臨時版をさしはさみます。
<聖書三部作>
某大新聞社の記者から取材要請が入った。
~トランプ大統領の支持層と言われる「福音派」について専門家にインタビューしてきている。
だがサザンバプテストの福音派のことが、いま一つわからない。
インタビュー形式で答えて欲しい~と。
~筆者がかつて新潮選書から出した「聖書三部作」(『聖書の論理が世界を動かす』『誰もが聖書を読むために』『神とゴッドはどう違うか』によって、目から鱗が落ちた、といわれる。
そして「いま、三部作をあらためて精読している。
よくわからない言葉がある。
「霊」だ。霊とは何か?」~といわれる。
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<日本人と霊の概念>
問われて気付いた。
日本人には霊という意識体がまだ知的に認識されていないのだと。
私は、三部作で聖書における霊の概念を十分に言葉を尽くして説明したつもりだった。
「聖書の人間構造理念」の図をも書いて説明した。
フロイトの「意識構造図」を援用し、その潜在意識をとの対比しての説明もした。
これで読者には分かっただろう、と思った。
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当時の担当編集者・佐藤誠一郎さんは、「これでわかる」とOKを出した。多くの読者からも、理解したことを踏まえた感想を受けた。
なのに、伝統ある大新聞の記者が「霊というのがよくわからない」と言うとは・・・。
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だが、思えば三部作は今や四半世紀も前の本だ。
時の流れは速く、もうこの本で「霊」を学ぶ人もほとんどいなくなっている。この記者さんも若そうだし。
その結果、霊という意識体のもたらす心理体験が、みな「脳神経系の事象」と思われている。
こういう誤った通念の中に、全日本人がいることになってしまっているのだ。
三部作が与えた部分的影響は、過去の「焼け石に水」となってしまっているのだ。
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「日本人には霊の知的理解が欠けている」
最近、それを痛感することがあった。「NHKスペシャル」だ。
聖マリアンナ医科大学を定年退官された大教授の言が知らされた。
氏はかつて老人向けのデイサービスを提唱し、それを制度化させた功労者だ。
実績ある大学者。
その彼が90歳を越え、認知機能の衰えを自覚して「死の不安」に苦しむようになった。心の鬱状態だ。
氏は、こんな感想を述べておられた~。
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「自分はデイケア制度などによって、人間が平安に老後を送って死を迎えられる体制を完成できたと思っていた。ところがこの不安、この恐怖はなんだ」
「自分は、人の心は脳神経作用の結果だと思って老後政策を作ってきたが、どうももう一つの意識体が心にはあるらしい」~と。
~私は痛感した。
「こういう浅薄な心理観(行動主義的心理観)でないと、業績が認められて大病院の大教授にまでいかれない、という日本の学問の実情」を改めて確認した。なんとお粗末な・・・。
私はあらためて「全日本人は聖書三部作を読むべし!」
「三部作よ、四半世紀を超えてリバイバルせよ!」
と叫びたくなった。
(「霊がわからない」・・・完)