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わたしのレコード棚―ブルース77、Jack Kelly

2019年08月16日 | わたしのレコード棚
 ジャック・ケリー(Jack Kelly)は、音程の安定した力強いヴォーカルと、独特のヴォイシング(音使い)のギターで「サウス・メンフィス・ジャグバンド」を引きいたプレーヤーだ。P-VINEのCD『The Story Of Pre-War Blues』の中山義雄氏の解説によると、ケリーは1905年頃ミシシッピー北部の生まれで、メンフィスの大きなホテル「ピーボディ・ホテル」に出演して稼いでいた、という。実際に聴いた感じでも、ブルースと云うより、エンターテナーの色合いが強く、日本では演芸場に出演するような「ボーイズ」に近い音作りに聞こえる。
 1930年頃のメンバーは、ジャック・ケリーの他に、ヴァイオリンにウィル・バッツ(Will Battts)、ギターにダン・セイン(Dan Sane)、ジャグには“ドクター”D・Mヒッグス("Doctor" D M Higgs)など。



 おそらく、彼のステージにふれた人達は、ニコニコしながらゆっくりとウィスキーなどを傾けていたのではないだろうか。そんな想像をさせるのが、上のCDだ。オーストリーのRSTというレーベルで、編集はジョニー・パース(Johnny Parth)。CDジャケットの写真は、ヴァイオリンをかまえているのでウィル・バッツだろうか。曲のメロディーは、「Brownsville Blues」タイプのものが多いが、言葉も豊富で多様性も持っている。ただ、ダン・セインのギターの音が聞き取りにくいのが、少し残念ではある。

 ちなみに、ジャグ(jug)というのは、大きめのビンや缶などを使った楽器で、ラッパを吹く様な感じで口元を少し離してブッ・ブッっと低音に近いところを鳴らす。本来は、楽器を買えない貧しさの中から生まれた工夫だったと考えられるが、しだいにメンフィス辺りでヴォードビルの要素を持つようになっていったと思われる。うまい人が演奏すると、きちんとした音階が出せる。わたしも、以前ウィスキーの大びんを使って録音してみたことがあるが、基音(トニック・ノート)をねらって音を出すのが精いっぱいだった。


 上の写真は、メンフィス・ジャグ・バンドのジャグを演奏している人(ジャブ・ジョーンズのはず)を拡大してみたもの。写真下側に写っているのがジャグで、上の人はカズーのようだ。

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