鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

(また臨時版4)~マルクス社会観の教育効果~

2015年04月10日 | 米国への無知を正す





理想世界のビジョン、社会観は、人間の心に利己心を超えた献身意識を作り出す。
またその実現のために働くことは、当人の内にその新しい精神エネルギーの発露口を創成する。

こうして、当人の精神力は強くなる。
マルクス社会主義思想はその意味での教育効果を大いに発揮する特性をも持つ。

この思想は、日本では戦前にも一定の知識人、政治家、革命家に信奉された。

他方、戦前の日本には、大東亜共栄圏(東アジアを日本を盟主とする諸民族の共栄圏にするという思想)、八紘一宇(世界は一つの家にするという思想)も叫ばれた。

だが、敗戦によってそんなものは「他国侵略のための口実」だったとなって、あえなく消滅した。




<戦後マルクス思想が独り勝ちに>

そうしたなかで、マルクスの社会主義思想だけは残り、その扇情力が戦中派青年に大きく普及した。
それはまた戦後育ってくる新しい青年たちの心もとらえた。

結果的にそれは、たいした根拠もない反米思想を造り、日米安全保障条約改定の大運動を展開させた。

政治暴力団(右翼)をも用いた岸信介の奮闘で安保の継続がなると、学生運動は赤軍派、中核派など過激社会主義運動に先鋭化した。

学生は大学自治会を拠点として活動し、一般学生にも心情的同調者は少なくなかった。





<80年代に下火に>

だが1980年代に入ると、マルクス思想の勢いは世界で徐々に低下を開始した。
1944年に米国で発刊されたF.A.ハイエクの『隷従への道』の影響が広がり始めたことによる。
この本は、社会主義国家は運転される過程で全体主義的恐怖国家になり、人間の自由は奪われることを明晰に論証していた。

それに感銘を受けた有志がスイスの田舎町モンペルランで開始した自由経済学会(モンペルラン・ソサエティ)の運動の影響が拡大したのだ。

日本人も~いつものことながら~漠然と世界の空気に従っていった。
この流れの中で、大学当局が過激派学生への反撃を開始した。
運動の本拠だった学生自治会から彼らを追放した。

こうして大学での社会主義運動は急激になりを潜めた。
だが、学校当局と文科省は、その勢いで学生自治会そのものを破壊し消滅させたままにしてしまった。
いまもそのままである。




<学生の小市民化>

以後の若者文化の変わり様を、筆者は、大学の場でリアルに観察している。

若者の中に一転、世界観、社会観のない小市民的な文化が台頭した。

たとえば80年代になって、従来の反戦歌フォークソングは影を潜め、代わって、荒井由実や小椋佳の繊細なチマチマソングが流行になった。

マスコミは依然としてそれにフォークソングの名称を与え、ニューフォークと称したが、それは文化としては別物だった。

学生の政治意識は突然見えなくなり、代わりに小市民そのものの文化が現れた。

+++

(筆者はこのとき教育の現場にいて、
この世代が日本社会の中堅を担うようになったら日本はどうなるだろう、と憂えた。
勤務校で自治会を消滅させてはならないと主張したが、鉄の壁を拳でたたくようなものだった。
大学教授という人々のほとんどは、「教育のセンス」を欠いているのだ。
文科省の官僚も同じである)

