前回、実施領域の情報が人民に知らされていない、ブラックボックスになっている、という話をした。
少し余談に入る。
<官僚の半沢直樹物語を!>
鹿嶋は、それを思うとき、最近のTV東芝日曜劇場の大ヒットドラマを思い浮かべる。
『半沢直樹』である。
このドラマの人気要因は、銀行業務がどんなものかをわかりやすく知らせてくれたことに実はある。
銀行業務もまた一般人民にはブラックボックスなのだ。
視聴者は血湧き肉躍る人間の「倍返しドラマ」を見ながら、「ああ銀行ってああいう風な業務をしているのか」と初めて知る。
そういう「学びの驚き、学びの知的歓び、学びの快感」もこのドラマは内包しているのだ。
サラリーマンにも大人気だったというが、理由は明らか。
一般のサラリーマンの大半はメーカーなどに勤めている。
日々の仕事に銀行さんとの接触は多い。
にもかかわらず、彼らの業務内容の情報は得られずにきている。
銀行業務を知らないから、銀行が言ってくることの手の内も読めない。
これを熱血ドラマを通して学べるというのは、大きな効用だったのだ。
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鹿嶋は、政治の実施局を舞台にした「半沢直樹ドラマ」を作ったら、
これは国民に大効用を与えると思う。
熱血官僚半沢直樹が悪徳官僚や貪欲事業家たちを次々にやっつける。
崖っぷちに追い詰められるが、最後に幸運が降って湧いてどんでん返しをする。
もちろん、銀行員物語と同様に、筋は漫画であり劇画でいい。
これによって、国民は初めて官僚世界、国会での決議事項が実施されていく世界を垣間見ることが出来る。
現場の官僚たちは苦笑しながら見るだろうが、人民には貴重な情報なのだ。
<官僚政治家が最も有能となるのは>
・・・というところで本来の話に入る。
日本だけではないだろうが、実施領域の業務に関する知識は政治家の能力に大きく関わっている。
政治はそもそも実施業務を不可欠なものとして含む仕事だからだ。
そこで、この能力も兼ね備えつつ議決能力を持つ政治家が理想となる。
歴史を振り返ってみる。
明治維新の指導者たちは、結果的にその種の人物の育成を行った。
彼らはとにもかくにも、西欧風の政治機構を造って国を運営しようとした。
それには、政治家が決定した決議事項を実施に移していくオフィスワーカーが
常時一定数いなければならない。
だがついこの間終わったばかりの江戸時代に百姓、町人であった人民に、この業務をこなす能力はない。
政府はそのため、細かい法律仕事を間違い行う、秀才的な素質の若者を全国から集めて
東京大学(主に法学部)で育成した。
彼らに勉強させ、高級官僚を造った。
彼らには、海外遊学もさせた。
国際社会の知識を身につけるには、海外の先進国での生活を3年以上することが最低限必要だ。
彼らだけに、国費でそれをさせた。
外国のことに通じているのは、近代政治家の必須条件である。
そこで高級官僚の優れたものが政界に進むというのが、最も有能な政治家が出来上がりやすい道になる。
そして彼らの中の、腕に覚えを感じるものが政治に立候補して当選した。
こうして出来上がったのがいわゆる「官僚政治家」である。
彼らは実施領域の知識も兼ね備えている。
役人として就職して以来、政治のオフィスワークをし続けてきているからだ。
おまけに実施局に息のかかった元部下の官僚たちももっている。
彼らが党人とも呼ばれる「政党(党人)政治家」を、政治能力において圧倒するのは当然だった。
人民にはそんなことは全く見えない。だが実際彼らは活躍した。
戦後日本の建設期において特に働いた。
吉田茂、岸信介、池田勇人、佐藤栄作、福田赳夫などは官僚政治家である。
大平正芳は東大出ではないが、官僚政治家である。
「党人」田中角栄はこの大平を盟友にもつことでもって、政治能力を何倍にも発揮出来た。
日中国交正常化も大平がいなかったら全く不可能だった。
そして大平の死を契機に、角さんは糸の切れた凧のようになっていった。
中曽根は外務省を早期に辞めて党人政治家になったが、止める前にちゃっかり
海外遊学をさせてもらってるのではないかな。
彼が総理になって内閣を作るとき、三顧の礼を踏んで官房長官を引き受けてもらったのが後藤田正晴だった。
