鹿島春平太チャーチ

「唯一の真の神である創造主と御子イエスキリスト」この言葉を“知っていれば”「天国での永生」は保証です。

Vol.33 「マルクス思想の欠陥と持ち味~運営感覚はゼロ、扇情力は驚異的~」

2013年02月23日 | 政治見識のための政治学




<実験して初めてわかった>

前回述べましたように、マルクスは社会主義を理想郷とし、その実現を夢見ました。
この理想に向かって社会主義国家建設に邁進したリーダー国家の中に、ソ連と中国がありました。
この二国については後述します。

がともかくこのようにして、社会主義思想による経済・国家の建設・運営が初めてなされました。
それは人類史における壮大な社会実験でもありました。

にもかかわらず、結果はマルクスの夢見たようにはなりませんでした。
それどころか、ほとんどの試みは失敗に終わりました。
ソ連は社会主義方式をやめて、自由主義ロシアにもどりました。

中国でも社会主義は、理想とは逆に人民の貧困を生みました。
そして、この国では社会主義方式のままで、経済には市場方式を取り入れていきました。
それによって、初めて物的な繁栄を実現しつつあります。

こうした歴史経験によって、人類の大半は社会主義の夢から覚めるに至っています。




<運営の問題>

マルクスの理想の実現を阻む障害は、組織運営面にありました。
彼は私有生産手段を公有化すれば、効率的な社会はオートマチックに実現すると思っていました。
宇多田ヒカルのヒット曲のように「イッツ・オートマチック」だと思っていた。

ところが国有化をすれば実際には、国家や地方政府の役所の企業運営部門に、
何百という企業をまとめることになります。その状態で企業を運営しようとする。
これは無理な企てでした。

経営というのは大仕事です。
一つの企業を運営するだけでもたいへんです。
自由主義社会の創業者経営者も、自分のつくった会社なのに運営に苦闘しています。
サラリーマン経営者も又、それなりに、苦労しています。

なのにその企業を何百とまとめて経営したら、きめ細かな企業運営は
全く出来なくなります。

政権担当者は仕方がないので、官庁の役人に大まかな生産・販売計画をつくらせます。
これでもってノルマを定めて、人民を命令に従わせようとします。

だが、これでは、企業間の自発的な連携がほとんど働かなくなってしまいます。
企業内でのワーカーの連携作業もなくなります。
現場の中で、調整しあいながらやっていくということが不可能になってしまうのです。

あちこちで原料不足、部品不足が生じます。欠陥部品が増大します。
それに対処する手立てもありません。

革命当初は、革命の活気でもってある程度機能しても、
短期間の内に極度な非効率に陥っていきます。
食料生産の効率が急落していったら、国民に食べ物が十分に行き渡らなくなります。
実際そうなって、社会主義方式の国家は経済面から崩壊に向かいました。

歴史経験は、社会主義経済は70年くらいで行き詰まることを教えています。
20世紀人類史になされた壮大な社会実験は、そのことを経験的に教えてくれたのです。




<驚異的な説得力>

マルクスは、どこを間違ったか。
革命後の組織運営の見通しで間違いました。
彼は人間が組織を運営していく局面を全く見ていなかったのです。

だが、そうした事柄は、経験するまでは、人々はわからなかった。
人類は社会主義の実状を事前に認知することができませんでした。なぜでしょうか?

++

最大原因は、マルクス思想の扇情力にあると、鹿嶋は思います。
この思想は、人間の心情に訴える力が卓越していたのです。

人々はあまりに強烈に感動を与えられるがゆえに、事実を冷静に見通すことが、
出来なかったのです。


この経済理論は、貧しき者への同情と、資本家という少数の金持ちへの怒りに
理論的根拠を与えました。
これによって人々は、富める資本家の、愛に欠けた利己的な行為に対し、
確信ある批判精神を抱くことが出来ました。

それらは資本家への強い憎しみにつながっていきました。
またこの思想は、搾取という不平等な行為を社会からなくそうという正義感をも燃え立たせました。
さらに社会の全員が愛でもって結びあえる理想郷への夢とあこがれをも、人々の心の中で膨らませました。
加えて、そういう社会を実現するために運動する人々に、正しき使命のために自己犠牲するという
陶酔感も与えました。


+++

この思想の概略がとてもわかりやすいことも、扇情力形成に役立ちました。
人々はこの理論によって、資本主義社会の、非常にわかりやすい全体観を得ました。
人類社会の将来についても、わかりやすい全体ビジョンを得ました。

