東急大井町線上野毛駅そばの世田谷上野毛の閑静な住宅街の一角に東急電鉄の元会長・五島慶太翁が半生をかけて蒐集した古写経、貴重な美術品など数々の所蔵品を公開する目的で昭和35年(1960)に開館(設立)された「五島美術館」はある。王朝貴族の建築様式である寝殿造の意匠を随所に取り入れた本館建物も素晴らしいが今日は慶太翁が日課として散策したという「庭園」にお邪魔した。敷地は庭園を含めると約6000坪。多摩川が武蔵野台地を浸食してできた国分寺崖線の傾斜部に位置することから庭園内は起伏に富んでいる。武蔵野の雑木林が多摩川に向って高低差30mあるという深く傾斜する庭園には「大日如来」や「六地蔵」、「石仏」、「石燈籠」が巧みに配置されている。東屋のそばに「上野毛のコブシ」や各所に「ツツジ」、「枝垂桜」などが多彩な花を咲せ四季を彩る。散策路には「春山荘門」、蓬菜池傍に「赤門」、庭園中央には明治時代に建てられた茶室「古経楼」、慶太翁が古材を使用して作らせたという立礼席「冨士見亭」がある。紅葉がまだ残る庭園は美しく見応えがあった。(1612)
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