市場システムを否定し、計画生産をすれば、
人民は恐怖政治のもとで地獄の生活をせねばならなくなります。
前回それを理論的に明かしましたが、人々はその認識に至りませんでした。
マルクスの提示した夢の理想郷(の幻影)に目を奪われ、心を奪われたのです。
「共産社会になれば、人々は能力に応じて働き、必要に応じて取る生活が出来るようになる」
~マルクスはこうたたき込みました。
これは聖書『使徒行伝』にある聖句のパクりですね。
そこにはキリスト教の初代教会の状況を記録した次のような聖句があります~。
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「信徒たちは、みないっしょにいて、いっさいのものを共有にしていた。
そして、資産や持ち物を売っては、それぞれの必要に応じて、
みなに分配していた」(2章44-5節)
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人々はあの素晴らしい資本主義社会の分析をする大天才マルクスによるのだから、とその幻影を信じました。
その結果、20世紀半ばには、世界の半分が共産主義国家になりました。
驚くべきマルクスの扇情力です。
日本でも、共産主義国家実現のためにいのちを投げ出した若者が沢山でました。
彼らは、共産党という政党を、戦前に結成しました。
戦時中は特高警察によって逮捕投獄されましたが、敗戦になるとGHQによって解放され、
政治運動を続けた。
それがいまの日本共産党につながっています。
<ソビエト連邦の崩壊>
だが、ロシア革命が、70年が過ぎる1980年代になると、ソビエト国家の経済の生産機能が急低下を始めました。
そこにゴルバチョフが出現して、「みんな反省しよう」とグラスノスチ(情報公開)を認めさせると、
社会主義国家ソ連は自壊していきました。
情報公開の原則のもとでは、従来の共産党独裁支配は成り立たなくなるのです。
ソ連の変革につれて、従来その統制下で存続してきた東欧の社会主義国家も軒並み崩壊しました。
1990年代初頭に東西ドイツを分けていた「ベルリンの壁」が崩壊しました。
すると、世界の半分を占めていた共産主義国家は、中国と北朝鮮を残すのみとなりました。
(キューバは最初から原理的な共産主義国家ではないのでこの中に入らない)
その後中国も、米国に「市場経済化」の指導を受け、土地を除く財産の私有化を実施し、
残るは北朝鮮のみとなりました。
<政治家は常時勉強していないと>
政治に携わる者にとって大切なことは、このような社会実験の結果を知ったら、マルクスのユートピアは幻影であったことを理論的に認識することです。
必要なのは、プリンシプルの認識なのだ。
いまや共産制度では、生産における連携活動が出来なくなっていくことを示す経験事実がある。
この事実を、明確に認識し、その理論的根拠を謙虚に勉強することです。
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ところが日本の政治家は、そういう謙虚な勉強をしないのです。
自民・公明も、民進も維新も立憲民主も、基礎から理論を勉強しない。
ただ、時の社会勢力の流れだけをみて、「なんか、社会主義の国は衰退したなあ」と思うだけ。
そして優勢な流れに乗っかろうとするだけ。
マルクスのユートピアは事実に反していることを、明晰に認識すべきです。
認識して、目標とする国家ビジョンをあらためて作り直すことです。
<「欧州で変わったから・・・」ではない!>
日本共産党の政治家も党員もそうですよ。
マルクスのユートピアは幻影であったことを、理論的に自覚していない。
みんな漠然としたもやもやのなかで、ただ、やってるだけ。
欧州諸国で名前が変えられたから、日本でも変えたらどうかと、ついつい思うだけ。
変えるべき理由を論理的に理解していない。
だから、内部でぐずぐずとやってるだけとなっています。
<前原の試み>
ほとんどの政治家がそうした「もやもや」のなかで、共産社会をゴールとしない者だけの政党、新しい保守政党を造ろうと試みたのが、今回衆議院選挙における前原でした。
彼は小池百合子の人気を活かして、保守大政党を造ろうとした。
そして、自民・公明党に対抗するもう一つの保守政党を造り、
日本に二大政党を実現し、
国民に常に政権選択の道を与えようとしました。
<百合子さんの勉強不足>
ところが小池百合子さんはそれを行うには、知識不足、勉強不足でした。
そのあたりの知識は幼稚であり、ブレーン不足なのに、百合子は人気にうぬぼれてしまった。
希望の党を作った彼女は、「選挙が終わらないうちに(ああ~!)」民進党からの
参加希望者から左翼、リベラルの人などを排除することもあり~と言い始めた!
なんと幼稚で愚かなことだったか・・・。
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しかし、その下地には、自民・公明も、民進も維新も立憲民主も、共産党でさえもが
マルクスのユートピアが幻影であることを明確に理解するに至っていない~これがある。
その結果、思想的にはほとんどがまだマルクス的・左翼「的」なユートピアのほとぼりをもっている。
議員の大半がそういう漠然とした心理状態にあるのです。
「百合子排除」に引っかからない議員も、マルクスの幻影の熱気を心に残存させている。
これが日本の政治家の現状。
要するに、みんな、勉強不足、知識不足、なままでいるのです。
だれか、この拙文を日本の全政治家、とりわけ野党の政治家に読ませてあげてくれないか。
(完)