基本的に平和主義者?なので、自分自身が殴り合いをすることはないのですが、ボクシングを見るのは好きです。何か人間の中に狩りをしていた頃の本能などがあるのでしょうか。
今日は、IBFミニマム級の高山勝成の初防衛戦と、最速3階級制覇をかけた井岡一翔のWBAフライ級王座挑戦のW世界戦でした。
タイプがまったく違う二人の面白い試合でした。
高山選手の試合を見るのは初めてでした。世界チャンピオンになったのは10年くらい前らしいですが、その経歴はボクシングエリートというよりは、たたき上げの苦労人といった感じです。今日の試合も、身長もリーチも長く、10歳くらい若い有望な相手選手に対し、泥臭いボクシングを展開しました。
ウエイトの軽いミニマム級自体ノックアウトが少ないですが、高山選手も手数は多いものの、一発で倒すほどの力はないようです。しかし、見るものを感動させるのは、そのスタミナとスピードです。歳は挑戦者よりはるかに上なのに、「子どものケンカのような」パンチの連打でした。リーチが長く、狙っているカウンターは強力そうだった挑戦者も、高山の圧力に屈し、なかなか見せ場を作れませんでした。そうこうするうち、挑戦者のバッティングで高山選手が両目上を切って流血し試合途中でドクターストップとなり、9回判定で、3-0で高山選手が防衛に成功しました。ノックアウトではなかったものの、魅せた試合でした。
そして、次が(実質的な)メインイベントの井岡一翔の3階級挑戦でした。1年前に失敗し、初黒星を喫したリベンジとなる試合です(「勝ったものが強いのだろうけど…」)。井岡選手の相手は、8連続防衛中の力のあるチャンピンだそうです。KO率も高く、VTRを見ても、どんどん圧力をかけ、強力なパンチを打ち込むファイタータイプです。対する井岡選手は、ボクシング界の東大生とも言えるような、緻密なボクシングを展開します。唯一の敗北となった前回の世界戦は、それが仇になったように思いますが、今日はどうなることか。
今日の相手は、8連続防衛中の絶対王者らしく、前回井岡が判定で敗れた相手のような姑息なボクシングはしませんでした。そうなると、井岡の優等生ぶりがいかんなく発揮されます。強打のチャンピオンのラッシュを、見事なディフェンスでかわしつつ、ジャブやボディーを的確に打って、ポイントを稼いでいきます。見た目の派手さはありませんが、本当に優秀な学生が難しい方程式を解くように理詰めのボクシングを展開していった印象です。有効打は少ないものの動きが派手に見えるチャンピオンに対し、ともすれば消極的に見えてしまう井岡選手ですが、今日はさすがにそれはないだろうと思わせる展開でした。そして、顔は相変わらずとてもキレイでしたね。
表面的な見た目に惑わされたジャッジがいたようで、一人がドローでしたが、二人のジャッジは井岡に軍配をあげ、井岡が見事3階級制覇を成し遂げました。ボクシングの派手な打ち合いはありませんでしたが、今日の試合は見応えがあったと思います。強いもの同士の張りつめるような緊張感がありました。
今日の2試合を見に行ったお客さんは損をしなかったと思います。ボクシングの試合で、何がつまらないかと言えば、誰とはあえて言いませんが、今日の2試合のようなファインティングスピリットもなければ、見事な技術もなく、弱い相手をマッチングし、貝のように守りを固めて、タイトルを守ることだけに終始する試合ですね。野蛮かもしれませんが、ボクシングの原点が何かと言えば、二人の人間が、極限の力を振り絞って殴り合いをするということです。これをなくしては、形式的にベルトを持っていても、意味はないと思いますね。
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