文化逍遥。

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酒見賢一著『周公旦』

2019年09月20日 | 本と雑誌
 最近、図書館から借りて読んだ本から1冊。
 中国の古代史や、孔子の思想に興味のある人なら、題名を見ただけで内容のおおよその見当はつくだろう。わたしは、中国古代を舞台にした宮城谷昌光の文学が好きなので、商周革命時の英雄とも云える「周公旦」について多少の知識があった程度。作者の酒見 賢一(さけみ けんいち)氏については、知らなかったが、大きい活字のコーナーで見つけ、読んでみたくなって借りてきた。初出は、1999年文芸春秋社。


 
 少し調べてみたところ、酒見 賢一氏は1963年生まれで、福岡県久留米市出身。1988年、愛知大学文学部哲学科東洋哲学専攻卒業、という。さすがに、東洋哲学を学んだだけあって、古代中国史や漢詩の造詣も深い、と感じた。基本的には小説なのだが、文体も独自で、「史記」や「書経」などに対して独自の読み込みをしてエッセイ風に解説するなどの工夫がなされている。長江流域の南方民族の描写などには違和感もあったが、宮城谷文学とは違う視点から古代の中国にアプローチしていて、読んでいて新鮮さも感じた。他の著作も読んでみたくなった。

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