人は世界の全体観を心に得ると、精神に「統一感」を得ることが出来ます。
よく「身の引き締まる思う」といいますが「引き締まった」気分というか、
「まとまり感覚」というか、そういうものを得ました。
この感覚はとても快いものです。

概略がわかりやすいことは、多くの人々がその思想を共有することをも可能にします。
そして他者と思いを共有しあうのもまた、快いことでした。

思想のわかりやすさはまた、人の心に「真理がわかった」という自信を与えます。
マルクス思想は、この面からも人の心に快い統一感を与えました。


~それゆえに、知識人の多くも社会主義革命を夢見たのです。
その結果、一時は地球の半分が社会主義国家になるまでに、事態は展開したのでした。







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Vol.32 「マルクス社会思想の知識は政治見識の常識」

2013年02月15日 | 政治見識のための政治学





近代以降の人間が、適切な政治見識を持つには、マルクス社会思想の知識は大前提です。常識です。
現代の中国を考えるにも、日本の対中国政策を論じるにも、この知識は必須なのです。
1970年代までの日本の若者は、何らかの形でこれを知っていました。

いま、それを知らない若者が急増の一途をたどっています。
これでは日本人の政治見識は低下の一途をたどることが不可避です。

いますでに、これを知らないで政治批判をする日本人が多数出現しています。
この危機を打開すべく、ここに、マルクスの社会思想をまとめておきます。





<マルクス、「社会主義経済学」を構築>

マルクスは、前回に述べた「社会主義」思想に、経済面から理論と夢を供給しました。

彼はその理論構成を、資本主義社会の「分析」から開始しました。

資本主義社会は、前回説明した自由主義社会の一種です。
人民を自由にしておき、市場メカニズムでもって社会の一体性を実現しようという思想だからです。

だがマルクスは、資本主義社会は必ず行き詰まる,と考えました。
このシステムは必ず需要不足に陥って行き詰まる、というのがその理由でした。

彼の論理は次のようになっていました。




~資本家は、生産手段を私有化している。
彼らは労働者にしかるべき賃金を支払わない。
つまり搾取をしている。

資本家はその搾取分を独り占めする。
彼らはその一部を自分たちの贅沢な生活に使い、残った分を、生産機械に再投資する。

すると、その分、器械によって生産効率が上がり、労働者がいらなくなる。
削減された労働者は失業者となる。
すると、その分、国家の総所得が減少する。

するとその分、生産も出来なくなる。
そするとまた、その分雇用が減少する。

資本主義方式では、国家経済はこういう縮小循環をしていく。
だから、生産手段を持ちながら、それを発揮できない状態に必然的になっていく。
いわゆる「豊富の中の貧困」に陥っていく。




こうした縮小再生産状態に陥る原因を、マルクスは私有財産制度だと認識しました。

そして私有財産制をなくし、生産手段を公有化すれば、経済の桎梏(しっこく)はとりのぞかれ
生産力は全開する、と考えた。

そうすれば人類は、豊かな理想郷に至ることが出来るだろう。
生産手段を公有化さえすれば、それはオートマチックに実現される。
~これがマルクスの社会思想であり、歴史観でした。




<無産階級による暴力革命が必然>

しかし・・・、とマルクスは考えます。
資本家は自分たちの財産と豊かな生活を手放さないだろう。
だから、労働者が団結して暴力でもって取り上げ、公有化するしかない。
そういう暴力革命が資本主義が成熟すれば必然的に起きるとマルクスは確信しました。





コメント (2)
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Vol.31 政治見識の原点

2013年02月11日 | 政治見識のための政治学





<統治の出発点>

政治見識は、社会なるものの、そもそもの成り立ちを知ることからはじまります。
人間は、集まって、社会を作ります。
その社会の最大規模のものが、現時点では国家です。
世界政府が出来ていませんので、国家が最も上位な社会です。
そして、国家という社会の特徴は、それが物的暴力手段、つまり、警察と軍隊をもっているということです。
物的な力による、強制力を持っているということですね。




<第一動機は安全>

そもそも人間は社会をなぜ作ろうとしたのでしょうか?

