伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

もう一つの鎖国 日本は世界で孤立する

2006-09-28 22:04:39 | 人文・社会科学系
 オランダ生まれ・日本在住のジャーナリストによる日本政府・官僚の外交姿勢についての分析・批判の本。
 書かれている内容は概ね以下の通り。
 日本は、戦後一貫して、アメリカの保護の下で経済活動に専念し、国際政治・外交の場では何もしないという姿勢をとってきた。このことを著者は実質的な鎖国と評価しています。
 しかし、アメリカの側には既に日本を保護し続ける意志はない。戦後アメリカは、平和・秩序維持に努力してきたために国際的な権威を持っていたが、近年は国際秩序の破壊者となり、軍事力はあっても国際政治をリードするパワーは失われた。それでもアメリカの行動を支持し続ける日本の姿勢は国際的に理解されない。
 アメリカは常に外敵を求めており、ソ連崩壊後「ならず者国家」「国際テロネットワーク」を外敵と位置づけたが役不足で、今は中国をターゲットにしようとしている。
 中国の支配層はかなり変貌し開放的になって経済的成功を求めているが、中心的世代は文革などの記憶から秩序の崩壊を極度に恐れており、人民の蜂起の芽を感じると弾圧に走るという事情があり、中国に欧米のような意味での民主主義を求めても実現できない。しかし中国が対外的な(台湾は国内と考えられている)武力行使に至ることは想定しがたい。現在ではアメリカ経済(ドル)を支えているのは日本と中国(の大量のドル保有)であり、ブッシュ政権の中国批判は的はずれ。
 日本は、中国への不毛な批判・中国政府への侮辱をやめて、中国政府の立場を理解しつつ、東アジアの安定のために役割を果たすべき・・・
 こういうことを少しまわりくどく、ちょっと論証不足な感じも残しつつ書いてあります。

 前半のもうアメリカの保護は期待できないし、アメリカに追随していると国際社会で尊敬されないという主張はよく理解できますが、後半の中国との友好にまず取り組めという主張と中国への評価はちょっと飛躍がある気がします。今時の日本にどっぷり浸かっている身には、著者の主張はずいぶんと中国寄りに感じられます。でも、アジアの他の諸国の中国の評価と日本の中国に対する評価の落差、特に「多くの面で日本よりも民主的な」韓国が中国には好意的という指摘は、ちょっとハッとします。


カレル・ヴァン・ウォルフレン 訳:井上実
角川書店 2006年7月31日発行
コメント
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