文化逍遥。

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2019年日本映画『山中静夫氏の尊厳死』

2020年02月21日 | 映画
 2/20(木)、千葉劇場にて。監督は、村橋明郎。原作は、医師であり、小説『阿弥陀堂だより』で知られる作家でもある南木佳士(なぎ けいし)。





 癌の専門医などが自らも癌に罹ると、ほぼ例外なく口にすることがある。それは「患者の不安や苦しみなどをわかっているつもりだったが、なにもわかっていなかった」ということだ。人間の想像力の限界、とも言えるが、医師が患者の痛みや苦しみを全て自らに背負い込めば、一人の人間として担える限界を越えてしまうのが必然である、とも言える。どこかで、折り合いをつけなければ、医師を含めケアに当たる人たちの心も体も壊れてしまうだろう。この映画の中で、末期癌の患者を看取る医師も、折り合いをつけられず重い鬱病になってしまう設定になっている。
 わたしも年を重ね、医療関係者と接することも多くなってきたが、実感として「無責任な医者だ」と感じることも正直多い。仕事関係で同年代あるいは、自分より年下の人が亡くなったりしたことも少なくないし、かつての同級生でもすでに鬼籍に入った者もいる。そう遠くない日に、自らの死と直面した時、どんな医師や看護師に巡り合うのだろう、と考えることもある。それは、実は若い人でも同じで、いつ死に直面するかは誰にもわからない。そんなことを想いながら、この作品を観ていた。良い作品、とは感じたが、医師が鬱病から回復する描写が安易な気がして残念でもあった。

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