Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

中桐雅夫「一九四五年秋Ⅱ」

2016年07月23日 23時30分57秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等
 そういえばこんな詩を以前読んだことがあった。1945年秋、敗戦間もない焼け野原の東京を詠んだ詩である。1990年頃作品社の「東京詩集Ⅲ」で初めて目にした。とても平明な詩で、あまり印象には残らなかったが、どういうわけか頭の中に残っていて、忘れられない何かがあるように感じている。今でもとうしてこのような詩が、頭の片隅に残っているのかわからない。でも魅力的な詩である。
 しかしいまから思えば、敗戦という時間の止まったままの東京の、これから貧しくとも逞しくも、そして悲惨と絶望と、山師的世界も含めた混沌が胎動を始める直前の何かが感じ取れる詩である。


  一九四五年秋Ⅱ    中桐雅夫

夕焼けのなかの、
一枚の紙幣のような黒い青空
その麓まで、
あかく錆びた草が一面に繁茂し、
互いに絡みあって、風に身をよじらせている。
みにくい無数のちいさい穴を掘って、必死にかくれようとしている、
だが、風はなにものをも見逃しはしない。

見よ、この巨大な荒地を、
誰ひとり憩もうともせず、
ただ歩つづけているひとびとを、
たちどまると、そのまま息絶えるように思えて、
なえた足をひきずりながら、
乾いた唇をなめずりながら、
目的もなく、
ただ歩きつづけているひとびとの群れを。

聞け、吹きつのっている風の音を、
一九四五年秋の一日、
東京麹町区内幸町一丁目、
勧業銀行ビルの四ッ角に、
いま吹きつのっている風の音を、
それは、まるで世界の中心から発したもののように、
激し、激して、ついに俺を涙ぐませるのだ。

俺は、絶望の天に向かって、ゆるやかに投身する。

                  (「中桐雅夫詩集」 一九六四)


古代史セミナー9月講座申込み

2016年07月23日 19時53分19秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等


 昨日今年度の9月からはじまる「古代史セミナー9月講座」の案内ハガキが届いた。
 今回の講座は6回連続で、「邪馬台国の時代の新研究」ということになっている。
 テーマを見ると、倭国と邪馬台国の関係、特に倭国=邪馬台国としていないところも気に入っている。また考古学の視点、中国と倭国との関係、列島の東部と邪馬台国との関係などの視点が面白い。
 近年どのように邪馬台国が取り上げられているのか、勉強してみたい。
 早速申込みの往復はがきを作成し、明日1番で投函することにした。

 特にこのごろは、政治的に大和王権が語ら語られ、近年の学術的成果が否定されたり、政治的にゆがめらたり、政治的思い込みに現実を強引に当てはめようとするあまりに情けない時代となっている。
 科学的なことが非科学的な思い込みと論理で否定され、マスコミのいい加減な取り上げでもてはやされるというのは、政治や歴史だけではなく、地震の予知についてもトンでも「学説」が横行する時代である。


 この講座からは話は飛躍するが、政治は私たちの生活の上に君臨してはいけないものである。芸術や学問の上位に位置するものではない。私は政治家というものは、ごく普通の市民の生活思想や芸術や学問に謙虚でなければならないものだと思っている。支配-被支配という構造をどのように乗り越えるのか、近代国家の歴史の先にこのような政治の構造を見据える新しい政治理念が求められている。それは100%、誠実な政治理念からしか生まれない。人を支配し、力による支配しか構想できない政治家からは次のあらたな政治理念は生まれない。それは断言できると思う。
 自分の理想から現実の政治を常に検証することから始めたいものである。


本日の講座「沖縄を知る-「化外の民」と「越境広場」」

2016年07月23日 17時37分43秒 | 芸術作品鑑賞・博物館・講座・音楽会等


 本日の講座は、西谷修立教大学特任教授による「「化外の民」と「越境広場」」。
 話の内容は緊迫している高江ヘリパット建設工事の話など現在の状況が主なものになってしまった。政府の強引なやり方など現地の緊迫は十分わかるのだが、表題の「「化外の民」と「越境広場」」に話が届かないうちに時間が来てしまったことは残念である。現地の状況はマスコミもまともに報じない中で、人はツィッターやネット情報でわかっている人もかなりいるし、聴講した多くの方は状況が分っているので、もう少し「沖縄」と「日本」を対象化した講義を私は期待していたのだが。これについては残念だったような気がする。
 内容は第1回目の目取真俊氏の話とほとんど変わらなかったと思う。
 参考文献では私も知らなかったものがあり、これは良かった。
 しかしこのシリーズ、受講する方が多い。やはり現在の状況に強い関心と危機感を持っておられる方が多いのであろう。