後藤田は警察官僚あがりで、闇の世界にも通じている。軍隊である自衛隊にもなじみがある。
彼は、伊豆大島大地震の時にも、すみやかに自衛隊を動かして窮地を救った。
東北大地震と福島原発危機のときにも、もし、彼が官房長官だったら事態は大きく変わっていただろう。
<二番目は自民党党人議員>
日本の場合、官僚政治家に次いで政治能力を身につけやすいのは自民党の党人議員である。
自民党は万年与党だから常に国家運営担当者であり続けて来た。
すると自民党議員は陣笠ともよばれる一年生議員のうちから、なんらかの政策実施の仕事を割り当てられる。
そこで実施局の官僚と接触、協働する機会を持てる。
これを通して彼らも実施局の情報とその能力をある程度は身につけていく。
ただし、若い時代に外遊に出してもらう特典は得てないので、国際感覚は育ってはいない。
田中角さんはまさにこれを体現した党人政治家だった。
彼が福田赳夫と総理の座を争い始めたとき、引退間際の佐藤栄作は田中のいびつさを
非常に懸念して福田が継承することを望んだ。
だが田中は福田赳夫勢力を粉砕して総理大臣になり、日本に党人総理の流れが始まった。
実はそれは、日本の政権者の政治能力低下の始まりにもなっている。
<最悪は万年野党議員>
自民党が万年与党であると言うことは、他の政党はみな万年野党ということである。
この統治能力は絶望的である。
野党の国会議員は統治実施業務を学ぶ機会をもたないで日を送る。
せいぜい委員会の委員として多少接触するだけである。
後はほとんどの日々を、外野席から政権者の政策をなじるだけで送る。
なじり方のパーフォーマンス能力が野党議員の人気を形成し、それが選挙での得票数を左右する。
だから、この種の弁舌能力だけが育つ。
これでは実施局的知識はまったく育たない。
もちろん、多くは出身バックグラウンドが、若い時代に海外遊学出来るほどに豊かではない。
だから国際感覚もない。
こういう政党が政権を担当するようなことが起きたら、国家は無能政治に翻弄される。
統治は滅茶苦茶になって、ほとんど機能しなくなる。
そして実際それが21世紀に入って民主党政権として現実のものとなった。
彼らは実施局の知識、能力は持たない。
これが「政治主導」などといって、官僚統率を試みたのだからもうえらいことになった。
官僚はあきれて冷笑する。面従腹背、適当に対応してやりすごす。実質サボタージュ。
日本の政治が、実施機能停止に陥った。
かと思うと、大臣になったものに対して高級官僚は、いわゆる官僚の「レクチャー」でもって、
政策思想も洗脳してしまう。
菅直人など、これで「消費税増税派」に簡単に一転した。
「消費税増税絶体反対」をとなえて 政権をもらったのに、2年も経たないうちにこの姿。
これはもうマンガである。
下の名前は忘れたが、野田なにがしなども同じ漫画を演じる運命となる。
彼は国会議員になってからも、議会がない日には毎朝千葉のJRの駅前で演説ばかりしていたという。
これでは実施局知識など他の勉強ができない。
勉強より次の選挙で議席を失わないことの方が関心事なのだ。
貧しい。志が低すぎる。
こんなのが弁舌主力で総理大臣になってしまうことまで日本では起きてしまった。
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日本では二大政党制は有害でしかないことを、マスメディアは全然わかっていない。
米国や英国の状況に憧れて、二大政党制的な政権交代を夢見るメッセージを国民に送る。
日本中にそのムードができてしまう。
小沢一郎さんは人間的には暖かくていい感じの人だが、彼もこの点がわかっていない。
そのくせ田中角さんの秘蔵っ子で、角さん譲りの選挙技術と資金調達力は身につけている。
それで民主党政権を造ってしまったのだ。
そこを追い出されたいまも、「政権交代再び」などといっている。
もういい加減にしてわかって欲しい。
「二大政党ごっこ」はもういい加減にして欲しい。
日本では二大政党は有害無益である。
それを機能させる方法はただ一つ、万年与党政党を二つに割って二大政党を作る道しかない。
そして各々に、官僚政治家を沢山つくって参加させるしかない。