そして実際にそれは福島原発事故を契機に明るみに出た。
東電の中堅社員の行動に筆者の懸念は実証されてしまっていた。





<問題はマルクス思想しか無いこと>

この問題の根本は、日本に知識層をも納得させる論理構造を持った社会観が、マルクス思想以外に存在しないことにある。

だからこれが破壊されたら、若者が、いっぺんに小市民になってしまうのだ。
この状況を打開せねばならない。

筆者が、聖書思想を探求する一つの理由がそこにある。
聖書の自由吟味活動が普及すれば、この日本的問題も打開されると予感するからだ。

みちくさ(臨時版)はこれくらいにして、次回から、本論に戻ろう。





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(また臨時版3)~運転感覚なしの理想郷思想~

2015年04月08日 | 米国への無知を正す





理想社会のビジョンをかかげて人々の社会感覚に与えた影響力で見ると、マルクスの社会思想のインパクトは群を抜いている。

この思想の構造はすでに「政治見識のための政治学」のなかで示したが、ここでその要点を再び示そうと思う。




<マルクス経済思想の骨子>

マルクスの大著『資本論』は、資本主義経済の特性を鋭く分析し、その前途は真っ暗闇だと展望した。
彼はこのシステムは必ず総需要不足に陥って行き詰まる、とした。

その論理は次のようになっていた。


~資本主義は、人民を自由にしておき、市場メカニズムでもって経済を運営しようという行き方だ。

だが、そこでは資本家が、生産手段を私有し、雇用する労働者に、しかるべき賃金を支払わない。
つまり搾取している。

資本家はその搾取分を独り占めし、その一部を自分たちの贅沢な生活に使い、残った分を、生産機械に再投資する。

すると、工場は機械化され生産効率が上がるので、その分、労働者がいらなくなる。
資本家は要らなくなった労働者を解雇するので彼らは失業者となる。

こういうことが社会のあちこちで起きるので、国全体の国家の総所得は減少する。

するとその分、国内の商品総需要需要が減り、ものが売れなくなる。
そしてその分また生産出来なくなるので、労働者を解雇する。

資本主義方式では、国家経済はこういう総需要縮小過程を必然的にたどる。
国全体としては有り余る生産手段を持ちながら、それを発揮できない状態に陥っていくのだ~と。


+++

彼はこの矛盾した状況を生み出す根底原因は、私有財産制度にあると認識した。
これがあるから、資本家は生産手段を占有でき、労働者の搾取が出来るのだ。

だから私有財産制をなくし、生産手段を公有化すれば、経済の桎梏(しっこく)はとりのぞかれるはずだ。
生産力は全開し、人類は、豊かな理想郷に直進できる。
理想社会は必然的に実現される。

~これがマルクスの社会経済理論だった。





<無産階級による暴力革命>

マルクスはさらに考える。

~しかし、資本家は自分たちの財産と豊かな生活を手放さないだろう。
だから、労働者が団結して力でもって取り上げ、公有化するしかない。

資本主義が成熟すればあちこちで暴力革命が起き、人類は理想郷に至るだろう~と。





<驚異的な扇動力>

この思想は驚異的な扇情力を発揮した。

まず人の心に、搾取という不平等な行為をなくそう、という正義感を燃え立たせた。

第二に、社会の全員が愛でもって結びあえる理想郷への夢を、人々の心に与えた。

そして、この理論は、骨子がとてもわかりやすかった。
説明は、大衆にも受容され、彼らの運動エネルギーも結集させた。

このエネルギーが戦後、世界の半分近くの国々を社会主義国家にした。
しかもこれらの勢力は、全世界を共産化しようという強い意図をも保持していた。




<運転者感覚なしの経済理論>

だが、この理論は革命後の社会を運転していく運営者の感覚を全く欠いていた。

すべての企業を国有化をすれば実際には、国家や地方の行政部門に何千という企業をまとめることになる。

それらを関係づけて国家規模での生産活動をさせるには、各企業に生産ノルマを与え、それを「命令 ⇒ 服従 ⇒ 懲罰」の原理で運営するしかない。

必然的にそれは、一党独裁による恐怖統治体制となる。

人民は、理想郷とは裏腹に、恐怖の中で働き生きることになった。





<マスコミ担当者の目も塞ぐ>

この事実に戦後も、世界のほとんどのマスコミ担当者は目が開かなかった。
彼らもまた、その強大な扇情力に圧倒されていたのだ。

驚くべきことであった。




<日本の知識人と学生への影響>

日本国家は戦後、米国に防御されることによって共産化はしなかった。
だが、いわゆる知識人や学生の社会観は、マルクス思想で占められた。
 
マルクス思想は、帝国主義論にも展開した。

~国内の総需要が不足すると、資本家は海外に売り先を求めるようになる。
彼らは国家権力を使ってそのための植民地を造り、それを自らの帝国圏とする。
 
こうして資本主義は、帝国主義に展開する。
米国はいますでに帝国主義国家の頭目だ。

~彼らの心は、この考えでいっぱいになった。

すると日米安全保障条約は、そういう米国の勢力維持手段とみえてくる。
これと戦って、共産社会を造ることが、最高に価値あること、となる。

かくして、言論家も学生も安保反対運動に突入した。
この条約が改正されると、反対運動の流れの中から、全共闘運動が出現した。




<ベルリンの壁崩壊以後>

1990年代にベルリンの壁が崩壊すると、日本社会でもマルクス思想は下火になった。
だが、上記に述べたマルクス思想における致命的な欠陥、運転当事者感覚の欠如、には知識人もジャーナリズムも依然として気付いていない。

ただなんとなく、マルクスの考えはもう古くなった、との感慨を漠然ともっているだけである。
恐怖政治体制の恐ろしさには、気付いていない。

それ故に、自由市場経済に問題が生じる毎に、マルクス思想は、理想郷の夢を伴って浮上する。

これが日本の現状である。

この問題は、もう少し論じよう。






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