引き続き内田光子のピアノによるモーツアルトのピアノ協奏曲の全集から。今回は「ピアノと管楽のための五重奏曲 K.452」「ピアノ協奏曲第17番 K.453」ならびに「ピアノと管楽のための五重奏曲 断想 K.452a」の3曲。録音は五重奏曲が1990年、協奏曲第17番が1986年、断想が1991年となっている。協奏曲の指揮はジェフリー・テイト、イギリス室内管弦樂団。五重奏曲の木管はイギリス室内管弦楽団のメンバーによる。購入したのは1993年くらいだろうか。
いづれの曲も初めて聴く曲だったが、「ピアノと管楽のための五重奏曲 K.452」にはとても新鮮な感じを受けた。協奏曲よりも室内楽曲の方が私は好みなのかな、という感想をもった。それがモーツアルトだけのことなのか、他の作曲家でも同じ感想なのか、などという風に思った。それまでは管弦楽曲中心に聴いていたと思う。その後の私の好みは、他の作曲家でもどんどん室内楽曲に移っていったから、ひょっとしたらこのCDは私の室内楽曲への転換点だったかもしれない。
出だしの緩やかな序奏、オーボエをはじめクラリソット、ホルン、ファゴットのそれぞれの楽器の美しい音の世界に一気に引き入れらる。ピアノの高音がこれらの音と心地よく響いている。聴衆の反応もよく、モーツアルト自身も父宛に「これまでの生涯で一番よく書けた曲」と書いているとのことである。
ここにおさめられた第17番のピアノ協奏曲は1784年に作られた6曲のピアノ協奏曲(第14番~第19番)の中でも、モーツアルと自身も気に入ったもののようである。技巧的にはやさしいということであるが、ベートーベンのピアノ協奏曲第4番がこの作品を範と下ということがいわれており、後代におおきな影響を与えたという。メシアンが最も美しいと賛美しているとのことである。確かに第2楽章は美しい。これだれを聴いても満足する曲である。
「断想」は1990年に発見されたモーツアルト自筆の楽譜に基づくものであるとのこと。未完のピアノパートを内田光子が完成してここに採録したと記載されている。K.452aとなっているが、K.452とは曲の上での関連はない。しかし楽譜の用紙からはほぼ同時期に作曲されていることが判明しているそうである。もうひとつの五重奏曲が構想されていたともいえる。