文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2018年イギリス映画『風をつかまえた少年』

2019年08月13日 | 映画
 このところの暑さで、なかなか映画館に足を運べなかったが、8/12(月)午前、曇っていて少し涼しかったので自転車で千葉劇場にいってきた。
 原題は『The Boy Who Harnessed the Wind』。事実に基づいた作品。原作はウィリアム・カムクワンバで、日本語にも翻訳されていて『風をつかまえた少年』として文芸春秋から刊行されている。監督・脚本そして自ら父親役で出演したのは、キウェテル・イジョフォー。少年ウィリアム役にマックスウェル・シンバ。言語は、基本的にマラウイの公用語である英語だが、民族語が混じり、訛りもあってあまり聞きとれなかった。





 2001年、アメリカでは同時多発テロが起こった年、アフリカ南東部の内陸に位置する国マラウイでは深刻な干ばつに見舞われていた。貧困のために学費を払えず退学になったウィリアムは、それでも電気に関する知識を得ようとなんとか学校の図書館を利用して勉強し、自転車ついているライトの発電機(ダイナモ)を使って風力発電しポンプを動かして水を汲み上げる灌漑設備を作ろうとする・・・。

 ストーリーは単純で、感動的な良い結末に終わる作品だ。が、乾燥した台地や、農民達が僅かのお金のために木を売り払ったために保水性を失った土地が画面いっぱいに広がった時、あるいは食糧の略奪が起こるシーンでは、いずれやってくる温暖化した環境を垣間見る気がして、正直ゾッとした。実際、インドなどでは地下水に塩分が強くなり農業用水として使えず、どんどん深いところから汲み上げている、という。実話を基にしたこの映画も、ハッピーエンドに終わる。しかし、将来的に予想される水質の悪化や地下水位の低下で、同じような方法で灌漑できるとは限らない。あるいは、この映画は「未来への警告」を込めた作品なのではないだろうか。その視点から観れば佳作と云っても良いように感じた。

 さらに、葬儀の場面で、民族の伝統的な衣装を身に付けた踊りと歌が出てくる。それが、暗示するものは広い意味での「死」だったのではないか。そんな気もする。

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