山縣亮太が9秒台に王手をかけたのは、もう4年も前のことになります(「山縣亮太、日本歴代2位 10秒00!」)。桐生選手と日本の短距離界をけん引し、どちらが先に9秒台を出すかと言われていましたが、桐生選手に先を越されてしまいました。しかし、山縣選手もすぐに10秒ジャストをたたき出し、9秒台は時間の問題と思われていました。山縣選手自身もそう思っていたと思います。
しかし、現実は残酷なもので、山縣選手がケガなどに悩まされる中、2019年にはサニブラウン アブデルハキーム選手が9秒97と日本記録を更新し、さらに小池祐貴選手も9秒98を出すなど、ライバルたちがどんどん先を行ってしまいました。山縣選手も心中穏やかでなかったのは想像に難くありません。
しかし、遂にその時がやってきました。6月6日の布施スプリントで、9秒95と日本新記録の9秒台を叩き出しました!追い風2.1m以上だと参考記録となってしまいますが、ギリギリの追い風2mでの記録でした。これまで運がないと言われてきた山縣選手の努力へのご褒美でしょうか。
ライバルの桐生選手が天才肌で躍動感のある走りをするのに対し、山縣選手は学究肌で、理詰めで自分の走りを極めるタイプです。そのためか、走りも機械のような正確な動きです。今回のレースでもそれが非常によく出ていました。隣のレーンを走った多田修平選手も、今回自己ベストの10秒01を出しましたが、多田選手の特徴は頭を下げてのロケットスタートです。今回もそのスタートがびしっと決まり、序盤で先頭に立ちました。しかし、山縣選手の走りはまったくぶれることなく、正確にステップを刻み、多田選手をかわしてトップでゴールしました。他にも小池選手などトップ選手が集まり、皆素晴らしい走りをしているはずですが、山縣選手の走りと比べると、体がわずかにぶれて見えました。それくらい、山縣選手のぶれのない、体幹のしっかりした走りは、山縣選手のたゆみない努力と研究が作り出したものだと思います。
オリンピック参加標準記録である10秒05を突破し、日本新を出してでも、まだオリンピック参加資格を得たわけではありません。桐生、サニブラウン、小池、多田、ケンブリッジとライバルが集結する、日本選手権で3位以内に入らなければなりません。しかし、このタイミングで呪縛のようになっていた9秒台をクリアし気持ちの面で解放され、あのぶれのない完璧な走りをすれば、3位以内は大丈夫なような気がします。オリンピック自体はどうなるか分かりませんが、日本選手権での走りを期待したいですね!
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