ここで「政教分離原則を実現したら聖句主義者への信頼が急増した」という事象の
追体験理解をしておきましょう。
我々日本人には終戦直後の状況が手がかりになります。
戦時中わが国の人民は軍部という管理階層体制の極の様な組織に組みこまれ、
言論・思想の強烈な制圧下で暮らしました。
この種の政策を実施するには、特高警察や思想憲兵が必須です。
人民は彼らにおびえながら暮らしました。
敗戦はそのすべてを取り払う一大イベントでした。人民は突然自由に解き放たれた。
物資は相変わらず不足していましたが、それらを自由市場(闇市)で調達し合う生活には
精神の躍動がありました。
筆者は4歳でしたが、大人たちが見せた輝きはじけるような精神躍動の感触は
今もかすかに残っています。
同時に人々は言論・思想を自由にしておいても、社会がばらばらになることがないとも知りました。
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バージニア州民にも、これに似た自由と精神躍動が実現したのではないでしょうか。
それまでイギリスの国教制度のもとで二重三重に受けていた「思い」の統制から
突然解き放されたのです。その快適さはいかばかりだったでしょうか。
それでいて社会の安定性は予想外に保たれていた。
そのことも確認し、州民の聖句主義者たちへの信頼は一挙に高まったのではないでしょうか。
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以後バージニア州議会はバプテスト聖句主義者による主導を信頼して受け入れるようになりました。
その結果、政教分離が成った1785年以降、聖句主義者の行動はほぼバージニア州の行動
とみていい状態になった。
これは重要な変化です。
これによってバイブリシストは「バージニア州として」米国全体のなかで行動することが
出来るようになったのです。
言い換えれば、バージニア州議会の衣装を着ての活動が可能になった。
これが彼らの国家作りを飛躍的に楽にしました。
実際彼らはこのコスチュームでもって アメリカ国家の仕組み作りを先導していきます。
この認識がアメリカという国の体質を感知する鍵になります。
そしてこれもやはり聖句主義史に無知であれば全然見えない事実です。
(次回から14章に入ります)