ここで鹿嶋が当面理解している聖書の歴史展開の思想を示してみましょう。
(解読の詳細は、鹿嶋『誰もが聖書を読むために』新潮選書、を参照してください)
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1,まず創造神だけの無限界(無限の過去より存在する、無限の広がりを持った空間世界)がある。
2、創造神、天国(創造神が王として統治する王国)という被造空間をつくる。
3,天国が聖霊(創造神の霊)で満たされる。
4,天国の一角に「神の名」が置かれる。
5,天使を造ってそれを礼拝させる。
6,天使の一部が悪魔・悪霊に変容する。
7,創造神の無限界に霊イエスが出現する。
8,イエス、統治の全権を持って天国に入り、暗闇(宇宙)を創造し、天使に命じて悪霊達をそこに落としこむ。
9,イエス、暗闇(宇宙)を膨張させその中に天地を創造する。
10,ついでアダム、イブを造り、エデンの園に住まわせる。
11、アダム、イブ、創造神と協和する意識を維持し幸福そのものの生活をする。
12,アダム、イブ、「あなたも神のように賢くなれる」とサタンに誘惑される。
13、アダ、イブ、創造神と協和する意識失い、エデンを追われ「呪い」の下の生活にはいる。その子孫が、今の人類である。
14,旧約時代(救い主の到来を待つ時代)が続く。
15,新約時代(イエス出現以降の時代)が来る。
イエス、「人の子」となって世(宇宙)にきて、人間の罪の代償として十字架にかかって死ぬ。
創造主、三日後にイエスを復活させる。
イエス、福音(イエスの十字架死が人の罪の代償だと信じると救われるという知らせ)を
地の果てまで宣べ伝えよとの命令を弟子に下し、天にのぼる。
16,弟子達が福音を宣べ伝え、でキリスト教会が生成・発展する。
17,今の時代ーーー世界に福音が述べ伝えられている時代。
18,将来ーーある時、地上に七年間の大艱難が発生し空にイエスが再臨する。
19,イエス、天使に命じてサタンを「底知れぬ所」に閉じこめ、
地上に降りてきてそこを楽園とし、千年間統治する(千年王国)。
20,イエス、サタンを解放し宇宙を焼却してしまう。
21,イエス、これまでのすべての人の霊を裁き、永遠の天国行きと、火の池行きとに仕訳する(最後の審判)。
22,イエス、すべての仕事を終え、創造神の無限界に帰る。
聖書解読は人によって差が出るものですが、細部はともかく流れの大枠はこうでしょう。
聖書の世界観・歴史観は無限大の空間と時間を踏まえた上で述べられています。
だからあるときそれ以上に視野が広まって変化するということがない。
極めて安定的なものです。
安定的な歴史観は知っているだけでも、これを絶対と信じていなくても、
人の知性に新事態をそのなかに収容することを自然にさせるのです。
だから普段においても安定した心で人をいさせるのです。
人は生きていく過程で次々に未経験なことに直面します。
なかにはどう受け止めたらいいかわからなくなるような事件もある。
原発に関わる昨今の出来事はまさにその例でしょう。
福島原発事故で原発は安全どころか極めて不安定なものだとわかった。
そしてそれがこの小さな日本列島に54基もあると知らされた。
使用済み核燃料も危険がなくなるまで何万年もかかるという。
その状態でこの十年来地球上の地盤は活動期に入り、大規模地震の頻度が急増しているという。
既成の原発すらもう個々人の力ではどうにもなりません。
まともに考えたら心はパニックになり混迷状態が続きます。
だがそうしたとき事態を所定の場所に位置づけることの出来る安定的な世界観・歴史観があると、
途方に暮れ続けるだけでなくなります。
聖書の歴史観は、日常の感覚では奇想天外といえそうなイメージも含んでいますが、
予想もしなかった大惨事はこういうストーリーでないと収容できないのです。
現在の放射能散布と将来起きるかも知れないさらなる事故と放射能災害も
「七年大艱難の始まりかも知れないなあ」と心に収納することが出来る。
「だとしたら次いでイエスが空中再臨し、至福の千年王国がくるかも」とイメージに納めることが出来る。
すると人の心は現実の事態を放念することなくして現実を直視すること、
とるべき行動を比較的知的に定めていくことが可能になるのです。
知ってるだけの人にもそれだけの効能があるのですから、
聖書を真理の書として信頼している人への効能は巨大でしょう。
こういう人は「地球上が放射能だらけになるとしても、次はイエスの再臨で自分の身体は
一瞬に変容して携挙(空中にあげられること)されるのだ」と確信していてびくともしない。
そこに信仰の力というものを見ることが出来ます。