文化逍遥。

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わたしのレコード棚―ブルース69、Smoky Babe

2019年05月16日 | わたしのレコード棚
 戦前の田舎のブルースマンが活動していた場として、ストリート・ミュージシャンとして投げ銭をもらう街角や、ジュークジョイントと呼ばれる今でいうライブハウスの他に、主にダンスの為に演奏するナイトクラブやパーティーの集まりなどがあった。「ソングスター」とも呼ばれていた人達で、週末などに副業として演奏し収入の足しにしていたようだ。今のように音楽を再生する機器など無い時代だったので、とにかく演奏出来る人が必要だったわけだ。その中から、すぐれたミュージシャンを探して録音する「フィールド・レコーディング」をした人達もいた。その人達のおかげで、貴重な録音を今でも聴くことが出来るわけで、感謝しなければならない。
 スモーキー・ベイブ(Smoky Babe)もそんなフィールド・レコーディングされた一人で、主にルイジアナ州などのダンス会場などで演奏することが多かったようだ。本名はロバート・ブラウン(Robert Brown)。生まれは1927年ミシシッピー州Itta Bena(イッタ・ベーナ?)、亡くなったのは資料によって異なり1973年か1975年でルイジアナ州のバトンルージュらしい。


 アーホーリー(Arhoolie)レーベルのLP2019。ダンスを支える為のしっかりしたリズムをギター1本で紡ぎだしていたことを今に伝える名盤。ライナーノーツの解説によると、1960年2月にロバート・ピート・ウィリアムスの姉か妹のMable Lee Williamsの家で録音した、とある。当時、スモーキー・ベイブはその近くに住んでいたらしい。録音したのは、ルイジアナ州立大学のハリー・オスター(Harry Oster)博士。この時、スモーキー・ベイブのギターは質屋に入っており、それをオスター博士が受け出して演奏させた、と解説にある。曲によっては、ハーモニカにヘンリー・トーマス(Henry Thomas)およびクレイド・コージー(Clyde Causey)、ヴォーカルにウィリアム・ドットソン(William Dotson)などが加わり、優れたバッキイングを聴かせてくれる。

 写真のギターは12弦だが、弦は6本しか張られていないようだ。貧しさのなかで、つまり、限りある状況の中で演奏活動をしていたブルースマンの姿をも今に伝えているかのような貴重な写真。ダンスの為のリズミックな演奏をしたブルースマンを他に思いつくままに挙げてみると、ガーフィールド・アイカーズ、ジョー・キャリコット、そしてロバート・ピート・ウィリアムス、といったところ。いずれも、ブルースをダンスミュージックとして演奏して小銭を得て、収入の足しにしていたブルースマン達だ。それが、悪い事とは思わない。むしろ、表現の場を広めた功績として捉えたい。

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