あるいは親戚かもしれない。シンプルだが、しっかりした音使いはみごと。


 オーストリアのレーベルDOCUMENTから出ていたLP、DLP538。1934年から1937年までの18曲を録音順に収録。ジャケットの裏には、「Complete Recordings」とあるので、これで全てらしい。リロイ・カーが1905年生まれで、1920年代後半から録音活動をし、1935年に亡くなっている。なので、そこから推測すると、ジェイムスはカーよりも10歳ほど若い人で、カー亡き後の後継者だったのかもしれない。


 前述のギタリスト、ウィリー・ビー・ジェイムスは、バッキングを務めることが多かったらしく、やはりDOCUMENTのCD「DOCD-5427」でチャーリー・ウェスト(Charley West)というヴォーカリストのバックでギターを弾いていたらしい。というのも、ジャケット解説には可能性を示唆する「prob.」となっている。

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