King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

『街と不確かな壁』読了

2023年05月15日 11時43分20秒 | 読書
昨日は母の日、スーパーによったら寿司のケーキやら刺身にカーネーションやらやたら母の日食品とカーネーションだらけでした。夜は土曜の筋肉痛を引きずりながらそれでも雨のなか走り出したらかくっと膝が抜けるようになり普段ならおっとと足がまたでるのですが昨日はかくっと膝から崩れ落ちる転倒。両ひざを打って走る気をくじかれました。またどうにか走り出してもまたかくっと抜けてこれはもう危険とあとは歩きました。ストレッチやら屈伸やら準備運動不足ですね。
さて、朝6年ぶりに新刊発売ということでNHKのニュースをみて買った『街とその不確かな壁』を読み終えました。読み終えて感じていた違和感の意味を知りなるほどと思い謎が解けました。それは初期短編集のテーマを扱かった小説でまあ村上小説らしい始まりながら、それなのにまったくの無音でおやっと言う感じもあったのです。普段ならテーマのようにバックに流れる曲の描写が入るのに今回はずっと無音です。ところが第二部の名もないコーヒーショップのところで俄然音楽描写が入りだします。それもありそうなジャズでありながら結構詳しく演奏者から曲目まででてきます。俄然らしくなったと感じるとコーヒーショップの女主人とどうなるのかほったらかしにされたまま最初の夢を読む街とイエーローサブマリンの少年と合体してまた元に戻ると言う力ずくで無理矢理終わらしたと言う感じで終わりました。そしていつもはないあとがきによってそのわけが明かされます。私はニュースで6年ぶり新刊と聞き、買った人のインタビューにコロナで得た視点も加味されてると言うのを聞いて楽しみに読み始めましたが実はこれはリサイクルだったのです。だから最初は無音で始まり途中から得意のバックミュージックの描写とらしさが現れた意味も解りました。そうだよなジャズバーを経営してたんだよねなんて言うのも当然のように思われて新作と思って読んだのはちょっと肩透かしでしたがそれなりに楽しんだのは変わりありません。相変わらず異世界とか境界とか影が人格をもって動き出したりと村上ワールド炸裂なんですが、いつかの小説のように猫街に迷い込んだ話しを思い出せたり、影が動き出すなんて0655のアニメしか今では扱わないなんとも古くさい手法のオンパレードなのも理解できます。第一部でどうやって元の世界に戻ったのか詳しい説明もなく本当の図書館の館長になってしまうというのもなんだかおもしろくそこで出会う人たちも騎士団長殺しででてきたような不思議な存在でもうこれなどは定番の仕掛けですね。ただ、異世界と現実との往来のしかたとかその道にたどりかたとかの説明がお座なりで全体が強引な押し込めの中にあるようなすっきりしない気持ち悪さも残ります。それに元館長と司書の名前はありそうな名前があるのに他の人は名前がなく、イエローサブマリンの少年に至ってはM※※という当て字だか伏せ字だかという始末です。まあ、これは全体のバランスでそんなことになったのは理解できます。最初読むのが恥ずかしいような10代の恋物語から始まりそれが手の届かない世界に彼女が旅立ってしまいとよいよ村上ワールドが展開なのですが、なんのためにどうしては結局明かされず、新キャラの登場で終わりにされてしまいます。第二部の辺りで感じたのは『ナインストーリーズ』の扉に出てくる禅の考案。隻手の声を聞くのような『フラニーとズーイ』のテーマのようなものをずっと見せられているようなそんな感じもしていました。しかし、騎士団長殺しのように子細に二重メタファーを追うわけでもなく、元の影の元に戻るのもなんだかあなたもきっと戻る影の世界があるのですよと言われているようで、スカートを穿いた元館長やイエローサブマリンの少年はいなくてもきっと高い壁の街から元に戻る世界はあると思えてきます。どうせなら、現実に大国の侵略で第三次世界大戦と核戦争の前夜のただ中にある現代に平和のための戦争、自由のための隷属といった騎士団長殺しのテーマをさらに高めた作品を読んでみたかったと言う気もします。なんだリサイクルかよと。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 母の日と雨の日曜日 | トップ | 『nope』に思う »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事