文化逍遥。

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2018年ドイツ映画『僕達は希望という名の列車に乗った』

2019年05月29日 | 映画
 5/28(火)千葉劇場にて。監督・脚本ラース・クラウメ。原作は、ディートリッヒ・ガルスカ著『沈黙する教室 1956年東ドイツ―自由のために国境を超えた高校生たちの真実の物語』。リーフレットによると原題は英語で『The Silent Revolution』になっている。直訳で、「静かなる革命」。ただし、映画のエンドロールでは大きくドイツ語での原作名『Das schweigende Klassen zimmer(沈黙する教室)』と出たように見えた。





 原作者ディートリッヒ・ガルスカの実体験を映画化した作品で、時は1956年。この年、ハンガリーでは民衆蜂起事件があり、それを西ドイツの映画館のニュース映画を観て知った高校生テオとクルトは、事件で亡くなった民衆のために高校の教室で黙とうをしようと級友達に提案し・・・。

 この映画を観るまで、わたしは、「ベルリンの壁」は第二次大戦終結後数年してから作られた、と勘違いしていた。実際の壁建設は1961年で、戦後16年程たってからの事だったのだ。それまでは、この作品で描かれているように、厳しい検問がありながらも、墓参や仕事などで一般市民も東西を往来出来たらしい。そこが、この作品の観るべきひとつのポイントになる。

 この映画の原作を翻訳した大川珠季氏のブログによると、「本作は、著者のディートリッヒ・ガルスカ氏が経験した、1956年10月の黙祷、クラスのほぼ全員が西側逃亡に至った経緯、その後のそれぞれの人生を、シュタージ・アーカイヴ、新聞記事、当時のクラスメートや教師へのインタビューを通じて残そうとした労作です。」とある。つまり、映画は原作の云わば前半を描いた作品、ということになる。良い作品だったので、原作を読み高校生たちの後半生を知りたくなった。

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