第一の動機は、安全の確保です。

独りでは周囲の人間や動物に襲われる危険が常にあります。
特に人間に、つまり、他の部族や民族に襲撃される悲劇は、最大の悲劇です。

暴力手段でもって、財産や生命も奪われるだけでなく、生き残ったものを支配し続けます。
支配は、奴隷状態になるのが一般的です。
近代ですらそれはあって、トルコのアルメニア人襲撃は悲惨でした。
男性人民を殺しまくり、女性は生かして性奴隷にしました。

トルコの男性は、幾人ものアルメニア女性を囲い、ハーレムのような生活をしました。

顔と手に入れ墨を入れ、逃げてもすぐに性奴隷だったことがわかるようにした。
彼女たちは逃亡しても、食べられません。
入れ墨ですぐにアルメニア人の性奴隷だったことがわかりますので、他でも同じ処遇を受けるしかなかった。
だから多くは、支配男性の家にとどまりました。

異民族に征服されるというのはこういう悲惨さが伴います。
もちろん征服する民族にもよります。
太平洋戦争後に征服された日本民族は幸運でした。キリスト教民族である米国人は、残忍なことをしませんでした。

これに比べると、ロシア民族は、もう少し凶暴で残忍です。
もし日露戦争で日本が負けていたら、トルコ的なこともなされたかもしれません。
女性の性奴隷化も部分的には起きたかも知れません。
日本国内がロシア警察によって統治され、反抗的な男性は、次々にシベリア送りになったでしょう。

日本民族は、国が海に囲まれていることもあって、異民族に襲撃され、征服され、支配されることなく、明治維新まできました。
そして日露戦争に勝って、第二次大戦前まで来ました。
太平洋戦争で征服されましたが、相手国家がアメリカで、これに統治されるという、幸運に恵まれました。

だから、日本人は国民の安全ということに関してとても鈍感です。
いまの平和状態を人間社会には当たり前という感覚でうけとめています。
相変わらず若者は、テレビのバカバラエティーをみてキャッ、キャッ笑っています。

+++

だが、人間は、何よりもまず、安全のために集まって社会を作ろうとします。
日本もそうです。
集団を組織化し、外部者の襲撃に対処しようとして、国家を作ってきたのです。





<第二動機は食の確保>


第二の動機は、食物の効率的な生産です。
飢餓はダイナミックな苦しみを人間にもたらします。
これは何としても避けたいと思う。
食の確保は安全の次に重要課題です。

人は食物の生産を効率よくしようと切望します。そして社会を作る。
狩猟にしても、農耕にしても、複数で協働して行うと、生産は何倍も効率的になるからです。





<社会統治は、自己保全が最大課題>

安全と食を失った人間は悲惨です。

だから社会を形成して、この二つを確保すると、人は、既成社会をなんとしても守ろうとします。
これが崩壊すれば、確保した安全と食は、ほぼ失われてしまうからです。
だから社会運営の基底動機は、社会保全でアリ続けます。

+++

社会は、いったん出来上がると、他の成果も成員に与えていきます。
成員相互の交流も、精神文化も、祭りや芸術も社会には出来上がっていきます。
人民は、それをエンジョイしている内に、統治の基底課題を忘れてしまいます。

だが、社会運営すなわち統治の最大動因は、その社会そのものを保全することです。
そしてそれを保全するのに働く、基底的な動機は、安全と食の確保であり続けます。
政治見識は、これを見失ったら、成り立たないのです。




<集団の一体性>

社会を保全するに最大の要因は、社会成員の一体性を維持することです。

社会は、成員の一体性の産物です。
一体性が崩れたら、社会は崩壊します。

統治の基底課題は、社会成員の一体性を維持することなのです。
そして、統治担当者には、この真理が大きく働き続けます。




<二つの一体性形成方式>

一体性形成方式には、二つあります。

第一は、成員の多くが主体的に一体性を形成し、統治担当者がそれに反するものを制裁でもって
強制的に一体性に参加させる、という方式です。
自由主義ではこの方式をとります。
自由主義とは、成員の自由意志をベースにして、一体性を形成しようという思想です。

第二は、成員を強制的に一体化させてとにかく社会を形成し、
以後それに個々人の自由を可能になる範囲で加味していく方式です。
いわゆる、社会主義ではこの方式をとります。
社会主義とは、強制力でもって人間集団の一体性を形成しようという思想です。

この視野によって、ロシア(ソ連)の社会主義国家と、中国の社会主義国家との違いが浮き彫りになってきます。
次回、しばらく間が開くかも知れませんが、それを示そうと思います。




「チャーチ」なのに、政治見識の話が続いていますね。クリスチャンの方々、すみません。
もう少しで、聖書に戻ります。
当面、ユーチューブのページで、「ヨハネ伝解読」を検索して下さい。
現在連載している動画シリーズがすべて出てきます。










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