第100回全国高校野球選手権記念大会の決勝から、既に3日が過ぎました。「KKコンビ時代のPL学園対取手二高、マー君とハンカチ王子の駒大苫小牧対早実戦くらいの盛り上がりになるでしょうね。」と書き、実際盛り上がりはその通りでしたが、試合の方はさすがに金足農の吉田投手も力尽き、王者・大阪桐蔭が圧勝しました。
しかし、試合後の盛り上がりは、準優勝に終わった金足農フィーバーがすごかったですね。空港での出迎えや、学校での報告会などが逐一報道され、梨を食べたら退学などの変わった校則が話題になったりと、大阪桐蔭をはるかに上回る露出ぶりでした。そして、マスコミ慣れしていない吉田投手が好きな球団を聞かれ、「巨人」と答え、天真爛漫に「行きたいです」と言ったことが波紋を広げるなど、話題に事欠きません。大阪桐蔭が達成したことも、そこに至るまでのプロセスも、当然のことながらものすごいことでしたが、判官びいきの日本人らしく、しばらく金足農フィーバーが続きそうです。
それはともかく、私も何度か書いてきた「高校生投手の酷使防止について」もだいぶ議論が盛り上がっています。良いか悪いかは別にして、これも今大会No.1投手と言われた金足農の吉田輝星投手の熱投があったからだと思います。吉田投手が今大会で肩肘を痛めることなく、今後もその才能を発揮していくことが出来るのであれば、彼の今後の選手たちへの功績は計り知れないですね。
やはり大勢は、何らかの規制は必要との意見です。その中で、元巨人で現在はジャパンのU12の監督を務める仁志さんがニュースで次のように言っていました。
「何らかの規制は必要だと思いますが、球数制限や回数制限をすると、投手が複数必要になり、公立高校が甲子園に出ることが難しくなりますし、作戦としてカットをして球数を投げさせるケースも出てくるでしょうから、すぐに導入ということではなく、ある程度時間をかけての検討が必要でしょう」
球数制限だと、確かに引きずり下ろしたい投手を下げるために、カット戦法などあり得るでしょうね。数年前の花巻東の選手のカットをやられたら、あっという間の降板となってしまいますね。これは、ルールで規定するというより、マナー、モラルの問題になってくるでしょうね。ルールに違反しなければ、何でもやってもいいという訳ではないという、競技の暗黙のルールが必要なような気がします。
「公立高校が出られなくなる」ということは、心情的には共感する部分もありながら、ここを気にしていては逆に何もできなくなるような気もしますし、その中でも出てくる公立高校もあってほしいとも思ってしまいます。
いろいろな制限を設け、強豪私立の方がより甲子園に出る確率が高まれば、有力選手はより強豪私立を目指すようになるかもしれませんが、そうすれば、才能ある投手が連投する機会が少なくなり、それは理に適っていると思います。一方、公立高校だから絶対に有力選手を獲得できないかと言えば、必ずしも「絶対」ではないのではないかと思います。東京や、大阪、神奈川などの首都圏では難しいでしょうが、今回、三重県の白山高校がリアルルーキーズと言われたり、明石商、高知商、高岡商などの公立も甲子園を湧かせました。確率は低くても、こうしたチームで甲子園を目指すのも、夢のある話ですし、その難しい夢を追う監督や選手だっていないとは限りません。
それを考えれば、公立高校の出場への道が狭くなるというのは、大きな阻害要因にはならないと思います。いずれにせよ、今回の吉田輝星投手の体を張った問題提起(と本人は思っていないでしょうが)が、しっかりと実を結ぶように、議論を深めてほしいものです。